公的資格の制度は2005年に廃止となり現在は存在しない

本を口元にあてて疑問に感じる女性

旧公的資格は存在しますが、公的資格は世の中に存在しません

民間資格の中には、大々的に「公的資格」とアピールしているものが少なくありません。

例えば、簿記検定、英検、漢字能力検定、数学検定、販売士、秘書検定、色彩検定などです。

下記のように使うことで資格の優位性をアピールするのが狙いです。

  • 流通業界唯一の公的資格である販売士資格
  • 文部科学省後援の公的資格である秘書技能検定

実はこの「公的資格」という制度、試験主催者と天下り団体や自治体との癒着が問題となり、2005年に廃止になっています。

つまり、現在は公的資格は存在しないんです。英検も簿記検定もTOEICも単なる民間資格の一つにすぎません。

「公的資格」と大々的にアピールして受講生を募集している民間資格が多くありますが、多くは受験生募集の宣伝文句です。

目次

公的資格って何?民間資格とどう違うの?

ノートにメモする手のイメージ画像

当サイト(役に立つ資格・役に立たない資格)では、簿記検定や統計検定について民間資格と紹介していますが、読者の方から「簿記検定は民間資格ではありません。公的資格ですよ」という指摘のメールをもらうことも度々あります。

公的資格という表現を使うことで、「民間の検定試験の枠を超えた国も認めている公的な試験」という権威付けを強調したいんでしょうけど、はたしてどれくらい国が民間資格に関与しているのか調べてみました。

関連ページ:資格の種類について

参考:簿記検定とは販売士とは秘書検定とは英検とは

この公的資格の根拠は何かというと、「文部科学省、厚生労働省、経済産業省、中小企業庁などの国の機関である省庁の後援をもらって実施している検定試験」ということが理由のようです。

知らない人が「文部科学省後援」と表示されているのを見ると、「なるほど、省庁の後援という後ろ盾があるのであれば公的な資格なのかなぁ・・・」と、なんとなく考えてしまいます。

実際に多くの人が公的資格の存在を認めています。ネット上でも公的資格という分類をしているサイトがほとんどです。

文部科学省のサイトで後援について調べてみました

文部科学省の玄関付近

そこで、改めてこの「後援」がどれくらいの意味があるのか調べてみました。省庁の名前を利用するくらいですから、厳格な基準が存在するのかもしれません。

文部科学省のサイトに「後援」をもらうための説明書きがあります。

文部科学省後援名義等の使用許可申請について

文部科学省では、団体等が主催する各種の行事等が、当省の推進する施策と密接に関連し、積極的に後援すべきと認められる場合には、主催者からの申請に基づき、文部科学省後援名義や文部科学大臣賞(以下「後援名義等」という。)の使用を許可しています。
後援名義等の使用を希望される場合は、以下の内容を御確認の上、申請書類を御提出ください。なお、行事等の内容によっては、後援名義等の使用を許可できないことがありますので、あらかじめ御了承ください。

また、虚偽の申請等により、後援名義等の使用許可が取り消された場合は、5年間、当該主催者等が主催する行事等に対して後援名義等の使用を許可することができないので、申請の際は、十分に御注意ください。

【出典】:文部科学省後援名義等の使用許可申請について:文部科学省

という内容です。検定試験だけではなく運動会や文化祭などの行事でもよいようです。

許可されれば高校の運動会を、「文部科学省後援○○高校大運動会」と表示してもいいんです。なんとなく箔が付きそうです。

意外と簡単に「後援」の許可はもらえる

調べていくうちに分かったんですけど、実はこの「後援」とは、PRするために「省庁の後援名義を使っていいですよ」という程度のもので、省庁に申請すれば明らかなインチキ資格商法でない限り簡単に使用許可がおりるようです。

※注意:一部にはマルチ商法まがいの企業も「内閣府認定」と堂々とPRしています。

しかし、省庁が積極的に資格として認めて奨励しているわけではありません。合格者を優遇することもなければ金銭的な援助なども一切ありません。合格者の一覧が官報に掲示されることもありません。

そこには法律的な根拠は一切ないということです。

「後援」の使用許可はまともな組織が運営する行事であれば意外と簡単にもらえるようです。積極的に省庁が後援しているわけではありません。省庁の名称を使っていいというだけです。

例えば、中学校で読書感想文のコンクールを毎年開催しているとします。法令上問題のない団体が継続的に開催していれば、文部科学省後援名義や、文部科学大臣賞という名称の使用が許可されます。

優秀な読書感想文に対して、「文部科学大臣賞」と表彰状に記してもよいということです。

ちなみに各省庁も同じように後援の制度を設けています。防衛省、外務省などのサイトを見ると同じような基準が明記してありました。

申請費用については特に記述がないので、おそらく無料なんだと思います。

省庁が認定する公的資格は過去には存在した

では、公的資格という名称がいつから使われるようになったのか?それについて調べてみました。

以前は、国の基準に基づいた民間技能審査事業認定制度により、各省庁のトップである大臣が認める「認定資格」の制度がありました。

これらの認定資格のことを一般的に公的資格と呼んでいたんです。つまり、

各省庁の認定資格 = 公的資格

だったワケです。

当時の公的資格の代表格はなんといっても漢字能力検定、いわゆる漢検です。

高校入試を控えて生徒のほぼ全員を受験させていた中学校もあったようです。

漢検は民間資格ではありますが、以前は公的資格として抜群の知名度を誇っていました。

2005年に公的資格の制度は廃止になりました

公的資格の代表格だった漢字能力検定の合格証書

ところが、2005年に民間技能審査事業認定制度は廃止になりました。各省庁のトップである大臣が認める「認定資格」の制度そのものがなくなったんです。

つまり「認定」の制度の廃止によりこの時点で公的資格はなくなりました。

廃止になったのは、漢字能力検定を主催する日本漢字能力検定協会について「実態については、全貌が必ずしも明らかでない」等の理由からです。

莫大な受験料収入を、投資やら、天下り団体への献金やらに当てていたようです。もちろん、夜な夜な接待やら、普段行けないようなお店で豪遊とか・・・

受験者を取りまとめていた各教育委員会へバックマージンが支払われていたのかもしれません(これは想像です)。

「中学生一人の受験につき、◯◯円のキックバック」なんてなっていたのかも(これも想像です)。

羨ましい限りです。

青少年から集めた現金をこういった使い方に当てていたんですね。

「認定」は廃止になり、代わりに「後援」の制度が。

「認定」はなくなりましたが、代わって積極的な支援のない「後援」という名称に代わりました。前述の文部科学省後援といった制度です。

以前は、簿記検定、秘書検定、漢字能力検定などは関係省庁(国)から認定を受けていたのでその時点では公的資格でした。

しかし、省庁が認定する公的な民間資格の制度は廃止されたので、その時点で公的資格は存在しなくなったということです。

【参考】:規制行政に関する調査-資格制度等-結果に基づく勧告(要旨)

実は漢字能力検定は、実施している団体の不祥事や天下り団体と民間団体の癒着などが問題になったため、認定どころか後援さえも取り消されており完全な民間資格になっています。

現在は公的資格は存在しません。

繰り返し申し上げますが、民間検定試験の中に公的資格は現在は存在しません。

「国の認定」の制度が廃止された今は「元認定資格」は存在します。公的資格が廃止されて「元公的資格」や「旧公的資格」は存在するということです。

つまり、現在のところ公的な価値を持つ民間資格は存在しません。

民間団体が実施する検定試験には法的な根拠はなく、公共性を有するものはないということです。

「公的資格とは?」という問いに対しては、「既になくなった制度です」が正しい回答です。

公的資格と称するのは明らかな誇大表示です。

秘書検定、葬祭ディレクター、カラーコーディネーター検定、色彩検定、販売士検定、英検、消費生活アドバイザー…多くの民間検定試験が関係省庁の「後援」をもって公的資格と称しています。

統計検定にいたっては、総務省、文部科学省、経済産業省、内閣府、厚生労働省・・・と、ナント!5省庁から後援を得ています。

さすがにちょっと欲張りすぎですよぉ~

資格情報:統計検定とは

しかし、これらの民間資格は決して公的な資格ではありません。

後援をもって公的資格というのは明らかに誇大表示と言えます。

中には怪しい団体が運営する「公的資格」もあるので要注意

受講生を募集するために、省庁の後援を得て宣伝しているだけならまだマシな方です。

実は、調べていくうちにわかったんですけど、マルチ商法に加担しているような団体が運営する自称「公的資格」も存在するので要注意です。

とある健康系の民間資格ですけど、デカデカと「文部科学省後援」と宣伝して受講生を集めています。

内閣府認定を語る怪しいマーケティング系の民間資格もあります。

※以前は具体的な名称を上げていましたが誹謗中傷だのと文句を付けられたので削除しました。

最近特に増えているのがこの「内閣府認定」を語る民間資格です。概ね取得しても役に立たないので要注意です。

怪しい公的資格一覧を作って公表したいんですけど、おそらくキリがないくらいの数になりそうなので止めておきます。

単に受講生を集めるために公的資格と名乗っているだけ

では、どうして公的資格と大々的にうたっている民間資格が多いのかというと答えは簡単です。

公的で省庁のお墨付きを得ているかのようにアピールすれば受験者を集めやすくなるからです。

受験者も、他の民間資格と比べて優位性があるように思えるので、単なる民間資格よりも役立つ勘違いするでしょう。

省庁の権威を借りて受験生を集め、検定料収入を増やしたいだけに過ぎません。公的資格という言葉に乗せられてはいけません。

公的資格という名称を判断材料として大切なお金と時間をかけて取得したけど、結局は普通の民間資格と同じで何も役に立たなかった・・・こうなるのは目に見えてます。

公共性の高い民間資格は存在します。

かつての文部科学省の認定制度の名残りで、極めて公共性の高い民間資格は現在も存在します。

例えば、簿記検定や臨床心理士、福祉住環境コーディネーターなどです。

簿記検定の1級合格者は国家資格である税理士試験の受験資格を得られます。

臨床心理士は文部科学省の任用規程により、全国のスクールカウンセラー(学校カウンセラー)になるための資格要件とされています。

参考:臨床心理士とは

福祉住環境コーディネーターの2級以上であれば、介護保険を利用して住宅改修をおこなう際に必要な理由書の作成ができます。c

参考:福祉住環境コーディネーターとは

これらは全て法令で定められています。法令の根拠があるということは、単なる民間資格ではなく、国家資格の色合いが強いともいえます。

その他、大学入試の際に加点の対象となる民間資格もいくつか存在します。

現在、公的資格は存在しませんが極めて公共性の高い民間資格は存在します。

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