簿記検定は役に立つ?3級でも就職や転職の際に評価される
種類 | 難易度 | 合格率 |
民間資格 | やや易しい | 40% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | ~1万円 | 3か月程度 |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
スキルアップ | 4,375件 |
- 日商簿記について説明します。学習期間・合格率については3級についてです。
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年8月28日に集計。
簿記とは、企業における取引をお金の面から帳簿に記録する方法のことです。
簿記検定は民間資格ですが、合格すれば就職・転職の際に一応は評価されるメリットはあります。
ただし、3級や2級の合格者は世の中にたくさんいます。
仮に1級合格者でも採用の決め手になるとまでは言えず、実務経験や学歴・年齢なども重視されます。
簿記検定とは
歴史のある検定試験
簿記検定とは、日本商工会議所および各地商工会議所が主催する民間資格です。
第1回試験が1954年に実施されといいますからその歴史は古く、日本の検定試験の草分け的な存在となっています。
簿記検定は、多くの企業で取得を奨励しているだけではなく、1級合格者は国家資格でもある税理士の受験資格が得られなど公共性が高い一面も有しています。
企業では、多くの取引先からお金が入ってきます。もちろん支払うお金もあります。
そのお金の流れを一定のルールに従って記録・計算・集計する知識と技術が必要ですが、それを測るのが簿記検定です。
そもそも簿記とは?
簿記とは、帳簿と呼ばれるノートに、財産や売買に関する記録をつける手法です。
もっと簡単に言うと「会計の帳簿」を記述することです。
会社の収入と支出を記録して(これが簿記)、会社がどれくらい儲けたか、あるいは損をしたかが明確にわかる「成績表」を作成するのが簿記の目的です。
例えば、ある会社が100円でリンゴを仕入れたとすると、帳簿には以下のように記録します。
- リンゴを100円で仕入れた
- 100円の現金が減った
実際にモノが動いたのはリンゴであり現金です。その両方について帳簿に記録するのが簿記のイメージです。
そして、今度は仕入れたリンゴを150円で売ったとします。
- リンゴを150円で売った
- 150円の現金が増えた
このように帳簿に記録します。
これらの行為を「取引」と呼びます。「リンゴを仕入れた・売った」、「お金を支払った・受け取った」は全て取引です。この取引を全て記録するのが簿記の基本です。
仮に人権費、輸送費や梱包費などの経費があればも全て帳簿に記入します。
今回この会社は、差し引きで50円の利益が出たことがわかります。
会社の成績表である財務諸表を正しく作るのが簿記の目標
会社には多くの利害関係者がいます。一般の社員、取引先、そして出資している株主です。
会社の経営者は、利害関係者に対して、経営の状態をありのまま正しく伝える義務を有しています。
いくら経費を使ってどれだけ儲けたのか、どのくらい財産があるのか、あるいは負債がどれくらいあるのかを正確に簿記を記帳しなければなりません。
そのために作成する会社の成績表のようなものが「財務諸表」です。
会社が行った全ての取引、財産や借金など包み隠さずに一切を記載します。
そして、簿記の一連の技術を活かして、この財務諸表を作ります。
財務諸表は、経営の状態を表すための基礎的な資料です。
「会社の経営は順調で儲かってますよ!」とか、あるいは「我が社はご覧の通り危機的状況にあります」という会社の置かれた状況が正確に分かります。
財務諸表は多くの人に利用される可能性のある資料です。
そのため、誤解が生じないよう、誰が読んでも分かりやすいように作る必要があります。
役に立つ民間資格なのか?
簿記検定は、比較的取得しやすい民間の検定試験です。
知識ゼロからでも1か月ほどで簿記検定3級に合格する人もいます。
そのため、高校生や大学生から社会人まで昔から幅広い人気があります。
また、就職や転職に役立つ・有利になるというイメージを抱いている人が多く、3級や2級を独学で取得する人は多くいます。
会社で経理等の経験がないと有利にならない、本当は役に立たない、3級じゃ全然ダメ、有利になるのは2級から・・・などどいろいろな噂があります。
簿記に関する求人の内容を詳しく次章以降で調べてたので参考にしてください。
本当に就職や転職に役立つの?
簿記は就職や転職に本当に役立つ資格なのか?
インターネットハローワークを使って求人の内容を詳しく調べてみました(2024年3月)。
まず、対象地域を私が住んでいる長野県に指定して、キーワードに「簿記」と入力して検索すると、職種として「経理、事務、総務」の求人がズラズラと138件出てきました。
これは、あくまでも私の主観になりますが、ワリと多い数字だと思います。
「宅建士」の求人が158件ありましたからだいたい同じくらいの求人数です。
そして、138件中、上位30社の「求人情報詳細」を調べた結果が下記です。
- 資格は不問:2(経験者優遇:2 不問:0)
- 3級以上尚可:16(経験者優遇:8 不問:8)
- 2級以上尚可:12(経験者優遇:7 不問:5)
まず、資格の有無ですが、やはり簿記の資格を持っていると優遇されるようです。
不問は2社だけでした。3級以上で16件ですから、3級でも意外と優遇されるようです。
3級「以上」となっているので、やはり2級のほうが優遇されるようです。
※「尚可(なおか)」という表現がほとんどでした。つまり「あった方が良い」ということです。優遇、必須となっている会社も少しだけありましたが、いずれにせよ優遇されるので全て同じ条件としてカウントしました。
次に、後ろの()内はその内訳です。例えば、2級を持っていれば経験不問は12件中5件あります。
あくまでも数字だけの判断ですが、簿記の資格を持っていれば仮に実務経験がなかったとしても就職や転職は多少有利になる可能性があります。
ちなみに学歴に関しては、1件だけ「大卒以上」の条件で、あとはほとんどが不問か高卒以上となっていました。
もっともこれに関しては企業の本音はわかりません。実際は学歴も当然ですけど考慮するはずです。
年齢に関していうと、雇用対策法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)により年齢制限などが明記されていないため、実際にどれくらいの年齢までOKなのか企業の本音はわかりません。
企業側からすると、「優秀な人材を低い賃金で長く雇いたい」、これが本音でしょう。
実務経験が豊富で簿記2級取得者であれば、40代でも採用される可能性はあります。
資格だけ持っていて実務経験のない40代でも、他の条件(面接、学歴)さえ良ければ採用される可能性はあります。
将来性について徹底研究
この資格の活かし方
簿記の資格が活かされる仕事といえば、なんといっても会社の経理部門です。
民間資格ですが社会的にも一定の評価があり、就職する際は何も資格がないよりは有利となります。
社会人であれば、評価されるのは一般的には2級以上です。さらに、実務経験も求められます。
3級でも評価はされますが、学歴や実務経験次第です。
大学新卒の場合、仮に2級合格者であったとしてもそれが採用の決め手になるとまでは言えません。
就職してからでも2級なら十分取得できるからです。
それに、社内には合格していなくても簿記の実力がある人はたくさんいます。
独占業務のある国家資格とは違い、そもそも民間の検定試験なので合格者の必要性も低いです。
簿記は就職・転職の際には有利になりますが、あまり過大な期待はしない方がいいかもしれません。
そもそも有資格者の絶対数が多く応募者が多い
再就職や転職に備えて簿記2級取得のために猛勉強、数か月後に晴れて合格!そして、意気揚々とハローワークへ行くと、思わぬ一言が職員から返ってきます。
「簿記を持っている人はいくらでもいるんですよ・・・」
ここではじめて現実の厳しさに直面します。
簿記は取得しやすい資格であるため多くの人が持っています。
高校在学中に取得する生徒も少なくありません。
実際に周囲の人に聞いてみると、意外なほど多く簿記3級を持っています。
先程、宅建士の求人が158あり、簿記は138あったと書きましたが、そもそも有資格者の絶対数が違います。
そのため、経理職の求人があると、1名の採用枠に20~30人と応募者が殺到します。
簿記は役立つ資格かもしれませんが、有資格者が多く、その分競争率も高く即採用とはいかない。
これが簿記が役立つ資格とも役立たない資格とも言われる理由です。
当然ですが、経験者が優遇されます
経理担当者の採用にあたっては、やはり経験者が優遇されるのは間違いないようです。
応募者の条件が同じ程度であれば、企業は経験者を採用します。
ゼロから会社の経理について教えるのは大変です。仮に2年以上経理の経験があれば、帳簿の記載をある程度は任せられます。
日本では、企業会計原則というものを中心に簿記を行う上でのルールが定められています。
どんな会社であっても、お金の動きに大きな違いはありません。
そのため、現場での簿記の経験があると、どの会社でも即戦力として採用されやすいというメリットがあります。
未経験者であれば資格以外の基礎学力が優先
簿記未経験者では経理や事務の仕事には就けないのか?採用されないのか?・・・といえばそうとも言えません。
求人の内容を詳しく調べると、経験不問の会社も多くあります。
では、その場合何が採用の条件になるのかといえば、やはり基礎学力です。
つまり高卒であれば進学校であるかどうかです。偏差値の低い三流ヤンキー高校卒よりも地元の有名公立進学校卒の方が有利です。
大卒であれば出身大学です。地方であっても偏差値が高い国立大学、あるいは有名私立大学を卒業していれば採用は有利になります。
合格するには
独学でも2級合格は可能
簿記検定には1級から4級まであり、テキストも分かりやすいものが多く出版されているため独学でも十分2級まで狙えます。
集中的に学習することにより短期間で合格は可能です。
簿記は基本的に足し算と引き算の世界です。
だれが帳簿を見ても「お金の流れ」がわかるようにするための知識が簿記というものです。
高度な知識などいりません。知識ゼロからでも短期間で習得できるのが簿記の良い点です。
独学を前提にしても、テキストを数回読み込み、問題演習から始め、過去問題集、予想問題集を繰り返せば、2級までであれば十分に合格できます。
YouTubeには講義が収録された秀悦な動画も多く公開されています。
1日1時間程度しっかりと勉強すれば、3級なら1か月以内で合格する人もいます。
2級でも数か月もあれば大丈夫です。
やはり3級からの受験をおすすめします
社会人だし、4級の試験会場に行くのも恥ずかしいし・・・時間もないし、2級から受験してみようか・・・
初めてなら何級から受けるべきか、ちょっと迷ってしまいます。
社会人であれ学生であれ、ばまずは簿記3級から受験しましょう。
簿記検定は学習の積み上げです。
つまり、簿記の基本に対する理解が固まっていないうちにいきなり2級から学習を始めても理解できない部分が多く出てきます。
多くの2級受験用テキストは3級は理解できているものとして編集されています。
いきなり2級のテキストを読んでもほとんど理解できません。
それに、2級の難易度は、近年の出題区分の改定によりかなり難しくなっています。
やはり学習するのは3級から順に進めていくのがいいでしょう。
4級はあまりに入門レベルすぎて受験する意味は低いです。
まずは順当に進めるなら3級からです。
ちなみに3級に合格していなくとも2級の受験は可能です。
余力があれば、3級と2級のダブル受験も視野に入れて学習計画をたてるのも良いでしょう。
同日の午前と午後で受験が可能です。
まずは無料の資料請求
おすすめの通信講座
簿記のテキスト、参考書、問題集などは書店にいけば豊富にあるので、独学でも合格は狙えます。
しかし、簡単な問題ばかり掲載されていて、とても実用的でない問題集も多くあります。
そんな問題集を使っていてはいつまで経っても合格できません。
独学では不安、DVDを見て基礎から学習したいと考えている方は下記の講座がおすすめです。DVD教材が豊富です。
DVDが付属していることを明記している通信講座はいくつかありますが、単純に学習のすすめ方(ガイダンス)程度に1枚付属しているだけの場合もあります。注意してください。
※こちらから受講申し込みができます。
Webで完結するスタディングは毎年合格者を1,000名以上出す人気の講座です。
講義動画がスマホで見られる通信講座は珍しくありませんが、スタディングはテキストも同時に表示するため机に向かわずに勉強を進められます。
テキストも十分丁寧です。理解度によっては講義を飛ばすことも可能です。
試験策模問題を満点が取れるまで繰り返し解き、AI問題復習を繰り返せば合格が見えてきます。
※こちらから受講申し込みができます。
テキスト・問題集・参考書
おすすめテキスト・基本書
はじめて簿記を学ぶ方や、これまで学習したけど今ひとつ簿記が苦手な方に本当におすすめのテキストです。
必要以上の難しい専門用語も少なく、とにかくまずは簿記という仕組みを理解できるように解説して、その上で解き方を説明していおり、暗記が少なくてすむような工夫がされています。
パブロフくんという犬が登場する4コママンガで簿記の流れを詳しく説明していますが、これが想像以上に理解の助けになり、「マンガで大丈夫?」という不安を完全に消し去ってくれます。
他の参考書に比べてページ数が少なく、パラパラとページをめくると4コマ漫画も目立ち、中身もペラペラみたいな…、しかし期待を大きく超えるテキストであることは間違いないようです。
問題集とあわせて学習すればこの一冊だけで十分合格できます。
種類 | 評価 |
テキスト |
イラストや図解もあって分かりやすく、解説文も誰にでも分かりやすく平易な言葉で書かれているので簿記初心者にとってオススメの入門書です。
かといって内容が薄いわけではなく、詳しく細かく解説されています。
毎日少しずつ読み進めていけば苦にもならずに楽しく勉強できます。基本問題で復習もできるので、間違った問題のところをもう一度見直して知識を定着させるのに役立つでしょう。
初学者の方にはとくにおすすめです。とにかく、とっつきやすいのが特徴です。
種類 | 評価 |
テキスト |
みんなが欲しかった 簿記の教科書シリーズのDVD付属版です。初めて簿記について学ぶ人にとっては役に立ちます。
高額な通信講座や通学を申し込む前にこちらで学習する方がおすすめです。
種類 | 評価 |
テキスト |
おすすめ問題集
テキストと同様で、レイアウトがシンプルで、読み見やすく、学習が進めやすいように工夫がこらしてあります。
解き方の説明も重要なポイントが押さえられるようにわかりやすく書いてあり、独学者には実に親切な書籍です。
分かりやすい解説と、実用的な設問が多いのも特徴です。総仕上げとして使うだけでなく、これから、という人にも十分役立ちます。
問題集として文句なしだと思います。
種類 | 評価 |
問題集 |
この本の特徴は、テキストと問題集との一体型であることです。評判も悪くなく簿記初学者にとっては分かりやすくおすすめの1冊です。
文章表現もやさしい一般的な言葉を用いているので、読み物のように読み進められます。
また、小さな単元ごとに区切りがあるので、まとまった学習時間を取れなくても勉強しやすく構成されています。
充分合格まで導いてくれるテキストです。
種類 | 評価 |
テキスト&問題集 |
改定前の「サクッと受かるテキスト」と「サクッと受かる問題集」が一緒になった改定版です。
テキストだけの時は評判が悪く、とてもおすすめできるものではなかったんですが、テキストと問題集が一緒になり内容も良くなりました。
解説がとても分かりやすく充実しています。基本のやり方さえ分かっていれば、解説が詳しいので、どんどん前に進んでいくことができます。
ただし、問題数は試験対策に十分とは言い難いので別途問題集を購入する必要があります。
種類 | 評価 |
テキスト&問題集 |
解説がわかりやすく、初学者でも理解しやすい内容です。本に付属している解答用紙は、ダウンロードサービスで何度も貰えるので大変便利です。
同じTAC出版から「簿記の教科書」というテキストが出ていますが、合わせて購入するのがおすすめです。
種類 | 評価 |
問題集 |
おすすめ参考書
簿記に興味があるし、一度勉強してみたい、けど簿記が何なのか全くわからないという人にまずはおすすめなのがこの本です。
数時間で読み終えることができる内容で、まずは何を理解して学習すればいいのかがわかり、その後の学習を迷わずに進めることができます。
読み終えて簿記の学習意欲が湧いてきたらしめたもの、一気に合格目指して学習してください。まずは学習前の入門書です。かなり評判いいです。
※電子書籍と書籍版があるので注意してください。
種類 | 評価 |
参考書 |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
1級:6月上旬、11月中旬
2級・3級・4級:2月下旬、6月上旬、11月中旬
お申し込み
試験の1~2か月前
受験資格
特にありません(1度に3級と2級、または2級と1級を受験することも可能)。
試験会場
全国各地、申し込みの各商工会議所が指定する会場。
受験料
1級:7,850円
2級:4,720円
3級:2,850円
初級:2,200円
原価計算初級:2,200円
(各税込)
試験内容
下記は3級についてです。筆記試験がおこなわれます。
【試験科目】
- 商業簿記(2時間)
「商業簿記」とは、購買活動や販売活動など、企業外部との取引を記録・計算 する技能で、企業を取り巻く関係者(経営管理者・取引先・出資者等)に対し、適切、かつ正確な報告(決算書作成)を行うためのものです。
試験時間:120分
合格基準
70%以上の正解
合格発表
商工会議所によって異なります。申し込みの際に確認してください。
主催者情報
試験に関する詳しい情報は簿記|商工会議所の検定試験をご覧ください。