給与明細と一万円札

 

今日はちょっと資格とは関係のない話しです。

 

2018年7月に成立した「働き方改革関連法」が、いよいよ2019年4月に施行されます。

 

今後は残業時間に上限ができます。基本は1か月で45時間、1年で360時間ですが、特別条項を利用した場合だけ例外的に上限は100時間です。つまり100時間を超えて残業させたら違法です。

 

でも、ちょっと待ってください。これって「働くな」と国が命令しているだけに過ぎないのではないでしょうか。

 

残業代をカットして、国が労働者の収入を抑えているだけのような気がしてなりません。

 

本当は、サービス残業を社会からなくすのが目的だったはずでは?

 

これまで長時間労働や過重労働が幾度となく社会的な問題になりました。連日に及ぶ深夜残業に耐えられず命を断った若者の話しは珍しくありません。

 

世間では、「長時間労働=悪いこと」というイメージすっかり固定してしまい、何度となく残業時間の上限を法律で規制しようという議論がされてきました。

 

そして今回の労働基準法の改正です。

 

しかし、悪いのは長時間労働だけなんでしょうか。本当に悪いのは、働いたのに残業代が支払われない「サービス残業」だったはずです。

 

もちろん深夜まで連日仕事がおよぶのはよくありません。けれどこれまで問題になったような長時間労働は、いずれも残業代が未払いでした。

 

かつては月の残業が180時間を超えることも!

 

ぼくは若かりし頃、コンピューターのソフト開発の会社に6年ほどいました。

 

当時、コンピュータ関連の会社は超人手不足で長時間労働は当たり前、中には残業が月に180時間を超える人も珍しくありませんでした。

 

残業が180時間ですよ!180時間!一体どうしたらそんな残業時間になるの???って思いますよね。

 

平日は夜の10時以降まで普通に残業して、休日であるはずの土日も出勤してそのまま残業するとだいたい180時間くらいになります。

 

もちろん1年間ずっとこんな調子じゃないですけどね。忙しいと残業は180時間を超えました。半分笑いながら「オレ、今月残業180時間超えちゃったよ!」なんて言ってたのを覚えています。

 

残業代は基本給を大きく上回っていたので、新入社員でも手取りで給与は35万円以上ありました。中堅社員になれば基本給が高い分、給与はもっと高くなっていたはずです。

 

誤解の無いように書きますけど、これと比較して残業100時間は甘いとかぬるま湯なんて言うつもりは毛頭ありません。

 

世間の風潮としては、当時は長時間残業が当たり前だったんです。こんな状況はコンピュータの業界に限った話しではなく、他の業種でも似たり寄ったりだったと思います。社会全体が忙しさを楽しんでいるようですらありました。

 

残業時間が100時間を超えることなどは普通でしたが誰も文句は言いませんでした。長時間労働が社会問題になることもありませんでした。

 

残業代はサラリーマンにとって大事な収入の一部

 

では、なんで社会問題に発展せず、サラリーマンもそこまで働いたかと言うと、それは残業代が100%支払われていたからです。労働に対する正当な対価が支払われていたからです。残業代が支払われない営業マンであっても別の手当、例えば営業手当などが支給されていました。

 

給与が増えれば奥さんだって文句は言いません。もちろん本人は文句を言うはずもありません。遅く家に帰っても、それ以上の見返りがあったんです。もっとも分かりやすい「現金」という形で。

 

サラリーマンにとって残業代ってとっても美味しい収入だったんです。

 

普通に平日に残業すれば時間外は1.25倍、土日に出勤してしかも10時以降も仕事すると深夜残業がつくので1.6倍(当時は1.5倍?)支払われます。

 

残業代を稼いで住宅ローンに回したり、株式投資や車のローン代金に回します。残業代が自分の小遣いだった人も多かったと思います。小遣いは多い方がいいですからね、多くのサラリーマンが進んで残業してました。

 

100%会社から残業代が支払われるのであれば、長時間労働もそれほど問題にならなかったということです。それくらい当時の日本経済は順調でした。

 

サービス残業を撲滅するのがそもそもの目的だったはず

 

しかし経済が長期にわたって停滞する日本では、残業代を満足に払える企業が少なくなりました。

 

残業代のカットやサービス残業が広がり、次第に社会問題にまで発展しました。

 

長時間労働の是正とは、もとはと言うと働いた分の賃金が支払われないサービス残業の撲滅だったはずです。

 

しかし、いつの間にか「働き方改革」という名の下に、国が「残業は悪だ!働かせるな」という考え方に変わり、労働者のワークスタイルを見直す動きへと話しは発展し、サラリーマンの時間外労働も法律で制限されることになってしまいました。

 

「働き方改革」という名の下に話をすり替えているだけのような気がしてなりません。

 

「サービ残業撲滅」の狙いだったはずが、いつの間にか「企業の負担減少」という目的に話しがすり替えられています。

 

残業時間の規制は、働くな!という命令で事実上の収入制限

 

今回の改正では、最も肝心の残業代の支払い強化は一切ありません。単に労働時間を短くしただけです。

 

生活費の一部を残業代で稼いでいたサラリーマンにとっては収入を減らされるのと同じです。「働くな」という事実上の命令であり、収入制限ともいえます。

 

月に100時間を超える残業をさせたら違法になりますが、月に100時間まで働かせて残業代は未払いなんて可能性もあります。

 

残業代が見込めなくなるサラリーマンは、飲み代や遊び、ギャンブルにお金を回せなくなります。

 

労働時間を減らすことで一人一人の生産性が上がり、収入が増えて経済が良くなる・・・なんて話には間違ってもならないでしょう。

 

「長時間労働=悪いこと」という方向違いな感がえ方に基づく間違った政策がサラリーマンの収入を直撃し、日本経済を増々悪化させるのではないでしょうか。

 

残業したい人はすればよいし、残業したくない人は帰ればいい、ただそれだけのことから随分話しはそれてしまいました。

 

時給が下がっているのは主要国の中で日本だけという事実

 

経済協力開発機構(OECD)の統計結果で、1997年から2017年の20年間における主要国の時間給の変動率が発表されています。

 

残業代を含んだ労働者1人あたりの総収入を時給に換算した結果です。

 

韓国は150%、英国は87%、米国は76%、フランスは66%、ドイツは55%増えています。20年間で主要国はどこもアップしていることがわかります。

 

では、日本はどうなのかというと、実はなんとマイナス9%なんです!主要国で唯一のマイナスです。

 

かつての日本では、定期昇給・年功序列などで賃金は毎年増えていくのが普通でした。20年で物価は倍になると言われていましたが、給料(時間給)も経済が順調であれば20年で倍程度に増えていました。

 

けれど、現実は時間給も下がり続け、収入も減っています。

 

プレミアムフライデーという愚かな政策より収入を増やす方が重要

 

既に死語となりつつある「プレミアムフライデー」なんて政策がありました。

 

毎月末の金曜日は15時に仕事を切り上げ、その後の時間を余暇や消費活動にあててお金を回すことで経済を活性化させよう!という取り組みでしたけど、全然意味ありませんでしたね。

 

収入が減っては使えるお金も減ります。お金を回すのであれば、サラリーマンの収入を増やさないといけません。

 

残業をしたら残業代を必ず労働者に支払わせる法律を作った方が収入が増えて経済はもっと回ると思うんですけどね。

 

本日は資格とは関係のない話しでした。

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