エネルギー管理士の将来性や需要そして難易度は?
種類 | 難易度 | 合格率 |
国家資格 | 難しい | 20% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | 2~5万円 | 10か月 |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
評価アップ | 187件 |
- 国家試験を受験すれば難関ですが、管理研修を受講すれば比較的容易に取得できます。
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年11月24日に集計。
エネルギー管理士とは、工場や事業所などでエネルギーの消費を押さえて省エネを推進する国家資格です。
全国的に見ても決して求人は多くはありませんが、需要は確実にあります。
ただし、就職や転職では役立つ機会は少ないようです。
国家試験を受験すれば難易度は高く合格率は20%程度ですが、管理研修を受講すれば比較的容易に取得できます。
エネルギー管理士とは
工場などで省エネを推進する責任者
工場や大型の施設などでは、エネルギーの消費を押さえて省エネを推進することが法律で定められています。
それを管理する責任者がエネルギー管理士です。
エネルギー管理士は、石油資源を元とした電気・ガス・油などのエネルギーを大量に消費する工場や事業所などで、エネルギー使用量を合理化するために設備を管理したり使用方法の監視や改善を指揮を行います。
主たる業務は、前年度の電気・燃料の使用状況に基づいて毎年7月に国に提出する定期報告書と中長期計画書の作成です。
毎月、電気・燃料の使用状況を集計し正確に把握しておかなければなりません。
一定のエネルギーを消費する中規模以上の工場や事業所などでは、その規模などに応じてエネルギー管理士の中からエネルギー管理者を一定人数配置することが法律で義務付けられています。
エネルギー管理士の国家資格は、日本のエネルギー保全と合理的な使用のために生み出されました。
工場の省エネルギー化にとどまらず、日本のエネルギー事情を支え、さらには地球環境の保全において大変重要な役割を担います。
所轄省庁:エネルギー管理士 (METI/経済産業省)
実施団体:ECCJ 省エネルギーセンター
エネルギー管理士が誕生した背景
日本はエネルギー資源に恵まれない国です。
エネルギーの元となる石油などは海外にほぼ100%依存しています。
そのため、国際情勢などで国内へのエネルギー供給が著しく変動します。エネルギーの安定的な供給と効率的な利用は国の根本的な問題です。
日本は、過去に1973年と1979年の二度にわたる石油危機(オイルショック)に直面し、石油依存度の高い日本は特に大きな打撃を受けました。
その後、資源の少ない日本で将来にわたってエネルギーを効率的・合理的に使う目的で施行されたのが「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(俗に言う省エネ法)です。
エネルギー管理士とは、この法律により誕生した資格です。
省エネだけではなく地球温暖化防止を盛り込むために度重なる省エネ法改正で、最近では一段と重要度が高まっています。
特に多くのエネルギーを大量に使用する工場で節電を管理するエネルギー管理士への注目度は高まり、一気に有資格者の需要が増加しました。
役に立つ資格なのか?
就職や転職にはあまり活かせません
エネルギー管理士試験に合格して正式にエネルギー管理士免状の交付を受けたとしても、残念ながら就職や転職にはあまり役立つことはないようです。
それは、エネルギー管理士が必要となる工場は限られている上に現在設置が必要とされている工場には既に必要人数の配置が済んでいるからです。
その人が異動や退職しない限り新たなエネルギー管理士の新たな需要は生じません。
エネルギー管理士の資格は、国家試験だけではなく実務経験プラス認定研修で取得できます。
エネルギー管理士の欠員が出そうな工場では、この研修をベテラン社員に受講させれば補充できます。外部の人を改めて採用する必要はないんです。
さらに申し上げますと、エネルギー管理士の資格を持っているからといって会社で何かの業務で役に立つわけではなく、利益には貢献しません。
国が法律で決めているから会社も仕方なく社員に取らせているというのが実態です。
会社側にとっては「何の足しにもならない資格」なんです。
国が決めたことなので必要な工場は仕方なく人員を配置しているだけなんです。
求人の多くは派遣会社
エネルギー管理士の資格を持っているこを採用条件としている会社を調べてみると、多くは電気設備保全業務、建物・設備点検業務、空調設備の保守管理などを業務委託で請け負っている派遣会社です。
求人数は全国的に見てもかなり少なく、しかも待遇は決して良くありません。
エネルギー管理士の資格は再就職などで設備保全会社へ就職するのであれば有利になりますが、例えばステップアップを目的とした転職ではあまり役立たないことがわかります。
将来性について徹底研究
この資格の活かし方
エネルギー管理士は、就職や転職に役立つというよりも、どちらかというと就職後に実務経験を積んで社内でキャリアアップするための資格です。
エネルギー管理士免状の交付を受けて工場などでエネルギー管理者となれば昇進や昇格において有利になります。
資格保有者を対象に資格手当を支給している会社もあります。
会社からの依頼で、しかも会社の負担で管理研修を受けるチャンスがあれば是非取得したい資格です。
エネルギー管理士と電験三種、どちらが難しいか?
同じような電気・設備関係の資格としてよく比較されるのが電験、いわゆる電気主任技術者試験です。
電気主任技術者には一種から三種まであり、特に二種と三種は人気です。
電験三種かエネルギー管理士か・・・どちらかチャレンジしてみようか考えている人も多いのではないでしょうか。
人によってはどちらが難しいのか意見が分かれるとこですが、エネルギー管理士(電気)は電験三種と電験二種の中間くらいの難易度という意見が多いようです。
そのためエネルギー管理士のことを、別名「電験2.5種」とも呼ぶようです。
エネルギー管理士は電験と異なり、エレベーターの駆動や滑車等の力学分野があるので、電気だけを勉強していても合格できません。
自動制御についてもエネルギー管理士の方が電験三種より難しいようです。
試験に合格するための勉強をすればエネルギー管理士の方が合格しやすいと言われています。課目合格制度もあります。
それに、エネルギー管理士は実務経験とお金があれば研修で比較的簡単に取れます。
エネルギー管理士の方が取得しやすいといえます。
仮に、両方ともに試験で取得したいのであれば、電験三種→エネルギー管理士(電気)→電験2種の順序がおすすめです。
官僚主導で天下り団体のために作られた国家資格
エネルギー管理士試験の受験料は他の国家試験と比較しても高く17,000円(非課税)です。
エネルギー管理研修は70,000円(非課税)です(2022年3月現在)。
知名度が低く就職や転職活動にはあまり使えず、資格の使い方が限定されている割には高いといえます。
どうしてか?!というと理由は簡単です。
エネルギー管理士は官僚主導で作られた国家資格で、天下り団体の利益確保を目的としているからです。
経済産業省の外局団体資源エネルギー庁が、エネルギーの使用量に応じて「エネルギー管理指定工場」というものを会社に押し付けます。
指定工場になった以上、会社はエネルギー管理士を置いて省エネに努めなければなりません。
エネルギー管理士を置かないでいると罰則の対象になります。
法律で定めらた人数のエネルギー管理士を確保するために、会社は試験やエネルギー管理研修を実施する省エネルギーセンターに受験料や受講料を払わなければなりません。
省エネルギーセンターとは経済産業省の外局団体です。
現実的には、試験よりも取得が楽なエネルギー管理研修を受講して資格を取得する人が圧倒的多数です。
70,000円×受講生数の金額を企業が天下り団体に「献金」します。
エネルギー管理士になるには
熱分野の方が一般的には簡単だと言われている
エネルギー管理士試験は熱分野と電気分野に分かれていますが、一般的に熱の方が簡単だと言われています。
合格だけが目的であれば熱の受験を検討するのがよいでしょう。
もちろんその人の得意不得意によっても違います。
電気分野が得意で、熱力学の勉強をしたことがない人であれば熱力学は難しく感じます。
もちろんそのや逆もしかりです。
普段から仕事で熱計算をしている人は半年程度の学習で合格できますが、熱力学についてあまり知識がない人にとっては非常に難しく感じられる試験です。合格するのに1年程度の学習期間が必要です。
また、ある程度高校で物理をしっかり勉強してきた人は、熱力学について詳しくなくても学習を進めやすいでしょう。
エネルギー管理士試験は課目合格制を採用しているので合格した課目は翌年免除になります。
一度に全て合格を目指さなくてもいいんです。
ただ、課目合格を狙っているうちに実務経験が3年超えると、より簡単な研修を受けられるようになります。
エネルギー管理士になるには国家試験と管理研修の2通り
エネルギー管理士になるには、独力で学習して国家試験に合格する方法とお金を払って管理研修を受けて楽に合格する方法の2通りがあります。
試験は誰でも受けられます。選択専門課目として熱分野、電気分野のいずれかを選択します。
国家試験の場合は難易度は高く、時間をかけて学習しないと簡単には合格できません。
一方で管理研修であれば、事務職員であっても1週間の研修を受講し、最終日の確認試験を受験すれば合格できます。
そのため管理研修で取得する人が圧倒的に多いようです。
管理研修を受講した場合の合格率は50%程度と言われています。
もちろんある程度の数学や電気の知識は必要です。
エネルギー管理士になるというのは、正確にいうと試験に合格後、エネルギー管理士免状の交付を受けるということです。
交付を受けるために必要な実務経験の長さは、エネルギー管理士試験とエネルギー管理研修では違います。
- エネルギー管理士試験:熱分野か電気分野かどちらの試験に合格して、会社が証明する1年以上の実務経歴証明書兼免状発行申請書を資源エネルギー庁に提出する。
- エネルギー管理研修:研修を修了して、発行申請書を資源エネルギー庁に提出する。申し込み時に、3年以上の実務経歴証明書が必要。
実務の内容としては、エネルギーの使用の合理化に関する実務に従事している必要があり、実際に設備の維持・管理等をしていなければなりません。
電気や水蒸気、燃料等で動く工業的設備一般の運用及び管理です。大きなボイラーから、オフィス用エアコンまで大丈夫です。
エネルギー管理士は国家試験合格による免状申請の場合、会社が実務証明としての社印を押してくれるかが重要です。
実務経験(1年)についてはあまり厳密に書かなくても受理されるようです。
管理研修受講の要件である実務3年の証明については、試験による免状申請に比べて設備の規模や業務内容、従事時間などを細かく書かなければならないようです。
おすすめの通信講座
エネルギー管理士受験用のテキスト・参考書、問題集は専門書的な扱いになるため、発行部数も少なく値段も高めです。一冊あたり3,000円~5,000円程度はします。
全て購入すると熱分野でも電気分野でも25,000円くらいはするので、通信講座を受講するのがおすすめです。
中でもJTEXは40年の実績があり、多くの企業が社員教育用に利用しています。一般の受講生も多くおすすめです。値段もお手頃価格です。
※こちらから受講申し込みができます。
テキスト・問題集・参考書
おすすめテキスト・基本書
エネルギー管理士の熱分野の4科目(専門課目3課目+共通課目1課目)を1冊にまとめたテキスト・参考書です。
受験生の多くはこのテキストを使っています。
これから受験を考えている人は、まずこのテキストで学習を始めてみればいいと思います。
要点がうまくまとまっていて、特に計算問題については初等的な物理の知識しかなくても理解できるよう解説が丁寧です。
ただし、ある程度、化学・熱に関する知識がないとこのテキスト一冊で合格するのは少し難しいと思います。過去問題集と一緒に学習するのがおすすめで、わかりづらい点については4科目分別のテキストを購入して参考にしてください。
少々レベルは高いですが、合格するレベルの実力はつきます。短い時間で合格したい人におすすめです。
種類 | 評価 |
テキスト |
おすすめ問題集
試験問題に慣れるためにも、過去問題集を使った学習は必須です。
エネルギー管理士については過去10年分程度収録していあれば基本的にはOKです。
過去問題集を選ぶ際は、オーム社か電気書院のどちらかで迷うと思いますが、若干ですが電気書院の方が人気があるようです。
時間的に余裕があればオーム社の過去問題集と併用するのも良いと思います。
電気書院の問題集は、年度毎ではなく科目毎に各問題をまとめているのがとても使いやすいです。解説も詳しくておすすめです。
種類 | 評価 |
過去問題集 |
電気書院と同じく過去10年分を掲載したオーム社の過去問題集です。解説も詳しいので、この問題集を繰り返し解けば合格できます。
問題の収録が電気書院がが科目毎であるのに対し、オーム社は年度毎にまとめられています。同じ科目を集中して学習するには不向きです。
ただし、問題と解答が分かれないので使い勝手はあまり良くありません。
試験の主催団体である省エネルギーセンターからも過去問題集は出版されていますが、字が多く分かりづらいため利用している人は少ないようです。
種類 | 評価 |
過去問題集 |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
【試験】年1回8月の第1土曜日
【研修】12月中旬
お申し込み
【試験】5月中旬~6月上旬
【研修】10月上旬~下旬
受験資格
【エネルギー管理士試験】特にありません。
【エネルギー管理研修】研修修了までに実務経験3年以上必要。
※試験の場合、試験合格後に免状を申請するためには実務経験が1年以上必要。
試験会場
試験:北海道、宮城県、東京都、愛知県、富山県、大阪府、広島県、香川県、福岡県、沖縄県
研修:仙台市、東京都、名古屋市、大阪市、広島市、福岡市
受験料
試験:17,000円
認定研修:70,000円
※前年度の修了試験課目合格者が不合格の課目についてのみ研修を受けようとする場合は、50,000 円となります。
全て非課税
試験内容
【エネルギー管理士試験】
筆記試験(マークシート方式)がおこなわれます。
[必須基礎課目]
- エネルギー総合管理及び法規
[選択専門課目]熱分野または電気分野のいずれかを選択
①熱分野
- 熱と流体の流れの基礎(熱力学の基礎、流体工学の基礎、電熱工学の基礎)
- 燃料と燃焼(燃料および燃焼管理、燃焼計算)
- 熱利用設備及びその管理(計測および制御、他)
②電気分野
- 電気の基礎(電気および電子理論、自動制御および情報処理、電気計測)
- 電気設備及び機器(工場配電、電気機器)
- 電力応用(電動力応用、他)
※課目合格制度
各課目において合格基準(各課目とも60%)に達した場合「課目合格」となり、4課目合格すればエネルギー管理士試験に合格したことになります。一度に全ての課目において合格点を取る必要はありません。
課目合格は、その試験が行われた年の初めから3年以内に受験する場合、その課目は免除になります。合格した年の初めから3年を過ぎるとその課目の合格は無効になります。
【エネルギー管理研修】
研修は7日間おこなわれます。
修了試験の内容はエネルギー管理士試験と同じです。
合格基準
各課目60%以上の得点で課目合格、4課目に合格すれば全課目合格となります。
合格発表
9月中旬ごろ
主催者情報
エネルギー管理士試験に関する詳しい情報は省エネルギーセンター / エネルギー管理士をご覧ください。