就活予定の学生や、転職を考える社会人に人気の資格と言えば、簿記検定、MOS、FP(ファイナンシャルプランナー)、ITパスポートなどです。
履歴書を埋めるために取得に走る方も多いようですが、これらを持っているだけで就活が圧倒的に有利になると期待するのは危険です。
率直に申し上げて、これらの資格は、持っていれば採用が有利になるような難関資格ではありません。採用の本質を知らないと、せっかくの努力が空回りしてしまう可能性があります。
履歴書を一行埋めて自己PRの材料になるかもしれませんが、そもそも採用する企業側は学生が持っている資格によって採用を決めることなどありません。
※FPは技能検定試験、ITパスポートは国家資格です。
※簿記(特に二級以上)であれば多少評価される可能性はあります。
企業は、採用にあたって学生の所有資格はほぼ見ていない
採用する企業側は学生が持っている資格などに感心はないという点について、根拠となる資料が経団連所属企業によるアンケート結果に出ています。
※下記は「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」です。

出典:一般社団法人 日本経済団体連合会「2018年度 新卒採用に関するアンケート調査結果」(pdf)
※抜粋したのは6ページめです。
※なお、この調査は2018年度(および2019年度)をもって終了しており、それ以降の更新はありませんが、企業が選考時に重視する資質の傾向(コミュニケーション能力や主体性の重視)は現在も大きく変わっていません
そもそも採用基準に「保有資格」の項目がない。
上記の表内に「資格」の項目がありません。つまり、採用する企業としては、採用する際に学生の保有資格を判断基準にすることはないということです。
かつて、2014年度のアンケート結果までは「保有資格」という項目があったんですけど、それでも0.8%という低い数字でした。
経団連参加企業のアンケート結果ですから、一定規模以上の企業が対象です。
主に採用にあたっては「学生のコミュニケーション能力」や「主体性」を重視しているということがわかります。
企業は「資格を持っていること」そのものよりも、その人の人間性や、入社後に活躍できるポテンシャルを見ています。
かつてあった「資格」の項目がなくなったのは、誰でも短期間で取れる検定試験をずらずらと履歴書に書く学生が増えたので、思い切ってバッサリと採用基準から外した企業が増えたのが理由かもしれません。
けれども、資格に対する評価が全くゼロということはないので、おそらく一番下の「その他 3.9%」に含まれているものと思われます。
ここで取り上げているもののうち、ITパスポートやFP(技能士)は法律に基づく国家資格です。
また、日商簿記は公共性の高い検定試験であり、決して怪しい民間資格ではありません。
しかし、これらが就活で決定打になりにくいのは、法律上の独占業務を持たない基礎的な位置づけだからです。
履歴書に書くだけで一発逆転できるような魔法の武器にはならない、というのが企業の本音と言えます。
簡単な民間資格程度では自己PRにもつながらない

いくら簡単な資格や検定試験とはいえ、履歴書の免許・資格欄に資格名を書けばそれなりに面接担当者にPRできるのでは?という意見もあります。
まぁ言いたいことはわからないでもないです。
けれど、きっと書いてもプラス要因にはならないでしょう。
資格取得は、上記の表の3番めに出てくる「チャレンジ精神」に該当して自己PRにつながるような気もします。
けれど、数週間~数か月程度で比較的容易に短期間で取得できる程度の民間資格などで「チャレンジ精神」として評価されるのでしょうか?
あるいは専門性が高いとして評価されるのでしょうか?
評価されるとしたら、取得するのに長い時間を要する難関な国家資格くらいでしょう。
資格といっても学習する内容が基本的すぎる
MOSやITパスポート、FPなどは学習する内容が基本的すぎます。
それに、合格したところで特別な業務ができるワケでもありません。
入社したら誰でも数日間でマスターできる程度の内容です。
「MOSは社会に出たら必ず必要だから合格者は有利になる」なんて言うのも理解できますが、ExcelやWordなどの特定のパソコンソフトが使えるという理由だけで企業は採用しません。
それらは使えて当たり前なので、入社したらイヤでも使うようになります。
提出資料をExcelで作れと上司に言われたらそうするしかないんです。
初心者でも社内研修や入社前研修ですぐに使えるようになります。
唯一評価されるとしたら簿記二級以上
簿記、MOS、ITパスポート、FPの中で、唯一評価されるとしたら簿記検定とFP(2級以上)くらいでしょうね。
簿記検定は、三級では弱いです。少なくとも二級くらいあれば少しは有利になる可能性はあります。
ただし、簿記二級だけで必ずしも有利になるとはいえません。
面接の結果、コミュニケーション能力や主体性に問題がなければそれに合わせて簿記二級が評価されるといった感じです。
それはFPも同様で、3級はあくまで入門レベル(入社後に全員に取らせる企業も多い)ですが、2級以上を持っていれば、金融や不動産業界において『基礎知識や学習意欲がある』とみなされ、評価の対象になり得ます。
もちろん簿記二級を持っていても、面接の結果が悪ければ速攻で落とされます。
基礎学力の高い学生であれば、入社後仕事をしながら簿記二級程度の実力はすぐに付きます。
そもそも経理部門の採用人数は少いので、仮に1級を取得した難関私大生であっても即採用とまではいきません。
なぜ就職が有利になるなどという噂が多いのか?

ではなぜ学生の間で、「簿記、MOS、FP、ITパスポートを持ってると就活が有利になる」なんて噂が多いのか?
理由は簡単です。
資格スクールや講座を販売する会社が、受講生を集めるためのマーケティングとして「就職・転職に有利」という側面を強調して訴求することが多いためです。
さらに、何も知らない人達が「資格=就活が有利」などという根拠もない書き込みを繰り返すので、知識のない学生が信じてしまうんです。
取得しないと就活が不利になる、転職活動がうまくいかない、なんて不安を煽れば藁をもすがる思いで取得に走る気持ちは理解できないでもないです。
けれど、少し考えれば常識的に分かるような気もするんですけど・・・
そんな大人の世界の事情に振り回されている学生が少し可愛そうな気はします。
資格よりももっと大切なことはいくらでもある。
資格よりも、もっともっと大事なことがたくさんあります。
民間資格を100や200持っていても、企業の採用基準に対応しなければいつまで経っても採用されません。
本当に基本的な内容ですが、面接におけるマナーを知らない、身だしなみがダメで表情が暗いようでは資格以前の問題です。
それが証拠に先程のアンケート結果によると、低い数字ですが6.5%ほどの企業で「一般常識」を重視するとしています。
ロクに企業分析もできていないような、話しを盛って平気でウソをつくような(学生のウソなどすぐばれます)、ありきたりの質問しかできないような、面接担当者の質問に的確に答えられないような・・・それじゃ採用されません。
もちろん採用基準に出身大学も入ってます。
学歴フィルターなども普通に存在するので、民間資格をどれだけESに記入してもはじかれてオシマイです。
社会人であれば、それまでの経験、実績、年齢、学歴などの方がよほど重要です。
地方へ行けば出身高校で判断される場合もあります。
関連ページ:田舎では出身高校が出身大学よりも重視されるケースがある
比較的短期間で取得できるような資格や検定試験などでは、新卒大学生の就活、社会人の就職や転職は有利になりません。

