統計検定は意味ない?就職や転職でメリットはあるの?
種類 | 難易度 | 合格率 |
民間検定 | 普通 | 45% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | ~1万円 | 6か月程度 |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
スキルアップ | 4件 |
- 上記は文系出身の初学者が2級を受験した場合の例です。
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年7月4日に集計。
統計に関する知識や、統計の集計結果をビジネスに活用する能力を評価する民間の検定試験です。
就職や転職に活かすのではなく、あくまでも仕事に知識を活かすためのスキルアップの試験です。社会人には2級がおすすめです。
統計に関する仕事に就きたいのであれば現実的には学歴が優先します。
優秀な大学あるいは大学院で高度な数学を学んだ経歴が求められます。
統計検定とは
データを分析して客観的に判断する能力を身に付ける
統計検定とは、統計に関する知識や、統計の集計結果をビジネスに活用する能力を評価する民間の検定試験です。
様々なデータを分析し、結果を客観的に判断し、科学的に問題を解決する能力を身に付ける狙いがあります。
統計検定の試験の種類には、難易度の低い順に4級、3級、2級、準1級、1級があります(他に5種類の検定有り)。
2級・1級であれば、試験の学習を通して、統計データ・統計学の知識に基づいた統計解析手法の活用方や問題解決の能力が身に付きます。
得た知識は実際に仕事で役立つので、社会人が多く受験します。
3級・4級はデータのまとめ方や読み取り方、それに基づいたデータの活用方法などを中心に試験が出題されます。
社会人にとどまらず小学生や中・高生も受験します。
主催者サイト:統計検定:Japan Statistical Society Certificate
そもそも統計を扱う「統計学」とは何を学ぶのか?
私たちの周りには数限りないほどのデータ(情報)があります。
人口、年齢、寿命、気象データ、会社の売上、収入や貯蓄額、試験の得点結果・・・統計的なデータから、最近では個人の趣味や趣向の情報など無限と言えるほどの種類と量です。
これらのデータは、一覧表にして印刷してもただの数値や符号の羅列にすぎません。
しかし、大きい順や小さい順に並べ替えたり、平均値を出したり、時にはグラフ化することで様々なデータの性質や意味が見えてきます。
全体の特性が把握できれば、次の予測を立てることも可能です。
売上の予想、気象予報、医療、製造、流通業など、幅広い分野で統計に関するデータは活かせます。
統計学とは、大きなデータを元に、その性質や今後を推測するための方法論を体系化したものです。
統計検定の試験では、データに基づいて客観的に全体を判断し、科学的に問題を解決し推測する能力が求められます。
役に立つ資格なのか?
自己啓発の検定試験
学生であれ社会人であれ、統計学について学習するのは素晴らしいことだと思います。
正しく理解できればいろんな分野で応用できます。もちろん仕事にも活かせるはずです。
大学の経済学部であれば、統計学は必須科目の一つです。
1年か2年で受講して、在学中に統計検定1級を取得すれば、就職活動で役立つ可能性はあります。
また、本当に一部ですが、統計検定2級以上で優遇する求人なども見つかります。勉強するメリットは十分あります。
統計に関する知識は、コンピュータ関連の技術者、特に今後需要が見込まれるAIエンジニアに求められます。
今後統計学の知識が役立つ機会は多いでしょう。生命保険会社でも一定の需要はあります。
ただし、統計検定を取得すれば誰もが就職や転職が有利になるとか役立つなどとは考えない方がいいでしょう。
そこはやはり民間の検定試験です。
統計に関する仕事に就きたいのであれば学歴が優先します。
優秀な大学あるいは大学院などで学んだ高度な経歴が求められます。
統計検定はあくまでも自己啓発が目的の検定試験です。
履歴書に書けば「統計学に興味がある」という点をアピールはできますが、それが採用につながる可能性は低いでしょう。
この資格の活かし方
統計検定は、社会人がビジネスに活かすために統計学について学ぶには有効な手段です。
試験の学習を通して、統計に関する知識が効率的に身に付きます。
一例をあげると、需要予測や時系列分析に統計学の知識が活かせます。
食料品や衣料品などの製造・販売会社では、将来の需要を予測して計画的に商品を供給します。
レジャーやその他のサービス業でも、気象や過去の来場者のデータを元に来場者数を予測します。
医療の分野では、遺伝子やタンパク質を正確に解析するためにも統計の知識が不可欠です。
曖昧なデータも統計学の手法を用いれば意味のある解釈ができるようになります。
データ分析を日常の業務とする人は今後増えていくでしょう。
試験の勉強で得た知識はそういった業務で活かせる可能性はあります。
将来性について徹底研究
データサイエンス系の学部で優遇措置を実施
大学や大学院で最近増えているのが、データサイエンスの研究に関する学部です。
「データサイエンス学部」「データサイエンス研究科」という名称で新設されています。
データサイエンスとは、ビッグデータと呼ばれる大量のデータを分析し、そこから有益な情報を導き出して事業戦略やビジネスに活用しようという学問です。
分析方法はさまざまですが、主に数学や統計学の知識、コンピュータ科学やAI(人工知能)の技術を利用します。
一部の大学では、統計検定の合格者は入試の際に優遇措置を受けられます。
例えば、横浜市立大と滋賀大学です。ともに国公立大学で、データサイエンスに関しては先駆的な大学として知られています。
参考:入試情報|YCU 横浜市立大学
参考:入試情報 滋賀大学 データサイエンス学部 / 研究科
いずれも統計検定2級以上合格が条件で、入試の際の「統計学」の教科における得点を加算します。
今のところ(2022年11月現在)優遇措置を実施する大学は少数でレアなケースですが、今後データサイエンス系の学部が増加すれば、統計検定の需要が上がる可能性は十分考えられます。
さらに、創価大学経済学部、東洋大学、龍谷大学理工学部数理情報学科、早稲田大学政治経済学部などで統計検定を成績評価に利用しています。
企業では、ダイキン工業、大塚製薬、社会情報サービス、小野薬品工業、オリコンなどで社員教育などで統計検定を活用しています。
参照:統計検定取組事例|統計検定:Japan Statistical Society Certificate
ちなみに、こういった優遇措置は数学検定などでも実施しています。
数学検定で入試優遇が受けられる高校・中学は720校以上です。参考にしてください。
関連資格:数学検定(実用数学技能検定)とは
多くの省庁の後援になってますけど・・・
統計検定の公式サイトを見ると、総務省後援、文部科学省後援、経済産業省後援、内閣府後援、厚生労働省後援・・・と5省庁から後援を得ているのが分かります。
スゴいですね、1か所から後援を得ている民間資格はたくさんありますが、5か所とは!
それをもって公的資格であると大々的にPRしていますが、実はこの省庁後援、そんなに権威はないんです。
よほど悪質な資格商法でない限り省庁の後援は承認されます。
省庁が積極的に支援して取得を奨励しているワケでもないんです。
情報元:文部科学省後援名義等の使用許可申請について:文部科学省
省庁の後援をもって、統計検定について公的資格というのはかなり大袈裟です。
既に、2005年に公的資格の制度は廃止されています。詳しくは下記をご覧ください。
関連情報:公的資格(旧認定資格)について
資格商法的な民間資格には要注意
統計処理、データ分析に関する民間資格はいくつか存在します。
例えば、統計士、データ解析士、社会調査士、統計調査士、ビジネス統計スペシャリスト・・・などです。
探せばまだまだあります。
全てがそうだとは言いませんが、残念ながらこういった民間資格の中には資格商法的な講座もいくつかあります。
数か月程度で合格できて、講座受講が必須という民間資格には特に要注意です。
もちろんそういったモノは就職や転職の際に有利になることはありません。
履歴書に書いても評価の対象にすらなりません。
合格するには
文系出身者でも2級なら合格しやすい
統計検定2級には高度な数学の知識が要求されますが、文系出身者でも多く合格しています。
高校の微分、積分よりももう少し踏み込んだ知識が必要ですが、高度な知識までなくとも大丈夫です。
試験では、解答を導くためにある程度都合が良い数字が与えられていて、複雑すぎる計算はないです。
ある程度の桁以降は切り捨てて計算を進めても選択肢では近い数字が用意されています。当日電卓を忘れてもなんとかなる範囲の計算です。
数学が苦手で、あまり勉強していなくても統計検定2級は合格できます。
ただし、微分と積分は必須です。理系で数学を学習した人は文系の人よりは有利です。
4級であれば難易度は低い
統計検定のレベルは、1級、準1級、2級、3級、4級の5種類+統計調査士、専門統計調査士、統計検定データサイエンス基礎、統計検定 データサイエンス発展、統計検定 データサイエンスエキスパートの合計10種類です。ここでは一般的に受験生の多い1級~4級について説明します。
各級のレベルはざっと下記の通りです。
- 4級:中学レベル
- 3級:高校レベル
- 2級:大学の一般教養レベル
- 1級:大学の専門課程レベル
統計検定4級は中学生レベルとなってますが、数学的な様子は少ないため難易度はかなり低く小学生でも合格できます。
3級は高校レベルです。もちろん難易度は4級よりも上です。合格するには確率を理解しなければなりません。公式問題集を何回か解けば合格できます。
2級、1級は大学レベルの内容となっています。統計検定2級からは数学的な素養が必要になります。
1級になると、仕事で知識を活かせるような実践的な内容になるので難易度も上がります。数学に精通している人でもかなり難しく感じられます。
社会人であれば2級からの受験がおすすめ
社会人が教養として統計学を学びたいのあれば2級から受験するのがおすすめです。
実際に2級から受験する人が多いようで受験生全体の半数を占めています。
データ分析を全く知らない人であれば6か月以上の勉強は必要です。
ただし個人差があり、数学が苦手であればさらに時間を要します。
文系出身の社会人であれば6か月(1日1~2時間)ほどの学習で2級は合格できます。
ただし、その後の準1級は出題範囲の広さとレベルの高さでなかなか合格できないのが現実です。
基本的な学習方法の流れとしては過去問の繰り返しですが、公式問題集では問題数が少ないため、別に問題集を購入して数多く解いた方がよいでしょう。
個人によって数学的な知識が違うので、基礎の参考書やテキストも別途必要になります。
意外とマンガの参考書を利用している人も多くいます。
出題される問題の難易度は、簡単な問題が8割と難問2割です。
全体の8割については基本さえ理解できていれば解ける問題なので、その8割の中のさらに8割が正解であれば60%のラインを超えて合格です。
過去問題であれば下記で見られますが、原則として1回前の試験のみです。
参考:受験データ|統計検定:Japan Statistical Society Certificate
過去問でまずは自分の実力を知りましょう。
いきなり合格点に届かなくても3割程度理解できていれば無理なく学習を進められるでしょう。
公式のテキストは評判が良くない!
公式テキストが日本統計学会公式認定より出版されていますが、これが実は評判が悪くおすすめできません。
初学者がいきなりこれを読んでも何も分かりません。
説明文章は分かりづらいし、問題回答に説明もほとんど見当たりません。
式の変形が省略されている部分が多く、最後の結果だけ暗記になってしまうことが多いので、学習を進めるのが苦痛になります。
公式テキストと言ってるものの内容がよくないです。
とりあえず売るのを目的で作ったような印象です。
購入しない方がいいです。
無料で利用できる優良サイトで学習するのもおすすめ
統計検定2級のために無料で利用できる評判の良いサイトがあるので紹介します。
基本的にここの学習コンテンツを1つづつ進めていけば理解が深まります。必ず自分で計算してください。
参考:統計学の時間|統計WEB
もちろんこれだけではなく、他の参考書も並行して利用しましょう。
まずは無料の資料請求
テキスト・問題集・参考書
おすすめ問題集
過去3年分、本試験で出題された問題を収録した過去問題集です。
あまり解説が丁寧ではないので、初学者はこの問題集だけでは理解できません。
ある程度理解がすすんでいる人で、試験直前に過去問を確認したい人向けです。試験問題を解きながら勉強をすすめるスタイルの人にはおすすめできません。
過去問を見るだけであれば公式サイトからダウンロードもできます。所詮、「公式」というテキストや問題集はこの程度のものかという印象です。
内容は全般的に不親切で、価格と合っているかは疑問です。
種類 | 評価 |
過去問題集 |
おすすめ参考書
統計学初心者向けの独学用参考書です。内容は教科書的ではなく、あくまでも一からなぜそうなるかを教えてくれます。
統計検定2級の勉強をいざ始めたけど全然分からない、そんな人でもまずはこちらで一通り勉強すれば、さっぱりわからなかった内容が少しずつ理解できるようになります。
事例を用いながら説明しているのでわかりやすく、本質から理解できます。各セクションの最後に用意されている練習問題も復習にはちょうどいいです。
統計学の概要をまずは把握して、他のテキストや問題集へ進む際にはとてもおすすめです。
この参考書でも難しいと感じられる方は、さらに下記で紹介するマンガ形式の本から入ると良いでしょう。
種類 | 評価 |
参考書 |
これから統計学を学ぶ初学者向けの参考書です。
独学で何となく理解していたつもりだったのがしっかりと理解できた、長年分からなかった内容がこれ一冊でスッキリ、そんな印象を与えてくれる参考書です。
読み易い口調で記載されているのでイッキに最後まで読めます。「まずはこの一冊から!!」と言える本です。
ただ、説明が丁寧すぎるので、中高生向けかもしれません。少しは理解が進んでいる人には物足りないでしょう。
種類 | 評価 |
参考書 |
統計学に関する本を読んではみたけど、挫折しそう・・・そんな人には是非おすすめのマンガの参考書です。
とてもわかりやすく説明されているので、超初心者でも理解できる内容です。一番初めに読む本としては最適です。
基本的に、右ページにマンガ、左は文章という構成になっています。文章を読まなくてもマンガだけである程度は理解できるので、文章を読む苦痛がありません。
数学が嫌いで、統計学の意味が全然分かっていない、という人は是非読んでください。
種類 | 評価 |
参考書(マンガ) |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
【試験の実施:年2回+BCT方式】
- 1級~4級、統計調査士、専門統計調査士:11月末
- 2級~4級:6月中旬
- 2級・3級・統計調査士であればCBT方式で受験可能です。日時や会場などは都合に合わせて受験できます。
お申し込み
6月実施:4月初旬~5月初旬
11月実施:9月初旬~10月初旬
受験資格
どなたでも受験できます。
試験会場
1級:東京23区内、立川、名古屋、大阪地域、福岡地域
CBT:全国各地
受験料
5,000~8,000円(学割あり)
試験内容
【試験内容】
※ここでは2級を例にしています。他の級については主催者サイトで詳しく説明しています。
大学基礎課程(1・2年次学部共通)で習得すべきことについて検定を行います。
- 現状について問題を発見し,その解決のために収集したデータをもとに、
- 仮説の構築と検証を行える統計力と、
- 新知見獲得の契機を見出すという統計的問題解決力について試験します。
【出題範囲(2級)】
データソース、データの分布、1変数データ、2変数以上のデータ、データの活用、推測のためのデータ収集法、確率モデルの導入、推測、線形モデル、活用
参考:統計検定2級出題範囲表(pdf)
試験形式:4~5肢選択問題(マークシート)、電卓使用可
問題数:35問程度
試験時間:90分
合格基準
100点満点で70 点以上、難易度を考慮して調整されることがあります。
主催者情報
試験に関する詳しい情報は受験のご案内|統計検定:Japan Statistical Society Certificateをご覧ください。