試験の概要
「士」とついても完全な民間検定、ADRといってもできることは限定的。
種類 | 学習期間 | 難易度 | 合格率 |
---|---|---|---|
民間資格 |
3か月程度 |
やや易しい |
65% |
活かし方 | 取得費用 | 受験資格 | おすすめ度 |
---|---|---|---|
自己満足 |
5~10万円 |
誰でも受験可 |
※合格に必要な学習期間は、事前の知識でかなり差がでます。
最終更新日:2022/12/10
敷金診断士とは
「士」となっていますから国家資格と誤解する人も多いようですが、日本住宅性能検査協会が認定する民間の検定試験です。
敷金診断士は、第三者としての立場から賃貸物件の適正な原状回復費の査定をおこない、入居者に敷金が法令に基づいて正しく返還されるようお手伝いします。
ただし、単なる民間の検定試験にすぎませんから、特別にできるできることはありません。「お手伝い」といってもできることは限られています。
主催者サイト:敷金診断士 - 日本住宅性能検査協会
敷金に関するトラブルは年間15,000件以上!
アパートやマンションなどの賃貸物件を借りている人にとって、退去時の原状回復費用や敷金・礼金の返還については気になるところです。
何事もなく部屋を引き渡して、預けた敷金が全額戻ってくれば問題ないのですが、過大な修繕費用を差し引かれ、手元に戻ってくるお金がほんのわずかであればトラブルにつながります。
現に年間15,000件もの相談が国民生活センターに寄せられていますから、円満に全額返金とはほど遠いようです。
ADR調停人の基礎資格とは言え、できることは限定的
敷金診断士の主催者である日本住宅性能検査協会のホームページを見ると、しきりに「調停人基礎資格」として、法務大臣認証ADR調停人の基礎資格の認定を受けたことをPRしています。
では、一体これがどういう制度なのか?簡単に説明すると・・・
争い事が生じた場合、法律知識を備えた一定の専門家が間に入って(調停)、裁判などをせずに話し合いで手っ取り早く解決しましょう!という制度です。
これだけで判断すると、敷金診断士は弁護士のような業務もできるんだ!って早とちりしてしまいそうですが、そうではありません。
敷金診断士は、弁護士のようにお金をもらって代理人として交渉はできません。あくまでも中立的な立場での「交渉の提案」です。退去時の立会いをしたとしても、適正な原状回復費の査定をするまでしかできません。
仮に、大家さんが敷金診断士の提案を断ったらそこまでです。敷金診断士はそれ以上何もできません。
話しが揉めて、敷金診断士が代理で交渉しようものなら非弁行為となって弁護士法違反になります。お金をもらって法律相談に応じることもできません。
敷金返還のトラブルは、話が揉めると裁判になるケースもあります。裁判は大げさと思われるかもしれませんが、少額訴訟であれば1人でも簡単に低料金でできるので決して珍しいケースではありません。
その際、敷金診断士は、法律に関わる業務で報酬を得ることは非弁行為となるので裁判に直接的に関われません。
敷金診断士は民間の検定試験です。できる業務の内容は非常に限定的です。ADR調停人と言っても、実は大したモノじゃないんです。受講生募集の単なる宣伝文句にすぎません。
役に立つ資格なのか?
敷金診断士は、法律の裏付けのない民間の資格なので法的な拘束力などありません。
就職や転職にはほとんど役に立ちませんが、不動産の仲介業へ就職するのであれば、多少役立つ機会はあるでしょう。
ちなみに敷金診断士とは民間の検定試験だと前述しましたが、正確に言うと、名前が商標登録として国に認められているだけです。
国家資格でも公的な資格でも何でもなく、誰もが勝手に敷金診断士の名称を利用できないだけです。
なんというか、資格名称の使用権利の販売事業のような感じです。
敷金診断士の資格を取得して独立すればどれくらいの収入を得られるのか?と気にしている人もいますが、おそらくそれ以前の問題だと思います。
法律で定められた独占業務も存在しないので、この資格だけで仕事して収入を得られるとはちょっと考えられないです。
管理会社や大家さんと交渉した場合、法律に触れる(非弁行為)のではないか・・・資格試験の勉強をはじめる前に、そのあたりから考えた方がいいです。
将来性を徹底研究
この資格の活かし方
この資格単独で仕事に活かすのではなく、例えば他の国家資格と合わせて取得するのがおすすめです。
例えば、宅地建物取引士、行政書士などです。これらの資格であれば、法律で定められた独占業務があるので、敷金診断士の学習で得た知識を活かせます。
宅地建物取引士の有資格者が、名刺に「敷金診断士」と印刷すれば、顧客からの信頼を得て仕事い活かせるでしょう。ただし、大家さんからはイヤがられるかもしれません。
敷金診断士に査定を依頼したら、敷金が多く戻ってきたという事例もあります。いずれにせよ、他の知識があって活かせる資格です。
宅地建物取引士と比べるとかなり簡単
敷金診断士の難易度ですが、同じ不動産系の宅地建物取引士、管理業務主任者、マンション管理士に比べたらかなり簡単です。
関連資格:管理業務主任者とは、マンション管理士とは
合格率は60~70%ほどで、民法や不動産の基礎知識があれば合格できます。
そもそも宅地建物取引士が、不動産の取引に重点を置いている資格であるのに対し、敷金診断士は建物自体の評価に重点を置いています。
宅建の試験範囲に含まれない賃貸物件の標準賃貸借契約書に関する知識、国土交通省のガイドライン等などについて学習しなければなりません。
敷金診断士と宅地建物取引士とでは、学習する内容が違いますが、宅地建物取引士の方が断然難しいです。
敷金・礼金は意外とアッサリ全額戻ってきます
素人が敷金の全額返還の交渉をしても、難しくて無理・・・なんて思ってませんか?
敷金を預けているため管理会社や大家に主導権を握られがちですが、交渉次第で実は簡単に取り戻せます。
あらかじめ敷金返還に関する法律や事例、国土交通省のガイドラインを勉強しておいて、正論をぶつければ、意外とすんなりと敷金は全額戻ってきます。
マンションやアパートに普通に生活していても、どうしても避けられない細かな傷や汚れなどは残ります。いつまでも新品に近い状態で使い続けるのは無理です。
金属であれば錆びますし、プラスチックであればひび割れます。床や壁は傷は付きますし、壁紙は剥がれます。これは経年劣化で使用者に責任はありません。原状回復の義務など存在しません。
こういったケースでは入居者は修繕義務を負わないと国土交通省の公示するガイドラインに明記されています。2020年施行の改正民法でも明文化されています。
参考:住宅:「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について - 国土交通省
原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(pdf)
普通の人はこういった基準を知りません。管理会社や大家さんは相手(借りてる人)が無知だと思って敷金から引けるだけ引きます。文句や要望を言わなければ、交渉すらしてくれません。
ネットで調べれば、ガイドライン以外にも敷金を全額取り戻すための方法について書かれたサイトはいくらでも出てきます。
例えば「敷金 全額 取り戻す 方法・・・」、こんな感じで検索してみてください。
最悪、小額訴訟に持ち込むという覚悟で交渉してください。前述の通り少額訴訟は1人でもできますし、費用も1,000~6,000円程度でできます。訴状の雛形もダウンロードして自分で記入できます。
管理会社や大家さんも、こちらが正論をぶつければ簡単に折れます。それに訴訟なども面倒です。
敷金は預けただけのお金です。元は自分のお金です。たくさん取り戻そうと思えば真剣になれるはずです。
現に、当サイト運営者も、友人・知人にアドバイスして、敷金を全額取り戻すお手伝いを何度もしています。
敷金診断士を利用するくらいなら、自分でガイドライン、判例、法令・条例を学ぶほうが有益で確実です。半日もあれば相当程度は理論武装できるはずです。
万が一揉めるようであれば、弁護士の無料相談や法テラスを利用するのもよいでしょう。
敷金診断士と敷金鑑定士の違い
敷金鑑定士と敷金診断士の違いについてですが、どちらも民間の試験であって大した違いはないです。
法律による裏付けのない商標登録された名称にすぎないので、業務としてできる内容に限界があります。ともにアドバイスや査定といった程度しかできません。
どちらがおすすめか?もちろんどちらもおすすめしません。
言い方が悪いですけど、どちらも目○○鼻○○です。
原状回復診断士、住宅診断士みたいなのも同じです。意味ない民間資格です。
取得するのも維持するのもお金がかかる!
敷金診断士のテキスト・問題集は市販されていません。協会指定サイトで購入すると3,850円、これはまぁ高すぎはしません。
受験手数は7,800円です。これもまぁ、安くはないですが妥当でしょう。
試験に合格後、「敷金診断士」と名乗るためには認定を受けなければなりません。そのために、合格後登録講習を必ず受講します。
この講習料は18,000円(テキスト代込み)、そして登録手数料15,000円が必要となります。登録手数料とは、名簿に記入するための費用です。
段々高くなってきましたね!
もちろん免許証サイズの顔写真入りの認定証ももらえます。カッコいい?
そして、登録の有効期間は2年間です。2年毎に更新が必要となって、登録更新手数料が5,000円!
資格マニアが簡単に取得して、認定証を持っているだけでは高すぎますね。
※金額は2022年12月現在です。
主催者サイト:資格認定の流れ - 敷金診断士
合格するには
敷金診断士の試験問題は持ち帰りができません。テキストや過去問題集、予想問題集など市販されておらず、公式テキスト&DVDが18,000円で販売されています。テキストだけなら3,500円です。
テキスト購入が受験には必須とはなっていないので、直近で宅地建物取引士の学習をした経験がある人なら、何も購入しなくても合格できます。
テキスト、教材については下記を参照してください。
宅建に合格できるレベルであれば敷金診断士は十分得点できます。基本的には、宅建のための勉強をして、宅建の試験が終わってから敷金診断士独自の問題を学習すれば間に合います。
敷金診断士独自の問題もありますが、ボリュームは少なめです。賃貸契約書と、国土交通省の原状回復ガイドラインなどです。
試験は、全国約200ヵ所のCBT試験会場にて実施します。CBT試験とは、パソコンの画面に問題が出題される方式です。
合格に必要な学習期間は3か月程度だと思われますが、宅地建物取引士試験の合格者であればプラス10時間あるいは何も勉強せずとも合格できます。
事前の知識によってかなり難易度は違ってきます。
おすすめの講座
試験情報
試験日 |
お申込み |
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年6回、偶数月に実施 |
主催者サイトより申込みます。 |
受験資格 |
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受験資格の制限は一切なく、どなたでも受験できます。 |
試験内容 |
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【試験地】全国200箇所のCBT試験会場 |
試験に関する詳しい情報は試験実施案内 - 敷金診断士をご覧ください。