資格の種類について
なお、公的資格の根拠となっていた民間技能審査事業認定制度は2005年に廃止になりました。
そのため、かつて存在していた公的資格は、現在は存在しません。
最終更新日:2023/01/28
厳密には公的資格は存在しませんが、簿記検定や臨床心理士のように非常に公共性の高い民間資格は存在します。
参考:公共性の高い民間資格一覧
※認定資格とは、民間の団体が主催して合格者を認定する民間資格(検定試験)を表す場合と、2005年に廃止になりましたが省庁が試験を認定していた旧公的資格を表す場合があります。厳密な定義はありません。
※文部科学省後援というような公的な「後援」を受けているような資格もありますが、それについては後ほど詳しく説明します。
資格の種類
国家資格
国家資格とは、国の法律に基づいて実施される試験において、知識や技術が一定水準以上に達していると認められた者だけに国が与える資格のことをいいます。
つまり、国家資格には根拠となる法律が必ず存在します。
- 弁護士=弁護士法
- 行政書士=行政書士法
- 電気工事士=電気工事士法
- 基本情報技術者=情報処理の促進に関する法律
- ボイラー技士=労働安全衛生法
国の法律により資格が裏付けられている弁護士、司法書士、宅建士、行政書士、マンション管理士、電気工事士、ケアマネジャー、理学療法士、ボイラー技士などが国家資格に該当します。
介護職員初任者研修などは、厳密に言えば法律で規定されていませんが、法律に準ずる施行規則で規定されているので、国家資格の一種と言えます。
現在、国家資格は303種類あります。詳しくは下記を参照してください。平成22年12月28日と明記されていますが、令和4年1月現在でこちらが最新情報です。
参考:資格制度一覧(303制度) | 総務省
(旧資格一覧はこちら:中央教育審議会生涯学習分科会:国家資格一覧)
福祉用具専門相談員なども国家資格として掲載されています。
ファイナンシャルプランナーやキャリアコンサルタントなどは技能検定として扱っているため国家資格ではありません。
国家資格は天下り団体を創設するための資格制度濫設を防止する観点から、昭和60年度以降、医療・福祉、環境等の分野を除き、資格制度の創設は抑制されている傾向にありました。
しかし、天下り団体は一向に減らず、国の税制不足を補う目的もあり、平成26年頃から再度国家資格(国家検定)が増えています。
国家資格は一度合格すれば資格喪失しません。例えば、行政書士試験に一度合格すれば、その資格は一生涯有効です。
技能検定(国家検定)
技能検定とは労働者の技能を評価する国の技能検定制度のことを言います。国家検定と技能検定は同じ意味です。
技能検定とは、働くうえで身につける、または必要とされる技能の習得レベルを評価する技能検定制度です。
この国家検定に合格しなければ特定の業務に就けないのはなく、その業務に就いている人の技能を判定するという制度です。
簡単に言えば、「あなたはどのくらいその業務に熟練していますか?」という技術力を試す検定試験になります。
試験に合格しても、していなくてもできる仕事は同じです。業務独占資格ではなく名称独占資格です。
技能検定は、機械加工、建築大工やファイナンシャル・プランニングなど全部で130職種の試験があります。試験に合格すると合格証書が交付され、「技能士」と名乗ることができます。
国家検定制度は職業能力開発促進法に基づき1959年度より実施されています。
民間資格(検定試験)
個人や民間の団体、企業が自由に名称を決めて、受験生を集めて試験を実施しているのが民間資格(検定試験)です。認定資格とも呼ばれます。
特にルールや法律による規制はないので自由に誰でも資格らしきモノを作ることができます。
このように法律の根拠のない民間資格は全て検定試験にあたります。資格と称していますが、厳密にいうと資格でもなんでもありません。商標登録された固有名詞の使用権の販売にすぎないということです。
単なる趣味の検定試験である場合がほとんどで、多くの民間資格は取得する意味はありません。
民間資格の代表各は何といっても医療事務です。ユーキャンなどの通信教育会社が資格と称して大々的に受講生を集めていますが、この資格を持っていても就職や転職は有利にはなりません。
詳しくはこちら ⇒ 医療事務
医療事務をはじめとした医療系の民間資格は100種類以上もありますが、一定の費用を支払えば誰でも「合格証」のようなモノはもらえます。多くの民間資格は教材を販売するのが目的と言ってもいいでしょう。
簿記、秘書検定、TOEIC、TOEFL、ワープロ実務検定のように歴史もあって社会的に評価される民間資格もありますが、ほとんどの民間資格は合格してもこれと言って役立つこともありません。
広い意味で、お茶やお花といった師範の資格も民間資格に含まれます。
公的資格(旧認定資格)について
省庁が認定する公的な民間資格の制度は廃止されました
民間資格の中に公的資格は現在は存在しません。
以前は、簿記検定、秘書検定、漢字能力検定のように、関係省庁(国)から認定を受けている公益法人が実施する公的な検定試験制度がありました。
しかし、天下り団体と民間団体の癒着が問題になったため、2005年に、それまで公的資格の根拠となっていた民間技能審査事業認定制度は廃止になりました。
2.平成14年3月29日の閣議決定「公益法人に対する行政の関与の在り方の改革の実施計画」により、民間技能審査事業認定制度の推薦等は、平成17年度末までに一律廃止することとされた。
出典:中央教育審議会生涯学習分科会(第20回)-資料3:資格について
したがって、「国の認定」の制度が廃止された今は「元公的資格」は存在しますが、現在のところ公的な価値を持つ民間資格は存在しません。
民間団体が実施する検定試験には法的な根拠はなく、公的資格は存在しないということです。
公共性の高い民間資格は存在します
かつての文部科学省の認定制度の名残りで、極めて公共性の高い民間資格は現在も存在します。例えば、簿記検定や臨床心理士などです。
簿記検定の1級合格者は国家資格である税理士試験の受験資格を得られます。福祉住環境コーディネーターの2級以上を取得すると、介護保険を利用して住宅改修をおこなう際に提出する住宅改修費支給申請書に添付する理由書の作成ができます。
参考:公共性の高い民間資格一覧
その他、大学・短大で入試の際に評価される民間の検定試験などがいくつかあります。
臨床心理士は文部科学省の任用規程により、全国のスクールカウンセラー(学校カウンセラー)になるための資格要件とされています。
法令の根拠があるということは、民間資格というよりも国家資格の色合いが強いともいえます。
「後援を受けた公的資格」という表現を目にしますが・・・
ところが民間の検定試験について、主催者のホームページなどで説明を読むと、大々的に「公的資格」とうたっているものをよく目にします。
例えば、民間の検定試験にすぎない販売士について紹介しているサイトを見ると、「販売のプロを認定する資格であり、流通業界で唯一の公的資格」となっています。
この公的資格の根拠は何かというと、経済産業省、文部科学省、中小企業庁などの省庁の後援のもとに実施している検定試験だからということです。
統計検定などは、ナント、総務省後援、文部科学省後援、経済産業省後援、内閣府後援、厚生労働省後援・・・と5省庁から後援を得ています。
参考:統計検定:Japan Statistical Society Certificate
省庁が「認定」する制度はなくなりましたが、省庁が「後援」する制度は現在も存在します。どうやらこの「省庁の後援」をもって公的資格と主張しているようです。
民間の検定試験の枠を超えた国も認めている公的な試験、という権威付けを強調したいんでしょうけど、はたしてどれくらい国が関与しているのか調べてみました。
すると、文部科学省のサイトに「後援」をもらうための説明書きがありました。詳しくは下記をご覧ください。
実はこの「後援」とは、PRするために「省庁の後援名義を使っていいですよ」という程度のもので、省庁に申請すれば明らかなインチキ資格商法でない限り簡単に使用許可がおりるようです。積極的に省庁が資格として認めて、法律的な根拠を与えているワケではありません。
税金を使って資金的なの援助をしていたり、合格者を優遇しているワケでもありません。積極的な支援などは一切していません。
それだけのことを大袈裟に公的資格というのは明らかに誇大表示と言えます。認定資格でもなんでもないんです。
怪しい資格商法的な民間資格ですら省庁の後援を受けている
健康管理士(一般指導員)という、怪しい団体が主催する民間の検定試験があります。
関連資格:健康管理士(一般指導員)とは
公式サイトを見ると、文部科学省後援、厚生労働大臣指定講座などと省庁の名称を借りて、公共性のたかさを一生懸命にPRしているのがわかります。
けれど、騙されてはいけません。実態はお金さえ払えば誰でも合格できるような資格商法です。
健康管理士に合格すれば、「幼稚園や小中学校で子どもたちや保護者の食育・健康指導を行える」なんて記述がありますが、これは明らかな誇大広告です。民間資格では、学校管理における健康管理指導はできません。
公的資格・認定資格という言葉に騙されてはいけません。実態をよく確かめてください。
公的資格・認定資格・省庁後援の言葉に騙されないで!
ちなみに各省庁も同じように後援の制度を設けています。防衛省、外務省などのサイトを見ると同じような基準が明記してありました。
簿記検定、秘書検定、福祉住環境コーディネーター、葬祭ディレクター、カラーコーディネーター検定、色彩検定、販売士検定、英検、消費生活アドバイザー…多くの民間資格が関係省庁の「後援」をもって公的資格と称しているようですが、決して公的な資格ではありません。
単に、省庁の権威を借りて受験生を集め、検定料収入を増やしたいだけです。おすすめでも何でもありません。国家資格に格上げされる可能性もまずないです。
公的資格・認定資格という言葉にのせられて騙されてはいけません。