防火管理者
取得するのは簡単だが定期的に消防訓練を実施するなど責任は重大です。
種類 | 学習期間 | 難易度 | 合格率 |
---|---|---|---|
国家資格 |
1~2日 |
易しい |
99% |
活かし方 | 取得費用 | 受験資格 | おすすめ度 |
---|---|---|---|
知識習得 |
1万円以下 |
講習受講 |
※会社単位での申込みが一般的ですが個人でも受講できます。
最終更新日:2022/10/23
防火管理者とは
私たちが普段利用しているショッピングセンター、学校、病院、ホテル、マンションなどのように多くの人が集まる施設には「防火管理者」という国家資格を持つ人がいます。
多くの人が集まる一定規模以上の建物では、火災を未然に防ぐための管理者として防火管理者を選任し、消防署に届け出なければなりません。
選任された防火管理者は、「消防計画」の作成や消防計画に基づく消防訓練を行います。消防計画とは、消防設備の点検や訓練の実施、火気の取り扱いなど、防火管理のうえで必要な業務についてさまざまな計画を立てることです。
消火訓練、避難訓練などを実施し、あるいは消防用設備などの定期的な点検を行った場所、その結果を消防長または消防署長に報告する義務も負います。
防火管理者は、人命に関わる極めて重要な責務を担います。そのため特に大規模な防火対象物については管理監督的な立場にある者、たとえば企業内において管理職に就いている者でなければ任命できません。
なお、防火管理者と同じような国家資格に「防災管理者」があります。両者はよく混同されますが、その資格は異なります。
関連資格:防災管理者とは
定期的に火災予防に関する業務を行う
防火管理者は、防火対象物となっている建物の火災を予防し、火災による被害を最小限におさえるためにさまざまな業務を行います。
例えば、消防設備の点検や避難訓練の実施などです。
万が一火災が発生した際に、被害を最小限に抑えるために、防火管理者は消化器の場所や使い方などを把握しておく必要があります。
さらに、被害が拡大しないように、正確に避難誘導をして素早く建物内の人達が避難できるよう避難経路などを確認しておかなければなりません。
1~2日の講習会を受講すれば誰でも容易に取得できる
防火管理者の資格は、消防庁、各地の消防本部、都道府県や市区町村、日本防火・防災協会が主催する講習を受講するだけで取得できます。
参考:東京消防庁<試験・講習><防火管理講習・防災管理講習>
参考:防火管理者について/千葉県
防火管理者には甲種と乙種の2種類があり、甲種は全ての建物、乙種は少し規模の小さな建物(細かい数字は割愛)の防火管理者にしかなれません。取るなら甲種を取ったほうがいいです。
- 甲種:2日の講習+効果測定(修了試験)に合格
- 乙種:1日の講習+効果測定(修了試験)に合格
受講資格の制限は特にないですが、講習は申し込みが殺到するため、会社経由で数十人単位で申し込まないと個人では拒否されるケースがあります。
個人で申し込むのであれば、一般向けの講習を開催している日本防火・防災協会主催がおすすめです。
参考:防火管理講習|講習について|防火・防災管理講習|一般財団法人 日本防火・防災協会
日本防火・防災協会の講習は一部の都道府県を除く各都道府県で年2~20回ほど行われます。受講料(テキスト、修了証、その他の諸経費を含む、税込み)も安く、甲種新規:8,000円、乙種:7,000円(2022年1月現在)です。
※この資格を取得したからといって誰でも防火管理者を名乗れるワケではありません。取得後に消防署に選任届を提出して、承認されて初めて防火管理者になれます。つまり、防火管理者の講習を修了しても、単なる有資格者にすぎません。
役に立つ資格なのか?
防火管理者はもちろん国家資格ですから、履歴書に書けば自己PRの材料にはなります。
しかし、この資格を持っているからと言って、PR材料にはなりますが就職や転職が有利になる可能性は低いようです。
つまり、防火管理者に合格していることが採用の決定打にはならないということです。
例えば防火対象物となっている建物で防火管理者の欠員がでたとしても、必要なら他の社員を講習に行かせれば済みます。
誰でも1~2日間の講習で取れる程度の難易度です。防火管理者が欲しくて、わざわざ外部から有資格者を採用するような会社はないでしょう
ただ、くだらない防災士のような民間資格などに比べたら取得する費用も安くすみます。
関連資格:防災士とは
それに、将来社内で管理職へと昇進すれば、実際に防火管理者として任命される可能性もあります。
あらかじめ取得しておいて損はないでしょう。取得するメリットはあって実用的です。
将来性を徹底研究
この資格の活かし方
防火管理者に合格したところで就職や転職はほとんど有利にはならないと前述しましたが、ハローワークなどで探すと防火管理者の求人がいくつか見つかります。
例えば、ホテル、病院、介護施設、規模の大きな飲食店、ビル管理会社などです。
そういった施設へ正社員として就職を希望するのであれば、履歴書に書けば面接時に評価される可能性はあります。
さらに消防・防火に関する教養を高めるために、消防設備士乙種などを取得するのもおすすめです。
関連資格:消防設備士とは
防火管理者は、職務を遂行する上で他の人に対して指示や誘導をしなければならないので、社内で管理的な地位の人が選ばれます。
メンドーな仕事を押し付けられそうでイヤがる人も多いのですが、場合によっては社内での評価アップにつながります。
適正な管理業務を怠ると責任を追及されるケースも
防火管理者として任命されたら、 日常的に火気を管理し、施設の防火上の管理や予防を行い、万が一の際には消火活動などを適切に行う責任を負います。
適正な管理業務を怠り、火災等による死傷者が出た場合、管理責任者として責任を追及される場合もあります。
2001年に起きた新宿歌舞伎町のビル火災では、防火管理者が選任されておらず多くの死傷者が出ました。このケースでは、ビルオーナーが有罪となりました。
仮に、防火管理者が選任されていた上で火災が発生したのであれば、防火管理者が責任を追及されていた可能性もあったでしょう。
歌舞伎町のビル火災などのような悪質なケースは別として、よくあるのが、入社間もない新人に防火管理者の業務を押し付けるケースです。
本来、防火管理者は会社で管理的権限のある課長などの役職者が務めなければなりません。ところが業務に忙しかったりメンドーだったりすると部下に丸投げします。
もちろん、消防設備の点検や避難訓練などを真面目に行う気など早々ありません。「やらなくていいから、やったことにして報告しろ」というお決まりのパターンです。
防火管理者は、当然ですが防火に関する責任を負います。だから会社で管理的な権限のある役職者がやるんです。
入社間もない新人であれば管理的権限はなく、実質的に防火管理者には該当しません。明らかに消防法に違反します。
消防署の立入検査でこの事実が判明したら、「やらなくていいから、やったことにして報告しろ」と指示を出した上司が責任を問われます。
分譲マンションも防火管理者が必要
マンション等の共同住宅は、収容人員が50人以上、延べ面積が500㎡以上の場合は甲種防火管理者を選任しなければなりません。
つまり、ほとんどのマンションでは甲種防火管理者を選任しなければならないということになります。
管理会社からフロントマンや管理員が派遣されマンションに常駐しているようであれば、その人が防火管理者を兼務するケースが多いようです。
しかし、そうでなければ住民の中から防火管理者を選ばなければなりません。選任された防火管理者は、消防署への消防計画の届出のほか、定期的な消防訓練を実施します。
ところが現実は、法令で選任が義務付けられているにも関わらず約22.1%が未選任となっています。また28.2%の建物で消防計画が未提出となっています。
参照:附属資料1-1-40 全国の防火管理実施状況 | 令和元年版 消防白書 | 総務省消防庁
この場合、消防署が実施する立入検査において、防火管理者の未選任、消防計画の未届を指摘され指導対象となります
すぐに行政罰が下ることはないでしょうけど、違反の状態を放置すれば、使用停止命令が出る可能性はあります。
万が一の事故の際、管理組合の理事長が責任を問われます。
名義貸しなどは論外、絶対やらないように!
さらに悪質なのは名義貸しです。
人材がいないため、外部の人間に少しの手当を毎月支払って、講習会へ行かせて名義を貸りるというパターンです。
安易に講習会に行くと後々大変なことになります。
消防署の立入検査を受けた場合、防火管理者は点検の状態及び改修を必要とする設備に対し、経過措置を申告する義務があります。
また、火災発生時に於ける指示命令についても、消防署に届出た事項について、消防訓練などの実施状況について答えなければなりません。
もし、名義貸しがバレたら、消防法違反により告訴される場合もあります。
名義貸しがいけないことは当然ですが、実際に防火管理者としてその会社で業務をすることになったとしても責任は重大です。
小遣い欲しさで防火管理者の名義貸すような真似は絶対にしないでください。
防火管理者になるには
繰り返しになりますが、防火管理者の資格は、消防庁、各地の消防本部、都道府県や市区町村、日本防火・防災協会が主催する講習を1~2日受講すれば誰でも容易に取得できます。
防火管理者は建物の規模によって甲種と乙種の2種類に分かれていて講習の内容も違います。
- 甲種:2日の講習+効果測定(修了試験)に合格
- 乙種:1日の講習+効果測定(修了試験)に合格
一応、受講資格のようなものもあるようで、「中学校卒業程度以上で日本語を理解できる」のが条件です。
講習は、中学校を卒業していれば十分理解できる程度のレベルです。睡魔との戦いになるかもしれません。
講習の最後に20分10問の効果測定(修了試験)を実施し、7問以上正解で修了証がもらえます。しかし、そんなに身構えるほどではないです。講義中に試験に出るところをピンポイントで教えてくれます。効果測定は講習用テキストを見てもOKです。
睡魔に耐え、講師が大事なポイントとだと言った箇所に付箋とマークをすれば満点を取れるはずです。試験と言っても一応形だけで、基本的にはほぼ100%の合格率です。国家資格ですけど難易度は非常に低いです。
講習会場によっては消火器等の操作要領など実技訓練を行います。実技のある講習会では軽装及び動きやすい靴で受講しましょう。
実技の内容は、訓練用消火器や屋内消火栓を使用した消火訓練などです。救命蘇生術の説明や各種防火器具の使用法の説明なども行います。
なお、防火管理者資格の修了証には 有効期限はないので、更新の必要はありません。
ただし、防火管理義務対象物に選任されている防火管理者は、 講習終了後の5年以内に再講習することが義務付けられています。
講習情報
開催日 | お申込み |
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主催者によって違います |
主催者によって違います |
受験資格 |
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受験資格の制限はなく、どなたでも受験できます。 |
試験内容 |
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受講料:5,000~8,000円ほど(各税込)
【甲種】:10時間(2日間)+修了試験
【乙種】:5時間(1日)+修了試験
効果測定:講習の最後に20分10問の効果測定を実施、7問以上正解で合格
《免除規定》
【甲種講習の免除】
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講習に関する詳しい情報は消防庁、各地の消防本部、都道府県や市区町村、日本防火・防災協会のホームページをご覧ください。