簿記検定という民間の検定試験はとっても人気があります。
人気の理由の1つは、取得すると就職や転職が有利になると言われているからです。
簿記の資格を取得するとどの程度メリットがあるのでしょうか。気になったので詳しく調べてみました。
仮に経理等の実務経験がなくても、3級・2級いずれも就職や転職が有利になるようです。
ただし、採用を決める大きな要因になるとまでは言えず、学歴・職歴・面接時の印象なども含めて総合的に判断します。
つまり有利になったとしても採用の決定打にはならないということです。
参考:簿記検定とは
簿記に関係する求人の採用条件を詳しく調べてみました。
簿記は比較的取得しやすいのも人気の理由の1つです。
このブログを読まれてる方の中にも3級を持っている人は大勢いるのではないでしょうか?
3級であれば知識ゼロからでも1か月程度で合格できます。その上の2級でも数か月程度の学習で合格できます。
就職や転職が有利になる・・・という点についてですが、いろいろな噂があります。
簿記の資格だけじゃ役に立たない、経理等の実務経験がないと有利にならない、3級じゃ全然ダメ、有利になるのは2級から・・・などなどです。
簿記は就職や転職に本当に役立つ資格なんでしょうか?実際に資格を取得すれば就職や転職が有利になるのでしょうか?現場での経理の経験は必要なんでしょうか?
今回、実情を確かめるために全国一の情報掲載量を誇るハローワークインターネットサービスを使って調べてみました。
経験の有無を問わない経理関係の求人は意外と多い
インターネットハローワークを使って求人を調べる方法は下記を参考にしてください。
関連ページ:転職・求人情報を検索して資格の価値を判断する
調べる対象地域はどこでも可能です。東京、大阪、愛知県など都道府県単位で指定できます。市町村名を入力すればさらに細かく検索できます。もちろん全国でも調べられます。
今回は、私が住んでいる長野県を指定して検索してみました。
キーワード欄に「簿記」と入力して検索すると、「経理、事務、総務」関係の求人がズラッと出てきます。
合計138件の求人数です。これが多いか少ないか・・・長野県の全体の求人数から判断してもワリと多い方だと思います。
この138件の求人の中から、上位30件の「求人情報詳細」を調べた結果は以下の通りです。
- 資格は不問:2(経験者優遇:2 不問:0)
- 3級以上尚可:16(経験者優遇:8 不問:8)
- 2級以上尚可:12(経験者優遇:7 不問:5)
※ちなみに、こんな感じで表示されます→求人情報詳細(一部)
やはり、よく言われているように簿記の資格を持っていると転職は有利なようです。
資格は不問というのは30件中2件だけでした。残りの28件は3級以上取得が望ましいようです。
「3級以上」で16件ですから、3級でも意外と優遇されます。
しかし12件は「2級以上」ですから、やはり2級のほうが転職には有利です。
後ろのカッコの中には、応募にあたって経理等の経験が必要な求人数です。経験が無くても応募できる場合は「不問」になっています。
簿記の資格を持っていれば28件が優遇されますが、その中でも「経験者優遇」は半分程度です。つまり半数以上の求人は未経験でもかまわないということになります。
あくまでも数字だけの判断ですが、簿記の資格を持っていれば仮に経理等の実務経験がなかったとしても就職や転職が有利になるようです。
もっと経験者を優遇すると思っていたんですけど、これは意外な結果でした。
しかし、簿記の資格を持っていても役に立たないことも多い
ただし、現実的には簿記の資格を取得したからと言って、速攻で就職が決まるワケではありません。
それはなぜでしょうか?
まず、簿記の資格を持っている人が多すぎるほどいるからです。
ブランクを経て再就職のために簿記2級を独学で勉強する家庭の主婦もいれば、働きながら簿記2級取得の勉強をしている社会人もいます。
例えば、数か月の簿記の勉強を経て、晴れて簿記2級に合格したとします。
そして、ハローワークへ行って、簿記2級取得者優遇の求人を希望すると、思わぬ一言が窓口の職員から返ってきます。
「簿記2級を持っている人はたくさんいます、面接までいくのは厳しいです」
ここではじめて簿記の資格に関する現実の厳しさに直面します。
簿記の有資格者は世の中にいくらでもいる
簿記の資格を取得してもなかなか就職にはつながらない理由はここにあります。
簿記は知名度も高く、取得しやすい資格であるため多くの人が持っています。商業系の勉強をしている高校生なら在学中に取得する生徒もいます。
1人や2人じゃありません、大勢います。私の周囲にも簿記3級を持っている人は意外と多くいます。
前述の通り、簿記に関係する「経理、事務、総務」関係の求人は138件ありました。同じような方法で宅建士の求人を調べると158件ありました。ほぼ同じ数です。
しかし、簿記と宅建士の有資格者は絶対数が違います。簿記の取得者は宅建士に比べるとおそらく何十倍もいるでしょう。
そのため1社の求人の応募数が宅建士と比べると多くなります。仮に20人、30人と応募が殺到すると採用される可能性が低くなります。
応募者が多ければその分競争も激しくなる
応募者が多くなると、単に簿記検定に合格しているだけでは採用されません。
簿記を持っていない難関国立大学卒業の20代の女性が採用される可能性もあります。
応募者の中に経理の経験が豊富な2級取得者がいれば当然ですが優位になります。その人にとって簿記の資格は役立つ資格です。
逆に未経験者で3級取得者は不利です。そういう人にとって簿記の資格は役に立たない資格になります。
これが簿記が役立つ資格とも役立たない資格とも言われる理由です。
資格はただ持っているだけではダメです。役に立ちません。特に取得しやすい資格であれば、過去の経験・実績が重要になります。
その典型的な例が簿記検定です。