全国通訳案内士とは?難しいワリには稼げない国家資格
種類 | 難易度 | 合格率 |
国家資格 | 難関 | 10% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | ~2万円 | — |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
スキルアップ | 0件 |
- 難易度・学習期間は外国語の習熟度によって違い、個人差があるので省略します。
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年8月13日に集計。
日本を訪れる外国人の観光客に対して、日本の観光地を案内したり、旅行中のサポートをするのが全国通訳案内士の仕事です。
難関の国家資格なので学生が合格すれば旅行会社のような企業への就職はかなり有利になるメリットがあります。
全国通訳案内士とは
単なる通訳ではなく幅広い知識が必要
全国通訳案内士は、日本を訪れる外国人の観光客に対して日本の観光地を案内したり、旅行中のサポートをするのが仕事です。
通訳案内士の仕事は、単に通訳するだけではないのが重要なポイントです。
日本の歴史や地理にも精通し、風土や文化などの日本の魅力を外国語で説明しなければなりません。
そのため、外国語の知識だけあれば通訳案内士になれるのではなく、日本の魅力を伝えるための幅広い知識が必要にります。
観光は日本経済にとって重要な産業
日本には、京都・奈良をはじめ、九州や北海道、そして東京や大阪など、外国人にとって魅力的な観光地が点在しています。
そして観光は、日本の経済を活性化させるために極めて重要な成長分野と位置付けられています。
日本政府は「観光立国推進基本法」を施行し、「観光立国の実現」を目指しています。
外国人観光客が増えて外貨を日本に落とせば経済が潤います。
電化製品やITの分野では既に諸外国に太刀打ちできなくなった日本にとって観光分野は世界に対抗できる唯一の経済資源というワケです。
具体的に、外国人観光客を東京オリンピックが開催される2020年までに4000万人、2030年までに6000万人の呼び込むという目標を平成18年12月に掲げました。
※残念ながら新型コロナウィルスの影響で、その計画は見事なまでに打ち砕かれました。
訪日外国人の増加に伴い注目を集めている国家資格が全国通訳案内士です。
全国通訳案内士になるには
以前は、通訳案内士の資格を持っていないとお金をもらって通訳の業務はできませんでした。
ところが、観光客の急激な増加に対応するために平成30年1月に通訳案内士法が改正され、誰でも無資格であってもお金をもらって通訳案内業務ができるようになりました。
ただし、「全国通訳案内士」と名札に印刷して名乗れるのは全国通訳案内士の国家試験に合格し、都道府県の登録を受けた人のみです。
つまり全国通訳案内士とは国が認めた名称独占資格です。
全国通訳案内士は、通訳案内士法において「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする。」と規定されています。
なぜ「全国」と付くのか?
改正前の通訳案内士法では、「通訳案内士」と規定されていましたが、特定の地域(観光地)を限定として活躍できる地域通訳案内士の制度もありました。
その後、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さない人であっても有償で通訳案内業務がおこなえるようになるなど通訳案内士制度が大きく変わりました。
これにより、通訳案内士の名称が地域通訳案内士と区別するために、頭に「全国」と付け「全国通訳案内士」と規定されるようになったんです。
地域通訳案内士の制度は現在も存続しています。
役に立つ資格なのか?
語学力のアピールにはつながる
全国通訳案内士の資格は難関です。堪能な会話でセミプロの実力を有する人であっても何度も試験に落ちます。
試験は、外国語の筆記試験と後述試験がありますが、それだけではなく日本の歴史や地理、日本の産業・経済・政治、文化に関する一般常識も問われます。
いずれも表面的ではなく深い知識が必要なので、社会人であれば2~3年と長期的に学習計画を立てる人も珍しくありません。
通訳案内士の合格率は10%ほどです。難関の国家資格なのでそうそう合格できません。
そのため、学生のうちに合格すれば、旅行会社のような企業への就職はかなり有利になるメリットがあります。
社会人が取得すれば転職の際に履歴書に書いてアピールできます。
旅行業務取扱管理者の資格も取得すれば旅行業界への転職はかなり有利になるはずです。
合格者は英検1級程度の実力がある証明になるので、一般企業へ転職する際も語学力をアピールできます。
難しいワリには役に立たない
通訳案内士の資格は難易度が高いワリには利用価値は低く、率直に申し上げてあまり役に立たない資格です。
通訳案内士専業であれば副業程度の収入しか期待できません。
リタイヤした高齢者や子育てが終わった女性向きです。
もちろん中には、外国人観光客の間で評判が口コミで広がり引っ張りだこの通訳案内士もいます。
大手のホテルで富裕層を相手に専属の通訳案内士として稼いでいる人もいます。
しかし、多くの場合、通訳案内士の仕事だけでは生活は厳しいようです。
通訳案内士の資格だけで生活している人は現実的に少数です。
英語の通訳案内士の平均年収は150万円以下とも100万円以下とも言われています。
企業の会議通訳や翻訳の仕事をしながら通訳案内士の仕事をしている人もいますが、資格を全く活かせない職場・職業に就いている人が圧倒的多数です。
将来性について徹底研究
学生が目指すのであれば英検かTOEIC
通訳案内士は就職や転職を有利にするための資格とも違います。
仮に学生であれば、通訳案内士の国家資格を取得するよりも英検準1級やTOEICのハイスコアを目指して就活に活かす方が現実的です。
英検なら年に3回試験を実施しています。実力に合わせて2級から取得して最終的に準1級を狙うのがいいでしょう。
TOEICなら年に10回程度試験を開催しています。合否判定ではなくスコアで実力が評価されるので、そのままスコアを履歴書に書いてPRできます。
英語力をPRしたいのであれば、学生が通訳案内士の資格に挑戦するのはあまりおすすめできません。
通訳案内士だけで生活するには相当な覚悟が必要
通訳案内士の資格さえあれば独立して生活していけるものでもありません。
登録しても仕事の依頼なんてほとんど来ません。
資格は「外国語で観光案内ができるスキルを国が証明しています」というだけです。
そのスキルを使ってお金を稼げるかどうかは別問題です。
ガイド役として話しているだけなら楽ですが、日本について何も知らない外国人が矢継ぎ早に日本について次から次への質問してきます。
「日本の人口は何人くらい?」から始まって、「神社とお寺の違いは?」「天皇と将軍とどう違うの?」「どうして日本は地震が多いのか」「渋谷のスクランブル交差点はどうして・・・」「日本人はなんでみんなマスクをしているの?」そういった質問に笑顔で即座に返答しなければなりません。
つまり、その人の教養も試されるので、日々勉強・修行の連続です。
英語だけではなく中国語やフランス語など複数語を話せる人も多くいます。
収入は人それぞれですが、やはり努力している人と努力を惜しむ人とでは差が出てきます。
案内する前日に時間があれば、下見に行って予習をしておくのは当然です。
独立すれば、医療保険も年金保険も自己負担、退職金もボーナスも出ません。
季節によって仕事の量も全然違います。現実は厳しい世界です。
さらに、外国人相手に無料で観光ガイドをするボランティアも増えています。
大学生のサークル活動、地元の敬老会的な団体、高校生や中学生・小学生などです。副業感覚でガイドをしている人も大勢います。
そりゃ無資格であってもタダで案内してくれるのであれば太刀打ちできません。
通訳案内士として独立・・・相当厳しいようです。
合格するには
日本の歴史、地理、一般常識についても問われる
全国通訳案内士の試験の難易度としてはやはり難関と言ってよいでしょう。
難易度の判断基準はやはり語学力です。
仮に英語であれば、合格するのに必要な英語力は英検1級レベルです。
難しいと言えば難しいですが、英検1級レベルの実力があれば超難関というほどでもありません。
合格者の3分の1ぐらいは帰国子女や海外長期勤務経験者ですが、受験生の多くは普通の日本国内生活者です。
合格するにはまず何よりも語学力が必要です。
英語であれば中学生(小学生)の頃からコツコツと勉強してきた実力が試されます。
英語で話せて表現できるのが前提の試験です。
さらに、日本の歴史、地理、一般常識についても学習しなければなりません。
これが全国通訳案内士の試験の特徴です。
試験は1次と2次、おもてなしの心も問われる
外国語は、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語のいずれかを選びます。
試験は1次と2次に分かれます。
いずれも日本文化や時事的な話題について外国語で説明する問題が出題されます。
1次試験は、外国語による記述式またはマークシートによる筆記試験です。
合格率が15%~30%と低く、難易度は高く最大の難関です。
過去問題集を解きながら出題傾向をつかみ、日頃からできるだけ多く外国語の記事を読んでおくことが重要です。
2次試験は、持ち時間10分程度の口述試験(個人面接)です。
面接担当者が複数なので誰しも緊張します。
通訳案内士として、実務で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力について判定します。
語学力に加え、ガイドとしてのホスピタリティ、つまり「おもてなしの心」なども評価項目になるので、その点は注意が必要です。
全国通訳案内士と比べて英検はどれくらいのレベルか
英検2級レベルからスタートしたら合格までに相当年数がかかります。
5~10年以上になるかもしれません。少なくとも準1級がスタートラインです。
英検準1級レベルであっても1年で合格はほぼ無理です。猛勉強しても数年かかります。
英検1級レベルなら多くの人はストレートで合格します。2次試験もかなりの合格率です。
つまり、英検1級以外では合格までに3~4年あるいはそれ以上は学習期間が必要です。
試験自体は以前と比べると合格基準を引き下げているようで、少しは合格しやすくなっています。
英検1級でないと1次試験の英語が免除されませんでしたが、今ではTOEIC840点でも免除されます。
国の政策として、通訳案内士の数を増やそうというのが理由です。
誇大広告で生徒を集める予備校には要注意
高額な授業料で受講生を集めている全国通訳案内士試験対策予備校には注意してください!
「英検2級以上の人が対象」と言って生徒を集めている予備校は特に要注意です。
結果的に数年間通うことになり、しかも合格できず数百万円の受講料を支払って終わります。
「1年間通って猛勉強すれば受かるだろう」などという考えは甘すぎます。信じてはいけません。
「スクールが合格まで徹底的にサポートします」という言葉に乗せられてはいけません。
営利目的の受講料目当てですから、そりゃお金さえ払えば何年でも付き合ってくれます。
国家試験合格者の実績を水増ししている予備校もあるようです。
合格率や合格者数は根拠なんてなくテキトーです。
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テキスト・問題集・参考書
おすすめテキスト・基本書
通訳案内士の筆記試験は、地理・歴史・一般常識と範囲が広すぎます。まずはとっかかりとして、コンパクトにまとまったテキストから学習をはじめるのがおすすめです。基本的な内容を確認しながら勉強できます。
地図と写真も掲載されているので、観光地をイメージしながら読み進められるのも特徴です。
ただし、細かいところや時代背景までは書かれていないので、さらに詳しく書かれているテキストも並行して利用するのがおすすめです。
試験勉強の仕上げ・基本の確認にも利用できます。
種類 | 評価 |
テキスト&予想問題集 |
おすすめ問題集
毎年多くの合格者を輩出している通訳案内士試験に特化した人気スクールTrue Japan School監修の「全国通訳案内士」合格!対策シリーズです。
全国を網羅し、各県、各地方ごとに要所を押さえて内容がまとまっています。レイアウトが見やすく理解しやすいように工夫されています。
ただし、初版は誤字や部分的な誤りが散見されました。改訂版でどれくらい訂正されているか・・・
種類 | 評価 |
過去問題集 |
おすすめ参考書
「予約が取れない人気ガイドさん」が書いた名著です。
通訳ガイドとは何か、どうすれば食べて行けるのか、成功の秘訣は…など、プロの通訳ガイドが全てをさらけ出して紹介しています。
国家試験である全国通訳案内士試験に合格し、自治体に登録したけれど、具体的に何をどうしていけばよいか全く分からない、そんな人向けに、仕事の取り方や進め方の注意ポイントが詳しく書かれています。
全国通訳案内士の資格を取って通訳の仕事をしみたい、興味がある、そう考えている人におすすめの一冊です。通訳ガイドで食べていきたいと思っている人は必見です。
種類 | 評価 |
参考書 |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
【筆記試験】8月中旬
【口述試験】12月上旬
お申し込み
5月中旬~6月下旬
受験資格
受験資格の制限はありません。どなたでも受験できます。
試験会場
【筆記試験】
札幌、仙台、東京、名古屋、大阪、広島、福岡、沖縄
【口述試験】
英語・中国語・韓国語:東京、大阪、福岡市
英語・中国語・韓国語以外:東京
受験料
11,700円(税込)
試験内容
【試験科目】
《筆記試験》
- (午前)外国語についての筆記試験:英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語の中から1か国語
- (午後)日本語による筆記試験:日本地理、日本歴史、日本の産業・経済・政治、文化に関する一般常識、通訳案内業の実務
《口述試験》
- 通訳案内の実務(筆記試験で選択した外国語による実践的コミュニケーションを図るための実践的な能力について判定)
口述試験は筆記試験に合格した人のみ受験できます。
【合否判定】
- 筆記試験:科目ごとに合格基準点を設定し、すべての科目について合格基準点に達しているか否かを判定する
- 口述試験:合格基準点(原則として7割)に達しているか否かを判定する
【試験地】受験する外国語により異なります。施行要領をご覧ください。
【一部科目免除】条件に当てはまれば受験者は申請により一部科目が免除となります。
※詳しくは下記をご覧ください。
参照:全国通訳案内士試験ガイドライン(令和3年6月10日改正)|観光庁(pdf)
合格基準
上記主催者サイトでご確認ください。
主催者情報
試験に関する詳しい情報は2023年度全国通訳案内士試験|JNTO(日本政府観光局)をご覧ください。