「短期間でプロになれる」「在宅で簡単に取得して副業に活かせる」といった魅力的なキャッチコピーで受講生を集める民間の心理カウンセラー講座が多く存在します。
しかし、これらの多くは民間企業が独自に発行しているものであり、公的な資格としての効力はありません。
大切なお金と時間を無駄にしないために、その実態を本音で解説します。
事業者の一部には、「就職や転職に活かせる」と宣伝を繰り返すケースもあります。
けれど、実際の求人実態と乖離している場合は景品表示法(優良誤認表示)の観点からも問題視され得る誇張表現であるため、受講生側の慎重な見極めが必要です。
こうした資格の多くは、特定の通信講座を受講することが受験条件となっており、教材費と受験料がビジネスモデルの核となっています。
試験自体もテキストを見ながら自宅で解答できる形式が多く、合格率はほぼ100%に近いのが実態です。
裏を返せば、「誰でも簡単に取れる資格」であるため、採用市場での差別化や専門性の証明にはなり得ないというデメリットがあります。
よく似たような名称の検定試験だらけ!
ここでは具体的な名称を上げるのは止めておきますが、心理カウンセラーと呼ばれる民間の検定試験は非常に多く存在します。
だいたい「メンタル」と「ケア」と「カウンセラー」と「心理」あるいは「心理士」の単語の組み合わせで構成されており、少し順番を変えればいろんな名称が作れます。
※すべての資格に意味がないと言っているわけではありません。国家資格である公認心理師はもちろん、認定心理士、心理学検定、臨床心理士のように、業界内で高い評価や信頼を受ける民間資格・学会認定資格もあります。例えば認定心理士は大学で心理学の単位を履修している必要があります。
では一体、一般的な通学・通信系の心理カウンセラー資格はどれくらい役立つのでしょうか?
心理系の民間資格は仕事に直結しにくい

こうした民間の心理系検定試験に合格すれば、すぐにプロのカウンセラーとして独立・就職できると期待する人が少なくありません。
しかし、現実的にはカウンセラーの専門職としての採用はほぼ無理だと思ってください。
例えば、カウンセラーの専門職種のひとつにスクールカウンセラーがあります。
公的なスクールカウンセラーの募集要項を見ると、そのほとんどが国家資格である公認心理師や、医療・教育・福祉の公的現場で長年高く評価されている臨床心理士を持っていることが条件となっています。
そのため、数週間~数か月の通信講座で得た民間資格を履歴書に書いて応募しても、募集要件を満たさず、書類選考の段階で対象外となるのが現実です。
そもそも、多くの民間資格は、通信講座を受講すれば、短期間で比較的容易に取得できるシステムになっています。
試験の多くは自宅で受験可能で、時間制限もなくテキストを見ながら解答できる場合が多いので、深い理解がなくても合格できてしまうケースが目立ちます。
中には、添削課題を全てクリアすれば試験免除で合格となる講座もあり、これでは専門的なスキルを客観的に証明する「資格」として機能させるのは難しいでしょう。
学習する内容も基礎の部分に留まるため、これだけで実践的なカウンセリングを行うのは現実的ではありません。
本来心理学とは、長い時間をかけて研究する分野のはずです。
多くは指定講座の受講が必須
民間の心理カウンセラーの試験を受ける前提として、特定の講座の受講が必須となっているケースがほとんどです。
つまり、資格の認定と通信講座がセットになっていて、それが運営会社の主な収益源となっています。
講座に申し込んでお金を払って、テキストを数時間から数日間読み、試験を受けて合格すれば、賞状やIDカード風の認定証が届きます。
一応、学習の達成感を味わうことはできるでしょう。
通信講座は、20,000円~80,000円ほどです。多くは50,000円程度ですから、そんなに高額という程でもありません。
実はここがポイントなんです。
この程度の費用であれば、仮に合格後に仕事が見つからなかったとしても、「自分の勉強不足だった」「趣味の延長だった」と受講者側が納得して諦めてしまいやすい金額設定とも言えます。
中には、さらに深い知識を得るために案内されるままステップアップとして上位の有料コースを申し込んでしまう人もいます。
しかし、名称が変わっても民間資格であることには変わりはないため、心理職としての専門職採用が有利になるわけではありません。
本格的に学びたいなら大学で心理学を専攻してください

心理職の専門家である臨床心理士(民間資格)、公認心理師(国家資格)の資格を得るには、原則として大学で4年間、さらに指定の大学院で2年間など、計6年間にわたる本格的な専門課程や実務要件を経る必要があります。
それほど、人の心や脳と接する心理学という分野は奥が深く、責任の重い研究領域なのです。
そこを、わずか数週間〜数か月程度の通信学習と在宅試験だけで「プロのカウンセラー」と名乗って実務を行うことには、知識やスキルの面で大きなリスクが伴います。
専門的なトレーニングや指導教授からの実技指導を受けていない状態で、メンタルヘルスに深い悩みを抱える人のカウンセリングを行うことは、時として相談者の状態を悪化させるなど、不適切な対応に繋がる危険性も否定できません。
中には「2週間でプロのカウンセラーになれる!」なんて民間資格も存在しますが、実務を担うには十分な準備期間とは言えません。
他者の心を預かる以上、相応の責任と慎重さが求められる世界だからです。
大切なお金と時間を使う前によく調べましょう
誤解のないように補足しますが、すべての民間資格が無意味なわけではありません。
例えば
- 家族や身近な人の悩みを聞くスキルを身につけたい
- 職場で自分自身のメンタルケア(セルフケア)や、部下の不調に気づく視点(ラインケア)に活かしたい
こういった明確な目的がある場合、短期間で手軽に学べる講座として活用できます。
問題となるのは、「民間資格を取ればプロのカウンセラーとして就職・独立できる」という現実と乖離した期待を抱いてしまうことです。
心理系に限らず、民間資格の中には、就職の決定打にならないものが少なくありません。
趣味や自己啓発として学ぶ分には個人の自由ですが、仕事に繋げることを目的にするのであれば、その資格が業界内でどう評価されているかを事前に徹底的に調べることを強くおすすめします。
大切なお金と貴重な時間を費やした結果、「求人が全くなかった」と後悔することになりかねません。
仕事での活用を目指すのであれば、実効性の低い民間資格の取得を急ぐ前に、まずは現実的な求人状況や求められる資格の要件を確認しましょう。

