ソーシャルワーカーについての本

 

資格について紹介記事を書いていると、今までなんとなくしか聞いたことがなかったような職業について理解が深まる機会があります。

 

今回はソーシャルワークと言われる仕事についてよく理解できる本を紹介します。

 


ソーシャルワーカーという仕事 (ちくまプリマー新書)

 

この本は、ソーシャルワーカーという職業を学生向けに説明した本というだけにとどまらず、一人一人の人間の命の尊さまで教えてくれます。

 

ソーシャルワーカーとはどんな職業?

 

ソーシャルワーカー(Social Worker)、ソーシャルワーク(Social Work)という職種やお仕事をご存知でしょうか?

 

なんとなく福祉に関する仕事かな?っていうイメージはありましたが、詳しくは知りませんでした。

 

福祉に関する資格というと、介護福祉士やケアマネジャーのように、どうしても老人を相手にした介護を思い浮かべますけど、それだけじゃないんですね。

 

ソーシャルワーカーとは、生活する上で困っている人、社会的から疎外されている人、あるいは精神的に不安を抱えている人などの相談に応じ、助言・指導・日常生活への適応のために必要な訓練その他の援助をする職業です。

 

と、言っても何のことだか今ひとつピンときませんね。

 

生活をおくる上で困難な問題を抱える人の相談役

 

簡単に言うと、生活する上で困難な問題を抱える人々の相談に乗って、様々な支援をするのがソーシャルワーカーの仕事です。

 

例えば、病院へやってくる患者は悩みや不安を抱えている場合が多いです。「入院費が支払えない」「退院後の生活が不安」「リハビリや通院はどうしたらよいか」「何かあったとき、誰に相談してよいのか」など、相談内容も多岐にわたります。

 

病院へやってくる患者だけではありません。フリーターやニートなども社会生活をおくる上で様々な不安を抱えています。

 

虐待、差別、暴力を受けている人ももちろん悩みや不安でいっぱいです。

 

そんな人達の相談に応じ、より良き解決手段を提案して、場合によっては医療機関や行政機関、福祉事務所などへ協力を依頼します。社会に無事復帰できるように導く仕事がソーシャルワーカーなんです。

 

ソーシャルワーカーとは、例えば、社会福祉士や精神保健福祉士と言った資格に基づく職業が代表例です。

 

 

もちろんこれらの資格がなくてもソーシャルワーカーとして働いている人はたくさんいます。

 

ソーシャルワーカーの仕事・・・例えば、行き倒れの男性に声をかける

 

高齢男性を支える女性

 

この本では、著者の宮本氏がたまたま通りがかった地下鉄の駅の通路で、生きる希望を失って行き倒れのようになっていた男性に声をかけるというエピソードを紹介しています。

 

酒に酔っているものの所持金はほぼゼロ、全身垢まみれで寝転がっている50代~60代の男性を見つけます。

 

宮本氏は、「どうなさいました?」とまずは声をかけます。

 

男性が発した言葉は「どうしたらいいかわからない、このまま死のうと思っている」という一言。

 

男性はすっかり生きる気力も失っているようです。

 

普通の人間だったらここで、「死んじゃダメですよ、生きていたらきっといいことがありますよ」って言うんじゃないでしょうか。

 

多分大多数の人はそうだと思います。ぼくもそう返答すると思います。これが精一杯の対応です。それ以外の気の利いた対応方法は思い浮かびません。

 

しかし、宮本氏は意外な一言・・・「死ぬのだってなかなか大変ですよねぇ。なかなか死ねないのでしょう?」と返します。

 

その後も何度となく「どうしたらいいかわからないんですよぉ」と繰り返す男性に対して、態度や反応を見ながら、極力短い言葉で寄り添うように話しかけます。

 

そして、徐々に具体的な内容へと話しを進めていきます。

 

例えば「福祉事務所へ行ったことありますか?」「お酒をやめることを考えなきゃあ」という具合に。

 

しばらくすると男性は心を開き、少しずつ会話のキャッチボールが生まれはじめます。

 

自暴自棄になって生きていく気力も失っていた男性の心の中に、生きていく気力が湧き始めます。

 

そして、最後には自分の足で立って宮本氏と一緒に福祉事務所まで歩いていきます。

 

先程まで「死ぬ」などと言って行き倒れていた男性が、ほんの少しの思いやりのある言葉のやりとりだけで、「生きる」ことに向かって歩き出した瞬間です。

 

大事なのは、相手のことを理解しようとする態度

 

社会の中で絶望し生きる力を失っても、他者との関わり方によってはいくらでも前向きに生きていけるんだという可能性を感じます。

 

相手の立場を理解するのは難しいですが、その相手を受け入れて、限りなくわかろうとすることで、次はどんな手を打っていけばよいのかという解決への可能性が開けます。

 

その他にも、山小屋でひっそりと暮らす老人、親から虐待を受ける女子中学生など、実体験に基づく体験談が書かれていますが、どれも興味深い内容です。

 

この本では、ソーシャルワーカーとは、貧困、暴力、差別、虐待などの事情により社会から疎外され、生きる力を失いかけている人に寄り添って支える仕事だということがとてもわかりやすく、説得力に満ちた言葉で解説されています。

 

もちろん筆者である宮本氏一人の努力で事態が全て解決するワケではありません。ソーシャルワーカーにできることは限られています。周りに多くの協力者がいて、はじめて良い方向へと向かいます。

 

「ソーシャルワーカー」という職業は一見地味なようですが、実は人の人生を変え、社会までも変えていくような無限の可能性が秘められているように感じます。

 

社会を生きていく尊さを教えてくれ、自分や他人を大切に思う心を教えてくれる一冊です。

 

進路について考えている高校生には特におすすめですよ。何かの参考にはなるはずです。

 

もちろん自分自身の生き方を考え直してみたいと考えている社会人にもおすすめです。