環境計量士とは?試験の難易度や将来性・仕事内容など
種類 | 難易度 | 合格率 |
国家資格 | 難しい | 15~18% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | ~2万円 | 1年程度 |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
評価アップ | 102件 |
- 難易度や合格率は、濃度/騒音・振動関係で違います。
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年5月31日に集計。
環境計量士とは大気や水中の汚染物質の濃度、騒音や振動の大きさなどを適正に計量することを目的とした国家資格です。
化学系の資格の中では難易度は高く合格率は20%以下です。
経験者優遇の業界ですが、学生や未経験者でも取得すれば就職や転職に役立つメリットがあります。
環境計量士と一般計量士の違いも解説しています。参考にしてください。
環境計量士とは
一般計量士と環境計量士に分かれる
計量士という国家資格の制度は、計量法という国の法律に基づき、取引や証明のために正しい計量を行う目的で1953年に始まりました。
計量法とは、『はかり』を用いて取引を行う際の統一基準を定め、公平に取引が行われることを目的とした法律です。
その後、1993年(平成5年)に計量法が改正され、計量士の資格は一般計量士と新たに誕生した環境計量士に区分されました。
一般計量士とは「長さ計」や「温度計」「体積計」「質量計」といったモノの尺度を計る計量機器が正確に動いているかを確認する国家資格です。
一方、環境計量士とは「環境」という文字がつく通り大気や水中の汚染物質の濃度、騒音や振動の大きさなどを適正に計量することを目的とした国家資格です。
関連資格:一般計量士とは
お互いに『計る』という目的は同じですが、一般計量士は物の長さや重さなどを正確に計量するための資格であるのに対し、環境計量士は水質や土壌、大気、騒音などを計量する資格であるという違いがあります。
※ここでは主に環境計量士について紹介いたします。一般計量士については別ベージにて紹介していますので、違いについてはそちらもご覧ください。
環境計量士は(濃度)と(騒音・振動)の2分野
環境計量士の資格は、環境計量士(濃度)と環境計量士(騒音・振動)の2分野に分かれています。
(濃度)はおもに大気や水質について、(騒音・振動)は騒音と振動について計量を行います。
例えば、(濃度)の職務を担当する環境計量士は、工場から排出されるばい煙や環境大気中の有害物質、悪臭物質等を測定します。
工場・生活排水などによる汚濁物質排出状況、河川・湖沼・海域の汚濁状況、工場跡地等の土壌汚染状況なども測定します。
(騒音・振動)の職務を担当する環境計量士は、プレス、送風機等の騒音源を有する工場や建設工事、道路(自動車)、鉄道、航空機の騒音をはじめ一般環境等での騒音を測定します。
また、プレス、鍛造機等の振動源を有する工場、建設工事、道路(自動車)、鉄道等の人体への影響を評価するための振動なども測定します。
環境計量士は、環境に関する「濃度」や「騒音・振動」について計量し、分析・測定結果を証明する文書として計量証明書を発行します。
その際は、法律の規定に従って環境計量士の押印が義務付けられています。
役に立つ資格なのか?
有資格者の求人は少ない
環境計量士が必要とされるのは、都道府県の登録を受けた環境計量証明事業所という分析会社などです。
そこでは河川・公共施設等の水質、大気、土壌等の分析・測定を行います。
会社によっては常に人材が不足しているので、求人サイトやハローワークなどで探せばそれなりに求人情報は見つけられます。
ただし、有資格者だからと言って就職・転職が必ずしも有利にならないという一面もあります。
それは、環境計量士は1つの事業所に1名必要な必置資格なので、多くの会社では有資格者が1名いれば足りるからです。
環境計量士は、国家試験に合格後、現場での実務経験を規定の年数積んではじめて正式な環境計量士として登録できますが、社内に登録していない有資格者が複数名いたりします。
経験者優遇の業界
求人情報を見ても、環境計量士については「資格保持者は優遇」「資格があれば尚可」という内容が多く、むしろ「業務の経験者歓迎」となっている求人の方が目立ちます。
実務経験があって、さらに資格を持っていれば就職・転職に役立ちますが、経験者でなければあまり役に立たない資格です。
特に30代半ば以降であれば資格だけで就職・転職はほぼできません。
その年代であれば管理職候補としての経験を問われます。
とは言え難易度の高い国家資格です。資格は化学などの知識を持っている証明につながります。
資格を取るまでの学習で得た知識が業務に役立ちます。
環境分析をしている会社の求人情報を詳しく見ると、未経験者でも採用している企業もあります。
そういった会社であれば有資格者は有利です。優先的に採用されるでしょう。
将来性について徹底研究
就活にも活かせる
一般的な人であれば環境調査という業種はあまり馴染みがないですが、民間の環境調査会社は多く存在します。
例えば、環境分析、環境コンサルティング、環境リサーチのように「環境」や「分析」に類する文字が入る会社などです。従業員5名以下の小規模事業所から、20~80名の事業所まで様々です。
また、大手の製造業、電力会社やガス会社などには、社内に分析する部門があったり、専門の子会社を作って計量の業務をしています。そこで環境計量士としての仕事に携わっている人もいます。
企業としてはできるだけ知識や技術を持っている人を採用したいので、学生のうちにこの資格を取得すれば就活に活かせます。
資格を持っていれば基本給に加えて資格手当が支給される会社もあります。
環境計量士の資格は、将来責任ある立場にステップアップする際にも活かせます。
さらに、環境計量士(濃度)を取得すれば、作業環境測定士の資格が無試験で取得できるメリットもあります(ただし、試験免除講習の受講が必要)。
危険物取扱者の甲種もあるとさらに活かせます。
大学程度の化学の基本的な知識が必要
環境計量士(濃度)の試験は大学理系の教養課程くらいのレベルです。
化学系の資格としてはかなり難易度は高いので、それなりに勉強しなければ合格できません。
主に分析化学の領域の試験で、有機化学、無機化学、物理化学など大学で習う化学の知識が一通り出題されます。
高校レベルでの化学の知識ではおそらく厳しいです。
必要があれば一度高校レベルまで戻って勉強しましょう。大学入試ほど細かく深く勉強する必要はないですが広く浅く知識が必要です。
確実に合格するには、大学教養レベルの化学を理解していて大学で教わる程度の分析化学の知識が身についていなければなりません。
なお、物理が必要なのは環境計量士(騒音・振動)で、高校レベルでの物理が理解できていれば独学で合格できます。
環境計量士(濃度)でしたら物理は必要ありません。
関連資格:化学分析技能士とは
現場は既に価格崩壊、派遣やアルバイトも多い
環境分析は法律で決められた試験法で行い、国の規格に収まっているかどうかを確認するのが目的です。
分析会社は小企業から大手企業まで様々ですが、測定方法が確立されていれば原則どこが実施しても同じ結果になるはずです。
分析を依頼する会社は、試験ができる会社ならどこに依頼しても同じなので、経費削減のためにより安いところに頼みます。入札をすれば最も安い金額を提示した分析会社が落札します。
仕事が潤沢になければ、人件費を抑えたブラックとも言えそうな零細会社が赤字覚悟で仕事をとります。
するとどうなるか・・・次第に価格崩壊へとつながります。この状況はバブル崩壊時くらいからずっと続いています。
分析会社では人件費がかなりの比率を占めているため、どこも派遣社員やアルバイトを使って経費を削減しています。
事実、分析会社は派遣社員やアルバイトなどの非正規社員が多いという集計結果も出ています。
参考資料:2020年経済構造実態調査報告書 二次集計結果【乙調査編】計量証明業(pdf)
※(15ページの「第1図 従業者の雇用形態別構成比」参照、分類は計量証明業)
従業員に占める正社員の割合は74.1%です。これは対事業所サービス業21業種の中でも12番めの低さです。
測定結果を管理して、分析・測定結果を証明するにはそれなりの経験も知識も必要ですが、現場へ出てサンプルを採取したり、測定機を操作するのは無資格者でも問題なくできます。
計量や測定は、基本的に分析機器がしてくれます。手順が決まっているルーチン的な作業ならば、化学の知識がなくてもアルバイトでもできます。
環境分析で実際に分析を行うのは、多くは派遣社員やアルバイトなどの非正規社員です。
分析会社に入社して、経験を積んで管理職としてスキルアップするには、「分析ができる」というだけではなく、例えば調査全般の知識や危険物に関する知識が必要かもしれません。
合格するには
研修を受講して取得する手段も
環境計量士の資格を取得するには以下の2通りの方法があります。
- 国家試験コース:環境計量士の国家資格に合格する
- 資格認定コース:所定の研修課程(教習)を修了する
計量士(濃度、騒音振動、一般)のいずれかに合格すれば他の試験区分を受験するときに法規と管理の2科目が免除されます。登録していなくても大丈夫です。
資格認定コースとは、計量研修センターで行う一般計量教習(共通)を受講後に、特別教習(一般、環境/濃度関係、環境/騒音・振動関係)を受講し計量士を目指す研修課程です。
修了すれば国家試験を受ける必要はありません。
計量士資格認定コースは、国立研究開発法人産業技術総合研究所計量研修センターが開催しています。
受講するには、まず入所試験に合格しなければなりません。
ちなみに、入所試験の合格率、修了率ともほぼ100%だと言われていて、研修を受講して取得する方が国家試験を受験するより圧倒的に簡単です。
入所試験の合格率などは公表されていませんが、難易度としては高校卒業レベルです。
試験科目は数学、物理、時事常識を含む一般常識の3科目です。
定員数(40名)が決まっているため、受検者数が少ない年は入合格しやすいようです。
入所定員を超えるときは不合格者が出ます。
主催者サイト:教習・講習・研修の概要説明及び費用:NMIJ
国家試験に合格後は、環境計量講習(実質的に濃度は4日間、騒音・振動関係は5日間)を修了するか、1年間の実務経験を経てはじめて環境計量士として経済産業大臣へ登録ができます。
主催者サイト:教習・講習・研修の概要説明及び費用:NMIJ
研修課程を修了した場合は2年間の実務経験を積み、計量行政審議会に認められて経済産業大臣へ登録します。
余談ですが、環境計量士の資格取得を目指す専門学校もあります。
文系出身で研修課程の入所試験も合格できないようであれば専門学校へ通ってじっくり勉強する手段もあります。
もちろんその場合は国家試験に合格しなければなりません。
難関な国家試験、1年以上の学習期間は必要
環境計量士は難関な試験です。簡単には合格できません。
大学程度の基本的な知識が必要で、合格するのに1~2年はかかります。
多くの人は仕事をしながらスキルアップのために取得します。
独学でも十分合格は可能です。
ただし、分析機器を扱った経験が全くないと測定方法などを理解するのは難しいでしょう。
過去問題集をひたすら繰り返し、理論はともかく解き方を覚えなければなりません。
問題集を解いて解説を暗記するくらいひたすら読み、分からない点はテキストに戻る、その繰り返しです。
法規(計量法)や統計 (誤差論など) も出題されるので、過去問題集を解いて十分な対策をする必要があります。
テキスト・問題集・参考書
おすすめテキスト・基本書
環境計量士(濃度関係)の試験対策本です。
重要ポイントに絞ったテキストと、最新の過去問題3年分を1冊にまとまっています。
これから基礎知識を付けて、本格的に学習したいと考えている人向けのテキストです。
環境計量士の試験に合格するには、化学分野の基礎知識が不可欠です。
入門用として分かりやすく書かれています。じっくり基礎を固めた上で、過去問を解けば理解が進みます。
ただしこれはあくまでも入門用のテキストです。基礎的な内容なのでこれ一冊では合格できません。
学習の中心は過去問題集ですが、もうすこし詳しいテキストが一冊あった方が良いでしょう。
種類 | 評価 |
テキスト&過去問題集 |
おすすめ問題集
多くの受験生が利用しているオーム社の過去問題集です。
問題を解きながら学習するのに最適です。特に、法規・統計についてはこれ一冊で大丈夫です。
ある程度の基礎知識があれば、繰り返し学習して、これだけで合格できます。
参考書代を節約したい方はこの問題集だけでも良いでしょう。
種類 | 評価 |
過去問題集 |
おすすめ参考書
統計学の基礎から応用まで、マンガと文章と例題で分かりやすい解説した入門書です。
この分野は、あまり詳しい参考書が少ないようです。そのため苦手という人が多いようですが、まずは最初に読む本としておすすめです。身近な題材を例にしていて分かりやすく、楽に読み終えられます。
マンガですが、統計学に特化しており、評判は良いです。他にも「回帰分析編」「因子分析編」「ベイズ統計学」などがあります。
種類 | 評価 |
参考書(漫画) |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
12月中旬の日曜日
お申し込み
7月上旬~8月上旬
受験資格
年齢、学歴等に制限はなく誰でも受験できます。
試験会場
北海道、東北、関東、中部、近畿、中国、四国、九州、沖縄
受験料
8,500円
試験内容
試験内容:マークシート記述式(5択)
【濃度関係】
- 環境関係法規及び化学に関する基礎知識
- 化学分析概論及び濃度の計量
- 計量関係法規
- 計量管理概論
【騒音・振動関係】
- 環境関係法規及び物理に関する基礎知識
- 音響・振動概論並びに音圧レベル及び振動加速度レベルの計量
- 計量関係法規
- 計量管理概論騒音
合格基準
毎年若干変動しますが、共通問題と専門問題ともにほぼ60%以上で合格です。
主催者情報
試験に関する詳しい情報は資格・試験 (METI/経済産業省)をご覧ください。
※こちらに随時最新の試験情報が掲載されます。