宅地建物取引士とは?就職や転職が有利になる有望国家資格
種類 | 難易度 | 合格率 |
国家資格 | 難しい | 16% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | 2~5万円 | 8か月以上 |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
就職・転職 | 5,236件 |
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年8月27日に集計しました。
不動産関係の会社で必須となる国家資格、それが宅地建物取引士です。難易度は高く短期で一発合格などマレです。
就職や転職が有利になるリットがあるので、学生・社会人を問わずおすすめです。全国的に求人も豊富で、50代業界未経験でも就職できる可能性があります。
民法についても学習するので、合格後は他の資格試験にも知識を活かせます。
宅地建物取引士とは
不動産の取引には必須の国家資格
宅地建物取引士は、「取引」という用語が入っているように、宅地(土地)や建物などの不動産を取引(売買や賃貸)する際に必要となる国家資格です。
不動産の売買や賃貸の契約をする際、宅地建物取引士が必ず契約前に物件と契約内容に関する重要事項を記載した重要事項説明書を交付して、重要事項の説明を相手にします(宅地建物取引業法第35条)。
そして、重要事項説明書の内容に間違いがないかを確認するとともに、説明責任の所在を明らかにするために重要事項説明書に宅地建物取引士が記名(署名)し押印します。
重要事項説明書以外にも必要となる契約書も、宅地建物取引士が内容を確認して記名・押印します(同第37条)。
宅地建物取引士には有資格者にしかできない法律で定められた独占業務があり、一定のステータスを国から与えられます。そのため有資格者は会社から重宝されるのです。
事務所ごとに一定の割合で宅建士が必要
不動産関係の会社で必須となる国家資格、それが宅地建物取引士いわゆる宅建士です。
土地や建物の売買をおこなう不動産会社、あるいはアパート、マンションの賃貸を仲介するいわゆる仲介業者などには必ず事務所に一人以上の宅地建物取引士がいなければなりません。
もしも退職などで宅地建物取引士がいなくなったら事業を継続できなくなります。すぐに宅地建物取引士を採用しなければなりません。
見つからなかったら最悪の場合、事業廃止です。それだけ宅地建物取引士は不動産会社にとって必要不可欠で重要な存在です。
さらに、宅建業法の規定により、事務所ごとに従業員5人に1人以上の割合で宅地建物取引士が必要です。事務所に従業員が10人いたら最低2人、20人いたら最低4人は必ず宅地建物取引士がいなければなりません。
このように、有資格者を「必ず置く」という必要性から、宅地建物取引士は必置資格と呼ばれています。
なお、実際に宅地建物取引士と名乗ったり名刺に印刷して業務を行うには、宅地建物取引士の国家試験に合格し、試験を実施した都道府県知事の登録を受け、さらに宅地建物取引士証の交付を受けることが必要です。
単に合格して合格証書を手にしただけでは「有資格者」に過ぎません。
主催者サイト:一般財団法人 不動産適正取引推進機構
役に立つ資格なのか?
とにかくイロイロと役立つ資格
不動産会社にとって宅地建物取引士は必要な存在であり、合格者には資格手当てを支払っている会社も多くあります。
中には毎月5万円の資格手当を支給する会社もあります。それだけ宅地建物取引士は会社にとって必要な存在です。
そのため、資格をもっているというだけで不動産会社への転職・就職はかなり有利になります。まさに役立つ資格です。
既に不動産に関する仕事をしている人や、これから不動産会社へ就職・転職を希望する人は是が非でもとりたい資格です。社内での給与面の待遇や任される仕事も違ってきます。
資格試験の登竜門と言われる理由
宅地建物取引士は、不動産以外の金融関係や建築関係の会社でも役に立つ資格です。
社員に宅地建物取引士の資格取得を奨励している銀行もあります。融資には、担保となる不動産に関する知識が必要になるからです。
宅地建物取引士の試験には「権利関係」の科目がありますが、これは民法のことです。
民法は行政書士をはじめ司法書士、土地家屋調査士、不動産鑑定士、中小企業診断士、マンション管理士、管理業務主任者、ファイナンシャルプランナー、その他多くの国家資格の出題科目となっています。
宅地建物取引士試験で学んだ民法の知識がそのまま上記の国家試験の際に活かせるため、試験後にさらに違う資格にチャレンジする人も多くいます。
「資格試験の登竜門」と言われているのはそのためです。
将来性について徹底研究
この資格の活かし方
何か資格を取りたい!と考えている人には、まずはこの資格がおすすめです。
不動産関係の会社はもちろんですが、金融、建築、役所でもこの資格を奨励しており、役立つ機会が多くあります。
40代、50代でも宅地建物取引士を持っていれば、未経験者でも不動産会社に就職できる可能性が少なからずあります。
転職・就職にはかなり役立つ資格です。国家資格なので取得するメリットは十分にあります。
もちろん20代、30代の人も、新卒でこれから就職活動をはじめる学生も、宅建を持っているだけで就職や転職の幅が広がります。履歴書に書いてアピールできます。
さらに、管理業務主任者やマンション管理士などの国家資格も合わせて持っていれば自己アピールの材料として役立ちます。
宅地建物取引士にしかできないこと
宅地建物取引士の資格を持っているとできる代表的な業務は以下の3種類です。これは宅地建物取引士にしかできない独占業務です。
- 重要事項の説明
- 重要事項説明書への記名押印
- 契約内容書面への記名押印
重要事項とは、物件の価値に重大な影響を及ぼすような事項です。売買や賃貸契約をする前に、買主や借主に隠さずに説明しなければなりません。これを怠ると法令違反となり、契約は成立しません。
いわゆる「事故物件」「いわく付き物件」に関しても重要事項説明書に記載して買主に告知しなければならないとされています。
重要事項の説明は一般の社員が説明してはいけません。必ず宅地建物取引士が説明します。相手が理解して納得しなければならないので単なる棒読みではダメです。
大手のアパート・マンション仲介会社でも宅地建物取引士を持っていない一般の社員が説明したり、全く説明すらしない会社もあります。これは明らかな法令違反です。
説明した内容を重要事項説明書という書面にして売主と買主(賃貸であれば貸主と借主)双方が所有しますが、宅地建物取引士が記名・押印します。
そして、最終的に売買(賃貸)契約書を交わして契約成立となりますが、契約書にも宅地建物取引士が記名・押印をします。
以上が宅地建物取引士にできること、宅地建物取引士にしかできない法律上の業務となります。
賃貸不動産経営管理士との違い
アパート・マンションなどを賃貸する際に、後で契約上のトラブルが起きないように相手(借りる人・借主)に重要事項をあらかじめ説明するのが宅地建物取引士です。
一方、マンション・アパートなどを貸す人(大家さん・貸主)に、管理受託契約に関する重要事項をあらかじめ説明をするのが賃貸不動産経営管理士です。不動産の管理会社の事務所毎に最低1名は賃貸不動産経営管理士が必要です。
- 不動産会社 ⇔ 借りる人・借主 :説明するのは宅地建物取引士
- 不動産会社 ⇔ 大家さん・貸主 :説明するのは賃貸不動産経営管理士
マンション・アパートなどを所有している大家さんは管理受託契約を結んで賃貸の業務を管理会社に全て任せているケースがほとんどです。ぶっちゃけその方が楽だからです。
宅地建物取引士は1958年(昭和33年)に試験が始まった非常に歴史のある試験ですが、賃貸不動産経営管理士は2012年(平成24年)2年に始まった比較的新しい試験です。
比較すると以下のような違いがあります。
種類 | 受験者数 | 合格率 | |
---|---|---|---|
宅地建物取引士 | 国家資格 | 220,797人 | 15.6% |
賃貸不動産経営管理士 | 国家資格 | 35,553人 | 31.5% |
※ともに2021年(令和3年)の数値です。
ちなみに、2021年4月、国交省令により賃貸不動産経営管理士は国家資格となりました。それまでは民間資格でした。
例えば、大手の仲介会社のように不動産の仲介と管理を兼ねているような会社へ就職を希望するのであれば、宅地建物取引士にプラスして賃貸不動産経営管理士を持っていればさらに有利になる可能性はあります。
合格するには
簡単?とんでもない!難関国家資格です
宅地建物取引士の受験者数は毎年25万人以上という日本で一番の人気国家資格です。
資格予備校や通信教育の会社が、受講生獲得のため「容易に取りやすい資格」「短期で一発合格!」などと紹介していますが、本当は難関の国家資格です。
合格率は16%といえば、5人受験すれば4人以上が不合格になります。そうそう簡単には合格できません。
しかも、合格者の中には2回目、3回目の受験生も多くいます。体感的にはさらに難しく感じられるはずです。短期で一発合格などとは考えないほうがいいでしょう。
使える資格、役立つ資格というものは、やはりそれなりに時間をかけて学習しなければ合格できません。
ネット上では、合格するには200~300時間、期間にして4~5か月の勉強時間が必要などと紹介されてますが、現実的には8か月~1年くらいは見ておいた方がよいでしょう。
簡単そうに思わせて受講生を募る通信教育の宣伝を信じてはいけません。
2011年ごろから急激に難化、権利関係(民法)がカギ
もともと難易度の高い国家試験でしたが、特に権利関係(民法)の問題は2011年から急激に難しくなっています。
権利関係(民法)は理解の深さを問う出題が多く、過去問を完璧に理解したとしても正解できないような出題が増えています。
やはり権利関係を理解して得点するのが合格のカギとなっていますが、理解するのに時間がかかります。かなりの時間を費やして学習しなければ点数は得られません。
試験の配点の半分以上を宅建業法の出題で占めますが、こちらは理解というよりも暗記科目です。確実に覚えて、本試験では点数を積み重ねてください。
テキストが豊富なので独学でも十分合格できる
宅地建物取引士は受験生が多いため、本屋さんへ行けば良質な受験用テキストがすぐに手に入ります。
ただし、一冊だけでは情報量が絶対的に不足します。合格するには最低でも権利関係(民法)×1冊、法令上の制限×1、宅建建物取引業法×1冊、予想問題集×1冊、合計4冊分ぐらいは必要です。
過去問だけを繰り返し学習すれば合格できると思っている人が多いようですが、それではとても合格はできません。
過去問はあくまでも過去問です。よく似た問題が出題されることはあっても、全く同じ問題が出題されることはありません。
過去問を完璧に理解したとしてもせいぜい全体の40%ほどしか正解できないと考えてください。特に最近の本試験の難化傾向により過去問だけでは合格は難しくなっています。
では、合格に必要な70%の正解率まで引き上げるためにはどうしたらよいのかと言うと、それは予想問題集を多く解くことです。
本試験の2、3ヶ月前になると各社より予想問題集が発売されます。それをできるだけ多く解いてください。もちろん通信講座で予想問題集が何冊かついていればそれを解いて実力をつけてください。
間違えた問題は繰り返し学習して確実に理解し、類似の問題にも答えられるように準備しましょう。
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おすすめの通信講座
宅地建物取引士の講座で評判がよく実績もあるのが、アガルートアカデミー、資格スクエアです。この2つが当サイトが選ぶおすすめの通信講座です。
アガルートアカデミー
特に合格率が一般的な予備校や通信講座に比べて高く、令和2年度宅建試験におけるアガルートアカデミー受講生の合格率はなんと43.3%。全国平均が16.81%の中、実に2.58倍の合格率です。
私がアガルートアカデミーをすすめた知人は、見事一発合格しました。
ともにテキストはオリジナルで大変良くできています。教材制作専門スタッフが過去の出題を分析して作ったオリジナルテキストで、もちろん最近の出題傾向にも対応しています。
また、動画による講義はパソコンやスマートフォンがあればどこでも受講できるので便利です。 この価格でこれだけ充実している通信講座は他にないでしょう。
資格スクエア
いつでもどこでもマホやPCからテキストや問題集で勉強できて、さらにはWeb講義も受講できます。
過去問は、10年度分・12回分のをWEB問題形式です。利用した問題は記録されるため、間違えた問題・わからなかった問題から優先的に出題されたり、関連講義にリンクして飛べる機能もあります。
実はこの機能がとても優れています。間違えた箇所を繰り返し学習することで確実に実力アップするからです。
講義は1本あたり30分程度で歯切れが良く無駄がない内容です。インプット講義約66時間、アウトプット講義約10時間と内容は十分です。
※講義はテーマごとで区切っているため、1本当たり数分で終わる講義や30分程度の講義などばらつきあり。
スキマ時間にテキストや問題集で勉強して、いつの間にか実力が付くような工夫が随所に施されているのが資格スクエアの特徴です。
製本テキストありプランと無しプランを選べますが、やはりテキストは手元にあった方がいいでしょう。さらに視覚的な学習ができます。
※こちらから無料講義体験、資料請求さらに受講申し込みができます。
テキスト・問題集・参考書
おすすめテキスト・基本書
版を重ねるごとにこのテキストはずいぶんと良くなっています。おそらく駿台のテキストを参考にして改良したのではないでしょうか。
以前は、独特のクセのある話口調の説明書きが特徴でしたが、ずいぶんと少なくなりました。
多くの宅建用テキストが販売されていますが、愛用者も多く評判も悪くありません。初心者にもわかりやすく丁寧に解説しています。
理解するのに重点を置いているため、はじめて宅建の学習を開始する方にはおすすめな入門書です。
2018年版までは、少し内容が不足している感はありましたが宅建士の試験内容に合わせてボリュームも増えています。
特に権利関係は内容も量も充実しています。何度も繰り返し読むのにおすすめのテキストです。
種類 | 評価 |
テキスト |
法律の知識ゼロの初学者向けのテキストです。これから宅建士の勉強をはじめるにあたっての入門書です。
図やイラスト、解説が的確で分かりやすく説明しています。特に民法の学習はこのテキストから入るととっつきやすいでしょう。
ただ、この本を読んで問題集を解いても歯が立たないと思います。さらに別のテキストもあった方がよさそうです。
もちろん合格するためには過去問題集や予想問題集も必要です。
種類 | 評価 |
テキスト |
各単元ごとに図や比較表でうまくまとめられており、内容の確認にも非常に有効に使えます。
特に初学者にはオススメです。理解できる⇒記憶される⇒どんどん先へ進める、という一連の学習が無理なくできます。
ただ、解説が長くて読むのは時間がかかります。何回か読んで内容を理解できるようになったら違うテキストに替えるべきです。
タヌキチ、ネズキチ、イヌマル、ハッピー、ハナ…その名の通りたぬきや犬がイラストでこれでもかというぐらい頻繁に登場します。
読んでいると、誰が悪役で誰が善人なのかわけがわからなくなってきます。それがかえって内容を複雑しているといった感も若干あります。
「この一冊だけで合格できる」と表紙に書いてありますが、ちょっと足りないような気がします。10年分ぐらい掲載されている過去問が欲しいところです。
種類 | 評価 |
テキスト |
良質な薄い紙を利用しているため、本の総ページ数が少ないようで実はかなりのページ数です。見た目以上にページ数が多く情報量も多いです。
そのため時間をかけて読んでいてもなかなかページが進まず、全部読み終わるのに時間がかかります。これを毎日読み込んで学習の中心にするには時間がかかりすぎるのでちょっと危険です。
初学者がとっかかりとして一読もしくは数回読むにはいいと思います。
あるいは、疑問点が出た時に解説をよんで理解するための辞書がわりとして使うにはいいと思います。
権利関係以外の学習にはいいですが、権利関係をこのテキストから入るのは危険です。おそらく理解が進みません。
種類 | 評価 |
テキスト |
おすすめ問題集
宅地建物取引士の過去問題集全3巻のうちの第1巻「権利関係」編です。
良質な薄紙で印刷されているので厚さの割には問題数が多く、10年分以上の過去問が収録されています。
ウォーク問というだけあって形がコンパクトで、電車の中でもお昼休みにでも開いて読むことができスキマ時間を有効に活用できます。
宅地建物取引士試験においては、過去問題が形を変えて出題することも多いので過去問題集は必須です。
この問題集は、解説も本試験の問題文に沿う形で書かれており、内容も丁寧です。受験生必携の書と言ってもよいでしょう。
※このシリーズは「宅建業法」「法令上の制限・税・その他」をあわせた全3巻です。
種類 | 評価 |
過去問題集 |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
例年10月の第3日曜日
お申し込み
7月ごろ
受験資格
特にありません。どなたでも受験できます。
試験会場
全国各地、ただし原則として、受験者が居住している都道府県の会場
受験料
8,200円(2023年12月現在)
試験内容
宅建資格試験は、大きく下記の4科目より構成されています。
- 権利関係:14問(借地借家2、区分所有1、不動産登記法1含む)
- 法令上の制限:8問(土地計画2、建築基準2、国土利用1、農地1、土地区画1、宅地造成1)
- 宅地建物取引業法:宅地建物取引業法20問
- その他法令:税3問、他5問(宅建従事登録者は免除、不当景品類~、住宅金融支援機構、土地建物統計各1)合計8問
全50問(※ただし、登録講習修了者は45問)
合格基準
約70%の正解(毎年合格基準が変わります)
合格発表
毎年11月下旬
主催者情報
試験に関する詳しい情報はRETIO 一般財団法人 不動産適性取引推進機構をご覧ください。