簿記検定
就職、転職につながりやすい資格ですが、2級+実務経験があるといい。
種類 | 学習期間 | 難易度 | 合格率 |
---|---|---|---|
民間資格 |
3か月程度 |
やや易しい |
40% |
活かし方 | 取得費用 | 受験資格 | おすすめ度 |
---|---|---|---|
スキルアップ |
~1万円 |
誰でも受験可 |
※日商簿記について説明します。学習期間、合格率については3級についてです。
最終更新日:2022/12/05
簿記検定とは
企業では多くの取引先からお金が入ってきます。お金の流れを一定のルールに従って記録・計算・集計する技術が必要ですが、その知識や技能を測るのが簿記検定です。
簿記検定とは、日本商工会議所および各地商工会議所が主催する民間資格です。
第1回試験が1954年に実施されといいますからその歴史は古く、日本の検定試験の草分け的存在となっています。
簿記検定は、多くの企業で取得を奨励しているばかりか、1級合格者は国家資格でもある税理士の受験資格が得られなど公共性が高い一面も有しています。
関連資格:税理士とは
そもそも簿記とは?
簿記とは、帳簿と呼ばれるノートに、財産や売買に関する記録をつける手法です。もっと簡単に言うと「会計の帳簿」を記述することです。
収入と支出の金額を一覧表にした小遣い帳や家計簿はご誰もがご存知でしょう。簿記はその会社版です。会社の収入と支出を記録して(これが簿記)、会社がどれくらい儲けたか、あるいは損をしたかが明確に分かる「成績表」を作成するのが簿記の目的です。
例えば、ある会社が100円でリンゴを仕入れたとすると、帳簿には以下のように記録します。
- リンゴを100円で仕入れた
- 100円の現金が減った
実際にモノが動いたのはリンゴであり現金です。その両方について帳簿に記録するのが簿記のイメージです。
そして、今度は仕入れたリンゴを150円で売ったとします。
- リンゴを150円で売った
- 150円の現金が増えた
このように帳簿に記録します。
これらの行為を「取引」と呼びます。「リンゴを仕入れた・売った」、「お金を支払った・受け取った」は全て取引です。この取引を全て記録するのが簿記の基本です。
仮に人権費、輸送費や梱包費などの経費があればも全て帳簿に記入します。
今回この会社は、差し引きで50円の利益が出たことがわかります。
会社の成績表である財務諸表を正しく作るのが簿記の目標
会社には多くの利害関係者がいます。一般の社員、取引先、そして出資している株主です。
会社の経営者は、利害関係者に対して、経営の状態をありのまま正しく伝える義務を有しています。そのために、いくら経費を使ってどれだけ儲けたのか、どのくらい財産があるのか、あるいは負債がどれくらいあるのかを正確に簿記を記帳しなければなりません。
そのために作成する会社の成績表のようなものが「財務諸表」です。会社がおこなった全ての取引、財産や借金など包み隠さずに一切を記載します。
そして、簿記の一連の技術を活かして、この財務諸表を作ります。簿記とは、財務諸表を正しく作るための専門的な知識であるといえます。
財務諸表は、経営の状態を表すための基礎的な資料です。「会社の経営は順調で儲かってますよ!」とか、あるいは「我が社はご覧の通り危機的状況にあります」という会社の置かれた状況が正確に分かります。
財務諸表は多くの人に利用される可能性のある資料です。そのため、誤解が生じないよう、誰が読んでも分かりやすいように作る必要があります。
役に立つ資格なのか?
簿記検定は、比較的取得しやすい民間の検定試験です。知識ゼロからでも1か月ほどで簿記検定3級に合格する人もいます。
そのため、高校生や大学生から社会人まで昔から幅広く人気があります。
また、就職や転職に役立つ・有利になるというイメージを抱いている人が多く、3級や2級を独学で取得する人は多くいます。
会社で経理等の経験がないと有利にならない、本当は役に立たない、3級じゃ全然ダメ、有利になるのは2級から・・・などどいろいろな噂があります。
簿記は就職や転職に役立つ資格なんでしょうか?インターネットハローワークを使って求人の内容を詳しく調べてみました(2019年6月)。
まず、対象地域を長野県に指定して、キーワードに「簿記」と入力して検索すると、職種として「経理、事務、総務」の求人がズラズラと138件出てきました。
これは、ぼくのあくまでも主観になりますが、ワリと多い数字だと思います。「宅建士」の求人が158件ありましたからだいたい同じくらいの求人数です。
138件中、上位30社の「求人情報詳細」を調べた結果です。
資格は不問:2(経験者優遇:2 不問:0)
3級以上尚可:16(経験者優遇:8 不問:8)
2級以上尚可:12(経験者優遇:7 不問:5)
まず、資格の有無ですが、やはり簿記の資格を持っていると優遇されるようです。不問は2社だけでした。3級以上で16件ですから、3級でも意外と優遇されるようです。しかし、3級「以上」となっているので、やはり2級のほうが優遇されるでしょう。
※尚可(なおか)という表現がほとんどでしたが、優遇、必須となっている会社も少しだけありました。いずれにせよ優遇されるので、全て同じ条件としてカウントしました。
次に、後ろの()内はその内訳です。例えば、3級を持っていれば、経験不問は16件中8件あります。
あくまでも数字だけの判断ではありますが、簿記の資格を持っていれば仮に実務経験がなかったとしても就職や転職が有利になるようです。2級を持っていれば未経験であってもさらに有利になります。
もちろん経験年数や、任されていた仕事の内容、年齢、学歴なども考慮しますから一概には言えません。
ちなみに学歴に関しては、1件だけ大卒以上で、あとはほとんどが不問か高卒以上という条件でした。
年齢に関していうと、雇用対策法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)により年齢制限などが明記されていないため、実際にどれくらいの年齢まで採用されるのかはわかりませんでした。
企業側からすると、「優秀な人材を低い賃金で長く雇う」、これが本音でしょう。実務経験が豊富で簿記2級取得者であれば、40代でも採用される可能性はあります。
資格だけ持っていて実務経験のない40代でも、他の条件(面接、学歴)さえ良ければ採用される可能性はあります。
将来性を徹底研究
この資格の活かし方
簿記の資格が活かされる仕事といえば、なんといっても会社の経理部門です。
民間資格ではありますが、社会的にも一定の評価があり、就職する際は何も資格がないよりは有利となります。
一般的には2級以上の合格者が高く評価されますが、3級であっても最低限の簿記の知識は身についているため評価されます。
大学新卒の場合、仮に2級合格者であったとしても、それが採用の決め手になるとまでは言えません。就職してからでも2級なら十分取得できるからです。
それに、社内には合格していなくても簿記の実力がある人はたくさんいます。
独占業務のある国家資格とは違い、そもそも民間の検定試験なので、合格者の必要性も低いです。
簿記は就職・転職の際には有利になりますが、あまり過大な期待はしない方がいいかもしれません。
そもそも有資格者の絶対数が多いので応募者が多い
再就職や転職に備えて簿記2級取得のために猛勉強、数か月後に晴れて合格!そして、意気揚々とハローワークへ行くと、思わぬ一言が職員から返ってきます。
「簿記を持っている人はいくらでもいるんですよ・・・」、ここではじめて現実の厳しさに直面します。
簿記は取得しやすい資格であるため多くの人が持っています。高校在学中に取得する生徒も少なくありません。実際に周囲の人に聞いてみると、意外なほど多く簿記3級を持っています。
先程、宅建士の求人が158あり、簿記は138あったと書きましたが、そもそも有資格者の絶対数が違います。そのため1社の求人に20人、30人と応募が殺到します。
簿記は役立つ資格かもしれませんが、有資格者が多く、その分競争率も高くなり即採用とはいきません。これが簿記が役立つ資格とも役立たない資格とも言われる理由です。
当然ですが、経験者が優遇されます
やはり経験者が優遇されるのは間違いないようです。応募者の条件が同じ程度であれば、企業は経験者を採用します。
ゼロから会社の経理について教えるのは大変です。仮に2年以上経理の経験があれば、帳簿の記載をある程度は任せられます。
日本では、企業会計原則というものを中心に簿記をおこなう上でのルールが定められています。どんな会社であっても、お金の動きに大きな違いはありません。
そのため、現場での簿記の経験があると、どの会社でも即戦力として採用されやすいというメリットがあります。
未経験者であれば資格以外の基礎学力が優先
簿記未経験者では経理や事務の仕事はできないのか?採用されないのか?・・・といえばそうとも言えません。求人の内容を詳しく調べると、経験不問の会社も多くあります。
では、その場合何が採用されるための条件になるのかといえば、やはり基礎学力です。
つまり高卒であれば進学校であるかどうかです。偏差値の低いヤンキー高校よりも有名進学校の方が有利です。
大卒であれば出身大学です。地方であっても偏差値が高い国立大学、あるいは有名私立大学を卒業していれば採用は有利になります。
未経験者であれば資格は二次的な要因であると言えます。
履歴書に書けばそれなりに評価の対象になる
簿記検定には1級から4級(初級)まであります。一般的に評価されるのは2級以上ですが、3級でも履歴書に書けばそれなりに評価はしてもらえます。
簿記検定は国家資格ではなく、商工会議所が認定する民間資格ですが、その価値は昔から高く履歴書にも堂々と書くことができます。
1級はかなり難しいため、明確な目標がなければ初学者がむやみに手を出さない方がいいようです。
1級まで狙うのであれば、他の関連資格として中小企業診断士や宅建士、行政書士の取得を考えた方がいいでしょう。
合格するには
基本的に、足し算と引き算の世界です。だれが帳簿を見ても「お金の流れ」がわかるようにするための知識が簿記というものです。高度な知識など必要ありません。知識ゼロからでも学習できるのが簿記の良いところでもあります。
独学を前提にしても、テキストを数回読み込み、問題演習から始め、過去問題集、予想問題集を繰り返せば、2級までであれば十分に合格できます。
1日1時間程度しっかりと勉強すれば、3級なら1か月以内で合格する人もいます。2級でも数か月もあれば大丈夫です。
やはり3級からの受験をおすすめします。
社会人だし、4級の試験会場に行くのも恥ずかしいし・・・時間もないし、2級から受験してみようか・・・初めてなら何級から受けるべきか、ちょっと迷ってしまいます。
社会人であれ学生であれ、ばまずは簿記3級から受験しましょう。
簿記検定は学習の積み上げです。つまり、簿記の基本に対する理解が固まっていないうちにいきなり2級から学習を始めても理解できない部分が多く出てきます。
多くの2級受験用テキストは3級は理解できているものとして編集されています。いきなり2級のテキストを読んでもほとんど理解できません。
それに、2級の難易度は、近年の出題区分の改定によりかなり難しくなっています。やはり学習するのは3級から順に進めていくのがいいでしょう。4級はあまりに入門レベルすぎて受験する意味は低いです。
まずは順当に進めるなら3級からです。ちなみに3級に合格していなくとも2級の受験は可能です。
余力があれば、3級と2級のダブル受験も視野に入れて学習計画をたてるのも良いでしょう。同日の午前と午後で受験が可能です。
まずは無料の資料請求
おすすめの講座
簿記のテキスト、参考書、問題集などは書店にいけば豊富にあるので、独学でも合格は狙えます。しかし、簡単な問題ばかり掲載されていて、とても実用的でない問題集も多くあります。そんな問題集を使っていてはいつまで経っても合格できません。
独学では不安、DVDを見て基礎から学習したいと考えている方は下記の講座がおすすめです。DVD教材が豊富です。
DVDが付属していることを明記している通信講座はいくつかありますが、単純に学習のすすめ方(ガイダンス)程度に1枚付属しているだけの場合もあります。注意してください。

フォーサイトの簿記のテキストはフルカラーにこだわっており、重要な部分が視覚的に一目でわかる工夫されています。B5サイズのテキストは薄くてコンパクトなので持ち運びに便利です。講義のDVDももちろん付いています。特にサラリーマンに人気の講座です。
※
試験情報
試験日 |
お申込み |
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1級:6月上旬、11月中旬 |
試験の1~2か月前 |
受験資格 |
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特にありません(1度に3級と2級、または2級と1級を受験することも可能)。 |
試験内容 |
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下記は3級についてです。筆記試験がおこなわれます。
「商業簿記」とは、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
試験時間:120分 |
試験に関する詳しい情報は簿記 | 商工会議所の検定試験をご覧ください。
おすすめテキスト・基本書
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級 テキスト&問題集 2022年度版 | |||||
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はじめて簿記を学ぶ方や、これまで学習したけど今ひとつ簿記が苦手な方に本当におすすめのテキストです。
必要以上の難しい専門用語も少なく、とにかくまずは簿記という仕組みを理解できるように解説して、その上で解き方を説明していおり、暗記が少なくてすむような工夫がされています。
パブロフくんという犬が登場する4コママンガで簿記の流れを詳しく説明していますが、これが想像以上に理解の助けになり、「マンガで大丈夫?」という不安を完全に消し去ってくれます。
他の参考書に比べてページ数が少なく、パラパラとページをめくると4コマ漫画も目立ち、中身もペラペラみたいな…、しかし期待を大きく超えるテキストであることは間違いないようです。問題集とあわせて学習すればこの一冊だけで十分合格できます。 |
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みんなが欲しかった! 簿記の教科書 日商3級 商業簿記 第10版 [新試験完全対応(ネット試験・統一試験) 模擬試験プログラム 仕訳Webアプリつき] (みんなが欲しかった! シリーズ) | |||||
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かといって内容が薄いわけではなく、詳しく細かく解説されています。毎日少しずつ読み進めていけば苦にもならずに楽しく勉強できます。基本問題で復習もできるので、間違った問題のところをもう一度見直して知識を定着させるのに役立つでしょう。
初学者の方にはとくにおすすめです。とにかく、とっつきやすいです。 |
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ページ数も記述されていることも多いので、これ1冊あれば大丈夫のような気もしますが、もう少し初学者向けの詳しい説明がほしいところです。後半の例題になると説明をほとんどカットしているところもあり、基本的な事までしか理解できません。例題も少なく、読むだけが多くなってしまいがちです。合格するためには問題集も必要です。 |
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おすすめ問題集
簿記教科書 パブロフ流でみんな合格 日商簿記3級 総仕上げ問題集 2022年度版 | |||||
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分かりやすい解説と、実用的な設問が多いのも特徴です。総仕上げとして使うだけでなく、これから、という人にも十分役立ちます。問題集として文句なしだと思います。 |
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サクッとうかる日商3級商業簿記テキスト【第3版】 | |||||
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解説がとても分かりやすく充実しています。基本のやり方さえ分かっていれば、解説が詳しいので、どんどん前に進んでいくことができます。ただし、問題数は試験対策に十分とは言い難いので別途問題集を購入する必要があります。 |
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みんなが欲しかった! 簿記の問題集 日商3級 商業簿記 第10版 [新試験完全対応(ネット試験・統一試験) 模擬試験プログラム 仕訳Webアプリつき] (みんなが欲しかった! シリーズ) | |||||
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解説がわかりやすく、初学者でも理解しやすい内容です。本に付属している解答用紙は、ダウンロードサービスで何度も貰えるので大変便利です。
同じTAC出版から「簿記の教科書」というテキストが出ていますが、合わせて購入するのがおすすめです。 |
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おすすめ参考書
はじめての人の簿記入門塾―まずはこの本から! |
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数時間で読み終えることができる内容で、まずは何を理解して学習すればいいのかがわかり、その後の学習を迷わずに進めることができます。
読み終えて簿記の学習意欲が湧いてきたらしめたもの、一気に合格目指して学習してください。まずは学習前の入門書です。かなり評判いいです。
※電子書籍と書籍版があるので注意してください。 |
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