救急車に搭乗して医療的な措置を施すことで急病患者の命をつなぐ救急救命士。
こういった一刻を争う仕事をしている人って目つきが真剣でカッコいいですよね。
この救急救命士という国家資格、民間の養成校つまり専門学校で必要単位を履修すれば取得は可能です。
救急救命士になるためにこういった専門学校へ進むのは正しい手段なのでしょうか?
専門学校へ進むのは必ずしも正しい手段だとは言えません。
救急救命士として働くには消防士の採用試験(公務員試験)に合格しなければならないからです。
資格を取得するのと職業として救急救命士の仕事に就くのとは全く別の話しです。
専門学校卒業生全員採用というワケにはいかず、救急救命士として働けない人も少なからずいます。
世間には、救急救命士の資格は取得したけれど救急救命士の仕事に就けず全く関係のない仕事をしている人が大勢いて、ちょっとした社会問題になっています。
せっかく救急救命士の国家資格を取得しても、消防士として働けなければお金と時間の無駄という結果になります。
関連ページ:救急救命士とは
救急救命士が採用試験に合格して消防士になれるのは4割以下
大学や専門学校で救急救命士の資格を取得してから消防士として採用されるのはおよそ30~40%といわれています。
仮に40%としても、半分以上の人が消防士になれません。
各自治体で実施される消防士採用試験は、多少倍率は異なりますがかなりの難関です。
例えば、東京消防庁消防官Ⅲ類(高校卒業程度を対象)の倍率は6.6倍です。
参考:令和6年度 職員採用選考・試験結果
※下の方にある表を見てください。
6人のうち1人程度しか合格できない計算になります。
試験は筆記試験だけではなく、面接や体力検査なども実施します。
「人の命を救いたい!」という志を持って専門学校へ通って救急救命士の資格を取得しても、消防士として採用されなければ宝の持ち腐れになります。
2年間で300万円ほどする授業料も無駄になります。
結果として、専門学校を卒業して救急救命士の資格を取得しても活かす場がなく、全く違う業種に就職する人も多くいるのが現実です。
病院で助手として働く救急救命士も
専門学校卒業生の中には、仕方なく病院・救命救急センター・老人介護施設・訪問介護事業者などへ就職する人もいます。
しかし、そういった施設で救急救命士は医療行為は行えません。
救急救命士が活躍できる場所は病院へ急患を搬送する救急車の中だけに限られているからです。
一旦病院へ患者を運んでしまったら、病院での医療行為は医者や看護師の仕事です。
救急救命士という立派な国家資格を持っていても、業務内容は無資格者でもできる助手の仕事です。
いつまで経っても就職できず(何度も採用試験に不合格)、就職浪人をしながら病院で看護師の雑用係として働く救急救命士もいます。
法改正により業務の幅が広がるが限定的
そんな中、救急救命士の資格を活かしきれていない人を少しでも救うために令和3年10月に救急救命士法が改正・施行され業務の幅が拡大されました。
これにより、病院内で救急救命処置を実施することが可能となりました。
これで救急救命士の活躍できる場が増えて求人もさぞ増えるだろうと思いきや、実はそうでもないようです。
救急救命処置といっても入院前(入院しない場合は、病院に滞在している間)と限定されています。さらに、高度な救急医療を提供する三次救急の一部の大病院に限られます。
法改正で認められた救急救命士の業務は極めて限定的なんです。
実際に、法改正後も救急救命士の求人が大幅に増えるほどの改善は見られていません。
消防士になるにはどうすればよいか
安直な考えで入学するとお金と時間の無駄になる
救急救命士の養成校は全国に46校(2023年12月現在)あります。内訳としては、大学7校、短大1校、専門学校27校です。全て私立です。
この中で入学が最も簡単なのは専門学校です。
偏差値はあってないようなもので、学力試験もほぼありません。多くは面接や小論文で「意欲」を判断して合否を判定します。
「専門学校は入学が簡単で、卒業すれば憧れの救急救命士になれる!」なんて考えたらトンデモナイ!
安直な考えで専門学校へ行くと、入学してから現実を知って後悔します。
とにかく消防士採用試験を第一に考えてください
仮に専門学校へ進むとしても、少し極端かもしれませんが救急救命士の資格など取っても取らなくてもどうでもいいんです。
専門学校在学中に消防士採用試験に合格すれば途中で辞めてしまっても全然問題ないです。むしろその方が理想でしょう。
採用後に、公費(つまり税金)で救急救命士の資格を取らせてくれる場合もあります(※全員じゃない)。
私は、専門学校へ進むのが「良くない」とは言ってません。
卒業生のうち何人が本当に消防士になったのか、それくらいは調べてから入学した方がいいでしょう。
ひょっとしたら1割くらいしか消防士になってないかもしれません。
学校へ行く以上は、採用試験合格を第一に考えて相当な覚悟を持って勉強してください。
専門学校であれば当然授業の中で公務員試験対策のカリキュラムもあります。その授業を受けるのが目的と考えてください。
必ず6.6倍の競争率を勝ち抜くという強い意志を持って勉強してください。