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旧サイト名:本当に役立つ資格、全く役立たない資格

【海事代理士】50%の合格率よりも実際の難易度はもっと高い!仕事内容や勉強方法などを解説

航行する白い客船

マイナーな試験なのでテキストや参考書が少なく勉強するのも一苦労

種類難易度合格率
国家資格難しい55%
受験資格取得費用勉強時間
誰でも受験可2~5万円1年程度
活かし方全国の求人数おすすめ度
独立・開業2件
  • 合格率は筆記試験についてです。口述試験の合格率は60~98%ほどです。
  • 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年3月25日に集計しました。

毎年の受験者数が300人前後のマイナーな国家資格です。

港湾関係の仕事をしている人であれば取得する価値はありますが、全く関係ない人にはおすすめしません。

合格率は50%以上と難易度は低く感じられますが、受験生の多くは司法書士や行政書士、社会保険労務士の有資格者です。

初学者にとっては数字以上に難しく感じられるはずです。

行政書士や社会保険労務士として活躍している人が業務の幅を広げるために取得すケースが多いようです。

目次

海事代理士とは

港に立つ中年紳士

船舶の登記その他の手続きを船主の依頼を受けて代行

船舶は家や土地のような財産と同じで、造船し航行させる際には、所有者・使用者を明らかにするために「登記(船舶登記)」をしなければなりません。

また、登記とは別に船舶の「登録」もしなければなりません。

小型船舶は一部の船舶を除き、登録を受けなければ航行させてはならないことになっています。

海事代理士は、海運業者や造船業者あるいは船主などの個人から依頼を受けて、船舶の登記や登録・検査申請などに関する書類を作成し、国土交通省や都道府県、市町村などの行政機関に対する申請手続きを代行します。

一般の人にとっては普段あまり馴染みがない職業ですが、海運業界で働く人や船舶を所有している人にとってはお世話になる機会も多い存在です。

海事代理士は、海事代理士法という法律により規定された国家資格で「海の法律家」とも呼ばれています。

関連団体:一般社団法人日本海事代理士会

他の士業と兼業するケースが多い

海事代理士の国家試験合格後、地方運輸局に登録すれば海事代理士と名乗って事務所を開けます。

しかし現実的には、海事代理士の資格だけで開業している人はごくわずかで、司法書士、行政書士、社会保険労務士などと兼業して事務所を開いている人がほとんどです。

最も多いのは行政書士との兼業です。

海事代理士のホームページを見ると、その多くが行政書士との兼業であることがわかります。

もちろん海事代理士専門の法律事務所もありますが、安定的に仕事量を確保できるのはごく一部の海運・造船業界に太い人脈を持った人に限られると言われています。

海事代理士を目指すのであれば、まずは行政書士や社会保険労務士の資格を取って、働きながらダブルライセンスとして海事代理士の資格も取得して業務の範囲を広げるというのがおすすめです。

行政書士や司法書士に合格していれば、既に憲法・民法に関して十分な知識があるので、海事代理士の試験は合格しやすいというメリットもあります。

役に立つ資格なのか?

あくまでも独立するための国家資格

港湾関係の仕事とは全く別の仕事をしている人がこの資格を取得して独立してもうまくいかないようです。

前述の通り、現在港湾関係の仕事をしているか、既に行政書士や社会保険労務士として活躍している人が業務の幅を広げるために取得すケースがほとんどです。

海事代理士は、就職や転職に活かす資格ではありません。

あくまでも独立して事務所を開くための資格です。

そのため、試験に合格して登録を行っても港湾関係の会社へ就職してそこで海事代理士として働くことはできません。

ちなみに、海事代理士に関する求人はほとんど見つかりません。全国で探してもほぼゼロです。

海事代理士専門の事務所もありますが、とにかく登録者数が少ないうえに小規模な個人事務所が多いため、まず求人は見つかりません。

難易度が高くかなり専門的な知識が必要となる試験なので、海運、港湾の会社に就職や転職する際に履歴書に書いてアピールできるメリットがあります。

将来性について徹底研究

港に停泊する大型船

この資格の活かし方

海事代理士試験の合格者は毎年100名~150名前後です。

行政書士試験の合格者は毎年4,000~5,000名ですから大幅な開きがあります。

それだけ海事代理士の需要は少ないということです。

海事代理士の主となる業務内容は船舶の登記・登録ですが、これは司法書士や行政書士も行うことができるため、海事代理士のみで請け負う仕事の量はさほど多くありません。

海事代理士の資格を活かすには、やはり行政書士司法書士社会保険労務士などの資格を併せて取得し、仕事の幅を広げる努力が必要になります。

他士業との関係について

繰り返しになりますが、海事代理士の主となる業務は船舶の登記・登録ですが、これは司法書士や行政書士でも行えます。

例えば、船舶の「登記」に関しては海事代理士のみの独占業務ではなく、司法書士も手続きができる「共管独占業務」と考えられています。

一部の特殊な船舶においては司法書士にしかできない登記もあります。

船舶登記の申請結果に関して不満がある場合に行う審査請求の手続きは司法書士にしかできません。

次に、大型船舶の「登録」に関しては、海事代理士の独占業務とされています。

しかし、総トン数20トン未満の小型船舶の登録・検査その他の手続きについては、海事代理士だけではなく行政書士も代理人として申請できます。

海事代理士は、船員に関する労務、その他の海事許認可などの手続きを代理人として行います。

その際、船舶ごとに制定される船員に関する就業規則の作成は船員法に基づき海事代理士の独占業務とされています。

しかし、同じ海運会社や造船会社であっても陸上勤務者を対象とする就業規則の作成は労働基準法に基づき社会保険労務士の独占業務になります。

船員保険法に定める船員のみに適用される各種社会保険の手続きも社会保険労務士の独占業務です。

船員保険法で定める手続きは海事代理士は申請できません。

その他、海事系の許認可の申請についても行政書士や司法書士の独占業務となっているものもあります。

公表されている合格率以上に難易度は高い!

海事代理士の合格率はほぼ毎年50%前後です。この数字だけを見ると受験生の半分くらいは合格できるので簡単そうに思えます。

しかし、受験生の多くは既に司法書士や行政書士、社会保険労務士の資格を持っている人達です。

もともと受験生のレベルが高いワケです。

その中の50%ですから簡単には合格できません。

海事代理士も行政書士も両方合格している人の意見を聞くと、概ね行政書士の方が難易度が高いという意見のようです。

そのため、行政書士の合格者なら海事代理士の合格率はおそらく50%を超えるはずです。

逆に、他の資格を未受験で海事代理士を受験する人にとってはおそらく50%の合格率以上に難しく感じられるでしょう。

海事代理士になるには

海を背景にカバンを肩にかけて立つ女性

試験は「筆記」と「口述」

この仕事に就くには国家試験である海事代理士試験に合格し、地方運輸局に登録する必要があります。

試験内容は「筆記」と「口述」があり、筆記試験に合格した人、および前年の筆記試験合格者で筆記試験免除の申請をした人が口述試験に進みます。

つまり、筆記試験に一度合格すれば、その年と翌年の2回口述試験のチャンスがあります。

筆記試験の合格率はだいたい50%前後で安定して推移しています。多少の変動はあっても半数程度は合格します。

一方、口述試験の合格率は年度により大きなばらつきがあります。低い時で60%、高い時で90%以上です。

2017年度はなんと98.1%ですから、本人確認程度でほぼ全員口述試験に合格しています。

最終合格率は30~50%です。

筆記試験は過去問からそのまま出題されることも多い

筆記試験は、国家試験には珍しく過去問がそのまま出題されるケースも多いようです。

本試験では、過去問のまま5割くらい出題され、残りは類似問題と新規問題です。

そのため、筆記試験対策としてはとにかく過去問を解きまくって丸暗記です。

船舶に関する知識がない人でも十分合格できますが、海事代理士試験特有の用語がたくさん出てくるので専門的な用語集も勉強には必要です。

しかし、難解な海事用語を完全に覚えたり理解しようとすると時間ばかりかかります。

理解しようとせず、とにかく覚える方が重要です。

それができれば3か月くらいの勉強時間で合格できる人もいます。

もっとも事前知識によって違いはありますが、勉強時間は6か月~1年くらいはみておいた方がいいでしょう。

口述試験が重要!半数近く落とされる年も

海事代理士試験で難しいのは口述試験です。

前述の通り合格率は年度によってばらつきがありますが、半数近く落とされる年もあります。

口述試験では条文にない専門用語で質問されるので、理解していないと全く意味不明です。

筆記試験は、用語の理解は無視してとにかく丸暗記の勉強方法がおすすめでしたが、口述試験は逆です。

筆記試験が終わった時点で頭を切り換えて海事用語を2か月で習得しなければなりません。筆記試験の合格発表が終わってから口述試験に備えていては遅いです。

この点は、海事関係の実務経験者であれば、おそらくほとんど理解できているはずなので有利です。専門用語で質問されても戸惑うこともないでしょう。

マイナーな試験なのでテキストや参考書の種類が少ない!

海事代理士は受験生が300人程度のマイナーな試験なので、テキスト・参考書などは書店に並んでいません。

下記で紹介する「海事代理士合格マニュアル」という過去問本と海事六法が必要です。購入したらひたすら解きまくります。

当然、初学者であれば分からないので、マニュアルの下に「~法~条」などと書いてあるのでそれを海事六法を引いて暗記します。海事六法に記載されていない法令などはネットで検索します。

本試験もほぼ過去問の形式で出題されるので、この勉強方法を全教科繰り返します。この勉強方法しかないです。

口述試験も過去問前提で他に手を広げない方がいいです。

実際に試験員から聞かれた内容について答えます。口述試験は2年続けて合格率が低いことはないようなので、珍問、奇問で万が一落とされたら翌年にかけましょう。

国土交通省のサイトで、筆記試験と口述試験について過去問と模範解答を10年分以上公開しています。

試験対策の参考にしてください。

参照:海事代理士になるには – 国土交通省
※下の方に過去問が掲載されています。

おすすめの通信講座

海事代理士試験用のテキスト・参考書などは書店に並んでいないため、通信講座を受講するのがおすすめです。

通信講座であれば、合格するために必要な教材が最初から一式揃っています。

おすすめは伊藤塾です。

出題20科目の法律知識の習得から、出題形式に合わせた筆記試験対策、口述試験対策までを学習できます。

※こちらから受講申し込みができます。
『海事代理士』になるなら法律資格専門の受験指導校・伊藤塾! 

テキスト・問題集・参考書

おすすめテキスト・基本書

海事代理士の受験テキストや問題集は、行政書士や宅建に比べて種類が少なく、選択の余地がほとんどないと言ってもよいでしょう。

その中で、唯一この本が受験生必携の一冊とも言えます。内容が過去問形式となっていますが、テキストのようにひたすらこれを解いて学習する受験生がほとんどです。

この本だけで合格できた受験生もいます。

種類評価
過去問題集・テキスト

おすすめ問題集

非常に解説がよくできた過去問題集という評判です。

内容がわかりやすく、「海事代理士合格マニュアル」よりおすすめという受験生もいますが、圧倒的に利用している受験生の数が少なく、正直なところ未知数です。

※Amzonでは中古品のみ販売しています。後継となる新刊については公式ホームページよりお買い求めください。

種類評価
過去問題集

過去の口述試験の問題をまとめて掲載しています。

ただ、「海事代理士合格マニュアル」でも同じ内容が載せてあり、国土交通省のホームページに載っている過去問とも同じなのでわざわざ買う必要はありません。

ランク別に重要度などを載せて、各科目の難易度的なものも分析してあります。全体的に見やすい構成になっています。

※現在(2023年11月)Amazonでこの書籍の取扱いはないようです。下記ホームページを参照ください。最新版が販売されています。

海事代理士試験研究センター

種類評価
過去問題集

おすすめ参考書

2024年1月末日現在の海事関係法令および条約195件を、海運/船舶/安全/船員/職員・審判/海上交通/海洋汚染/保安・その他/条約の9項目に分類して掲載しています。

「海技試験」に必要な法令をすべて収録しています。

※口述試験場への持ち込みが認められています。

種類評価
法律書(海事六法)

試験情報

日程・出題内容・合格基準・その他

試験日

筆記試験:9月末頃
口述試験:12月初旬頃

お申し込み

例年8月中

受験資格

学歴、年齢、性別等による制限はありません。どなたでも受験できます。

試験会場

  • 筆記試験:札幌市、仙台市、横浜市、新潟市、名古屋市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、福岡市、那覇市
  • 口述試験:東京都(国土交通省本省)

受験料

6,800円(2023年4月現在)

試験内容

【筆記試験】

  • 一般法律常識(概括的問題):憲法、民法、商法(第3編「海商」のみ対象。)
  • 海事法令(専門的問題):国土交通省設置法、船舶法、船舶安全法、船舶のトン数の測度に関する法律、船員法、船員職業安定法、船舶職員及び小型船舶操縦者法、海上運送法、港湾運送事業法、内航海運業法、港則法、海上交通安全法、造船法、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律、国際航海船舶及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際港湾施設に係る部分を除く。)、領海等における外国船舶の航行に関する法律、船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律及びこれらの法律に基づく命令。

【口述試験】
※本年の筆記試験合格者及び前年の筆記試験合格者のみが対象。

  • 海事法令:「船舶法」、「船舶安全法」、「船員法」、「船舶職員及び小型船舶操縦者法」

※筆記試験及び口述試験の回答に当たり適用すべき法令等は、令和2年4月1日現在において施行されているものとします。
【出題形式】

  • 筆記試験:正誤選択、一問一答の○×式、語群選択、短答式(空欄補充・小記述)。
  • 口述試験:4科目あり、それぞれテーマにそって試験官が一問一答で質問し、それに答える形式。制限時間あり。

合格基準

  • 筆記試験:総合点が60%以上、かつ受験者の平均点以上。
  • 口述試験:60%以上の得点。

合格発表

述試験終了後20日以内に、官報において受験番号を公示し、本人には合格証書を送付。

主催者情報

試験に関する詳しい情報は海事代理士になるには – 国土交通省をご覧ください。

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