救急救命士の資格は消防に就職できないと無駄になる可能性も
種類 | 難易度 | 合格率 |
国家資格 | — | 85% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
養成課程修了 | 200万円~ | 2年以上 |
活かし方 | 全国求人数 | おすすめ度 |
スキルアップ | 88件 |
- 上記は養成学校を卒業して受験資格を得る場合です。
- 難易度を表現するのはふさわしくないので省略します。合格率は最終の国家試験についてです。
- 全国求人数は、ハローワークの情報を基に2024年6月5日に集計しました。
救急救命士とは、病気や怪我などの急病患者を病院に搬送する際に、救急車の中で生命を維持する措置を行うための国家資格です。
病院内での医療行為はできず、活躍の場は救急車内に限られます。
消防士(公務員)として就職できなければ、単なる紙クズになってしまう可能性が高いです。安易に専門学校へ進むのは止めた方がいいです。
法改正により救命救急士が病院などで働く際の業務の幅が一部広がりましたが、雇用の改善にはいたっていません。
救急救命士とは
救急車の中で医療行為を行うのが仕事
救急救命士は、病気や怪我などの急病患者を緊急で病院に搬送する際に、救急車の中で生命を維持する措置を行うのが主な仕事です。
大量の失血があった場合などは、病院に着くまでの処置で患者の生死が分かれます。
救急救命士は、止血処置や脈拍の測定はもちろんのこと、心臓や呼吸の止まっている患者に対して医師の指示を受けながら点滴や気道の確保などの救急医療行為も行います。
救急救命士の活躍の場は主に救急車です。
患者を搬送する際に救急車に搭乗して病院に到着するまでの限られた時間内に医療行為をして人の命を救います。
あくまでも病院に着くまでの間です。
救急救命士は病院内では医療行為はできません。病院で医療行為をするのは医師や看護師です。
関連団体:救急救命士の教育訓練や調査研究-般財団法人救急振興財団
資格を活かすためにはどうすればよいのか
救急救命士とは職業の種類ではなく、あくまでも資格の名称です。
大学や専門学校で専門の課程を修了して国家試験に合格すれば誰でも取得は可能です。
しかし、活躍の場というと限られています。
救急救命士の資格を最大限に活かせるのは、消防士になって救急車に乗った時です。
日本において、急病患者を病院まで搬送する業務を担っているのは消防組織です。
大学や専門学校などで救急救命士の資格を取得したとしても、各自治体の消防職員(消防士)採用試験に合格して消防の救急隊員にならなければ資格を活かすことはできません。
消防職員として採用されるには公務員試験をパスしなければなりません。
消防士などの公務員は人気があります。救急救命士の資格を取得していない一般の高校・大学新卒者も多く応募します。
そのため当然倍率は高くなります。
救急救命士の資格取得者だからといって全員は採用されません。
結果として、大学や専門学校を卒業して救急救命士の資格を取得しても、全く違う業種に就職する人も多くいるのが現実です。
救急救命士の中には、やむを得ず病院、救命救急センター、老人介護施設、訪問介護事業者などに就職する人もいます。
しかし、そういった施設で救急救命士は医療行為は行えないので、業務内容は看護助手としての仕事です。
資格を有していながら活かしきれていない救急救命士が数多く存在している現状があります。
合格しても資格が紙くずになる可能性が高い
世の中には救急救命士の資格だけ持っている人が大勢いる現実
前述の通り、救急救命士の資格を取得しても、その後の消防士採用試験に合格するのが大変です。
救急救命士の有資格者で消防士になれるのは30~40%ほどです。
つまり合格者の半分以上は消防士になれません。
救急救命士の試験合格者は1,400人ほど。そのうち約800人が地方公務員として消防機関で働く。その他の約600人の就職先は様々で、資格取得を必ずしも活かせていないという。この約600人を病院などでうまく活用することが課題となる。
引用:救急救命士の病院でのニーズなどを調査|第941回/2019年6月1日号 HTML版:全日病ニュース:全日病の発言 – 全日本病院協会
参考:病院内救急救命士の職能と業務|日臨救急医会誌(JJSEM)2020;23:665-70
仕方なく、救急救命士とは全く関係の無い民間の病院や企業に勤めている人もいます。
世の中には救急救命士の資格だけ持っていて活かしていない人が大勢います。
中には看護師の学校へ入り直して新たに看護師の資格を得る人もいますが、それはほとんどが女性です。
令和3年10月の法改正により業務の幅が広がるけど・・・
救急救命士の資格を取得しても資格を活かしきれていない人が多い現実を踏まえ、令和3年10月に救急救命士法が改正・施行されました。
これにより、以下2つの条件を前提に救急救命士は病院内で救急救命処置を実施することが可能となりました。
- 入院前の重症傷病者に対しての院内処置
- 病院勤務をするにあたり院内研修を受ける
法改正前は、救急救命士は「病院又は診療所に搬送されるまでの間」しか業務を行うことができませんでしたが、「医療機関に入院するまで、または滞在している間」に延長されたワケです。
これで救急救命士の活躍できる場が増えて求人もさぞ増えるだろうと思いきやそうでもないようです。
法改正で認められた救急救命士の業務は極めて限定的なんです。
病棟(病室)には看護師がいますから、そこでの処置は行なえません。
あくまでも入院前(入院しない場合は、滞在している間)と限定されています。
さらに、重症傷病者を受け入れる病院となると高度な救急医療を提供する三次救急の病院です。
一次病院・二次病院であればそこまで重症感のある傷病者は搬入されてきません。
つまり、救急救命士が救急車以外の場で活躍できるのは地域のごく一部の大病院(三次救急)ということになります。
さらに、ここでは書ききれないような細分化された条件がいくつも存在します。
実際に、法改正後も救急救命士の求人が大幅に増えるほどの改善は見られていません。
言いづらいですが、「病院で救急救命士はいらない」ということです。
参考:民間養成校卒業後で医療機関勤務する救急救命士に関する検討(pdf)
消防士になれず病院で働く救急救命士の悲しい現実
消防士として就職できない(採用試験に不合格)ため、来年以降の合格を目指して浪人(消防浪人)しながら病院で働く救急救命士もいます。
しかし、前述の通り救急救命士とはいえ一部の例外を除いて病院で医療行為はおこなえません。
病院では救急救命士の資格は紙切れ同然なので結局何もできず、業務の内容は資格が要らない看護助手と同じだったりします。
つまり看護師の雑用です。
求人サイトで検索すると救急救命士を募集してる大手の病院がいくつか見つかります。
消防士として就職できないなら病院に勤務すればればいいじゃないか!と思われるかもしれません。
しかし、実態は看護師業務の補助、病院の緊急車両の運転手(滅多に出動しない)、電話対応、雑用が主な業務です。
しかも非正規の採用である場合がほとんどです。人手不足解消のために誰でもいいから募集しているような求人内容です。
昇進も望めませんし給料も低いです。
同じ病院内で救急救命士と看護師、どっちが上?明らかに看護師の方が立場は上です。
資格があっても消防士の採用は有利にはならない
救急救命士の資格を取得していれば消防士の採用試験は有利になるのでは?
これは、もっともな意見だと思います。
あらかじめ資格を持っていれば、後から税金を使って研修に行かせる手間も省けるはずです。
しかし、現実は違います。救急救命士の資格を持っていても有利にはなりません。
一部の自治体では救急救命士の採用枠を設けていますが、ごく少数です。倍率も相当高いです。
東京消防庁をはじめとして全国の消防組織には救急救命士は大勢います。これ以上必要ないほど大勢います。
全国ほぼどこの救急隊にも必ず最低1名は救急救命士がいます。2名や救急隊3名全員が救急救命士なんてことも珍しくありません。
つまり、救急救命士の数は足りていてこれ以上の需要は無く、新たに採用する必要がないんです。
万が一必要であれば、税金を使って職員を養成所へ行かせれば済むことです。民間企業と違ってその点の予算は潤沢です。
残念ながら、有資格者であっても公務員試験は有利にはなりません。
さらに申し上げますと、救急救命士の国家資格の合格発表は毎年3月末です。
つまり、公務員の採用試験時にはあくまでも専門学校の生徒(身分は高卒)であって資格は「取得見込み」に過ぎません。
一般の高校新卒予定者(既卒者)と同じ土俵で試験を受けることになります。
役に立つ資格なのか?
救急救命士の資格を活かせる職業は、現時点ではほぼ消防士に限られています。
病院やその他の医療施設で役立つ資格ではありません。
仮に大学・専門学校を卒業して救急救命士の資格を取ったところで、消防士にならなければ学費と費やした時間が無駄になってしまいます。
全国に救急救命士になるための専門学校がいくつか存在しますが、卒業生全員が消防に就職できて救急救命士として働けるワケじゃないんです。
高校を卒業して、救急救命士の専門学校へ進もうと考えているのであれば、自分が進もうと考えている大学や専門学校の消防士就職率は何パーセントぐらいか、よーく調べてその上で判断してください。
ひょっとしたら就職できない人がほとんどかもしれません。
本当は、消防士として就職し、それから現場での経験を重ねた上で職務上救急救命士を目指すのが一番良い方法です。
そうすれば救急救命士の資格が無駄になることはありません。もちろん資格はタダで取得できます。
将来性について徹底研究
女性の救急救命士も増えているが体力勝負!
女性の救急救命士の需要は高まっています。
総務省からも女性の職員を積極的に採用するようにとの通達も出ています。
救急車で搬送される人が女性の場合、やはり男性の救急隊員よりも女性の救急隊員の方が安心します。特に妊婦であれば女性の救急隊員の方が安心できますす。
しかし、救急救命士であっても身分は消防士です。
消防士採用試験に合格し採用されると、まずは消防学校へ半年間通い、消防士としての訓練を受けなければなりません。
女性とはいえ訓練は男性と同じ内容です。手加減したり誰かが助けてはくれません。女性にはなかなか厳しいでしょう。
女性の消防士、救急救命士は確実に増えています。
体力勝負であるのは言うまでもありません。
救急救命士か看護師、どちらがおすすめ?
人を助ける職業に就きたい、ということで救急救命士か看護師(准看護師)のどちらかを目指したいと考えている人も多いようです。特に女性です。
どちらでもかまわないのであれば、看護師の方が堅実だと思います。
何度も書いている通り、救急救命士の資格を取得しても採用試験に受からなければほぼ役に立ちません。
仮に採用されたとしても、救急救命士の数は足りている場合も多く、すぐに救急隊へ配属されるとは限りません。
看護師の場合、学校に通い国家試験に合格すれば100%看護師として病院に勤められます。資格取得後から早期に医療の現場で働けます。
また看護師は全国的に不足しているので就職先には困りませんし、転職も比較的自由にできます。
一方、救急救命士の活躍の場は救急車の中に限られるため就職先も消防関連に限定されます。
救急救命士か看護師で迷っているのであれば、看護師の方がおすすめです。
将来性もあれば、需要もあります。就職・年収という面でも取得するメリットは段違いです。
救急救命士になるには
救急救命士になるための進路は2通りです
救急救命士になる手段は、大きく分けて2通りです。
- 民間の救急救命士を養成する専門学校・短大・大学において受験資格を得る。
- 消防の職員(消防士)として採用された後に、養成所に通って受験資格を得る。
いずれも定められた課程を修了すれば受験資格を得られるだけですから、その後国家資格に合格しなければなりません。
合格率は80~85%ほどです。
参考:第46回救急救命士国家試験 教育施設別合格者状況|厚生労働省
1.の場合は、最短で2年間学習して試験に合格すれば救急救命士になれます。もちろん学費などは自己負担です。
大学であれば4年生の3月に国家試験を受験し、救急救命士の資格は取得見込みとしてその後各地方の採用試験を受けます。
2.の場合は、消防士として就職してから厚生労働省令で定める課程を修了(250時間)し、その後、5年または2,000時間の実務経験を経た後、6ヶ月以上の救急救命士養成所で研修し受験資格を得ます。
税金を使って専門の課程を学習するので、大学や専門学校のように学費はかかりません。
消防士全員が救急救命士になるわけではないので、該当する部署に異動にならない限り取得する機会はありません。勤務評定にもよりますし、自治体によっては選考試験もあります。
しかも、一定以上の救急の経験がないと養成所すら入れませんので取得までに時間がかかります。
自治体の方針や所属部署にもよりますが、早くても6年以上、中には10年以上かかるところもあります。
もちろん大学・専門学校を卒業と同時に救急救命士の資格を取得して、そのまま消防士として就職する人も大勢います。これが救急救命士の資格を最も活かせる可能性の高い進路かもしれません。
一部ですが、自衛隊や海上保安庁、警察でも資格を活かした仕事をするのは可能ですが、一般的ではないのでここでは省略します。
必ずしも偏差値が高い大学が有利とは限らない
救急救命士の受験資格を得るための専門課程がある大学は全国で14校(うち短大1)、専門学校で26校あります(2023年3月現在)。
※詳しくはWikipediaで「救急救命士」と入力すれば一覧が出てきます。
※少し古いデータですがこちらも参考になります。
参考:救急救命士養成所一覧(平成22年4月1日現在) 厚生労働省(pdf)
そして、肝心の消防士として採用された人数の大学別ランキングは以下の通りです。
1位 国士舘大学 84人
2位 帝京大学 58人
3位 帝京平成大学 47人
4位 日本大学 35人
採用は公務員試験の結果ですから、偏差値が高い国公立大学が有利と思ったんですけど全く違ってました。これは意外でした。
上位は名だたる体育会系の大学ばかりです。
消防士はある意味体力勝負の世界です。体育会系の学生が多く目指すため、結果として採用数も多いのだと思います。
なお、国士舘大学、帝京大学、帝京平成大学には救急救命士の専門課程の学部がありますが日本大学にはありません。どれくらいの人数が専門課程を修了して救急救命士の資格取得済みかは不明です。
高卒でも消防士になれますが、初任給で大きな差があり、その後の昇進(昇給)も大卒の方が有利です。
大学を卒業してから消防士になるのがおすすめです。
まずは無料の資料請求
社会人でも入学できる大学・専門学校の資料請求
テキスト・問題集・参考書
おすすめ参考書
※Kindle版です。こちらは救急救命士の仕事を紹介している内容ではありません。
かつてNHKが放送していた人気番組「プロジェクトX」で救急救命士という国家資格が誕生するまでのいきさつが紹介されました。
私も当時テレビで見ましたが、熱い想いがヒシヒシと伝わってきて感動したのを覚えています。
救急救命士という言葉が世間でも認知されるようにった昨今ですが、その資格の創設にはとてつもない苦労があったことを克明に記録しています。
命を救うために救急車に乗っているはずの救急隊員が、「患者に何の処置もできない、ただの運び屋」なんて一部の人には呼ばれることもあったようです。
本当は救えるはずの命も、手をこまねいて見ているだけで救えない、そんなもどかしい思いでいっぱいだった一人の救急隊員が、国を動かして救急救命士の資格を誕生させます。
今では輸液、気管挿管、アドレナリン投与など高度な処置も救急救命士はおこないます。
救急救命士の創設に消防人生をかけた東京消防庁職員の熱い思いを記した感動の作品です。素晴らしい内容です。
種類 | 評価 |
参考書(電子書籍) |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
年1回:3月中旬
お申し込み
1月上旬~2上旬
受験資格
大学、専門学校において決められた課程を修了という学歴の条件と、業務経験があって養成所で必要な知識・技能を修めていることなどの条件があります。
試験会場
北海道、東京都、愛知県、大阪府、福岡県
受験料
30,300円
試験内容
【試験科目】
- 基礎医学(社会保障・社会福祉、患者搬送を含む。)
- 臨床救急医学総論
- 臨床救急医学各論(一)(臓器器官別臨床医学をいう。)
- 臨床救急医学各論(二)(病態別臨床医学をいう。)
- 臨床救急医学各論(三)(特殊病態別臨床医学をいう。)
試験の問い合わせ先:一般財団法人日本救急医療財団
合格基準
- 必修問題:80%以上の正解
- 通常問題:60%以上の正解
合格発表
3月末
主催者情報
試験に関する詳しい情報は救急救命士国家試験の施行|厚生労働省をご覧ください。