資格の概要
難しいワリには稼げない国家資格、もはや趣味やボランティアの延長
種類 | 学習期間 | 難易度 | 合格率 |
---|---|---|---|
国家資格 |
--- |
難関 |
10% |
活かし方 | 取得費用 | 受験資格 | おすすめ度 |
---|---|---|---|
スキルアップ |
~2万円 |
誰でも受験可 |
※難易度・学習期間は外国語の習熟度によって違い、個人差があるので省略します。
最終更新日:2022/12/19
全国通訳案内士とは
全国通訳案内士は、日本を訪れる外国人の観光客に対して、日本の観光地を案内したり、旅行中のサポートをするのが仕事です。
単に通訳するだけではないのが重要なポイントです。
日本の歴史や地理にも精通し、風土や文化などの日本の魅力を外国語で説明しなければなりません。
そのため、外国語の知識だけあれば通訳案内士になれるのではなく、日本の魅力を伝えるための幅広い知識が必要にります。
観光は日本経済にとって重要な産業
日本には、京都・奈良をはじめ、九州や北海道、そして東京や大阪など、外国人にとって魅力的な観光地が点在しています。
そして観光は、日本の経済を活性化させるために極めて重要な成長分野と位置付けられています。
外国人観光客が増えて、外貨を日本に落とせば経済が潤います。電化製品やITの分野では既に諸外国に太刀打ちできなくなった日本にとって、観光分野は世界に対抗できる唯一の経済資源というワケです。
日本政府は「観光立国推進基本法」を施行し、「観光立国の実現」を目指しています。具体的に、外国人観光客を東京オリンピックが開催される2020年までに4000万人、2030年までに6000万人の呼び込むという目標を掲げています。
※残念ながら新型コロナウィルスの影響で、その計画は見事なまでに打ち砕かれました。
訪日外国人の増加に伴い、注目を集めている国家資格が全国通訳案内士です。
全国通訳案内士になるには
以前は、通訳案内士の資格を持っていないとお金をもらって通訳の業務はできませんでした。
ところが、観光客の急激な増加に対応するために、平成30年1月に通訳案内士法が改正され、誰でも無資格であっても、お金をもらって通訳案内業務ができるようになりました。
ただし、「全国通訳案内士」と名札に印刷して名乗れるのは全国通訳案内士の国家試験に合格し、都道府県の登録を受けた人のみです。つまり全国通訳案内士とは国が認めた名称独占資格です。
全国通訳案内士は、通訳案内士法において「報酬を得て、通訳案内(外国人に付き添い、外国語を用いて、旅行に関する案内をすることをいう。)を業とする。」と規定されています。
参考:通訳ガイド制度 | 国際観光 | 政策について | 観光庁
なぜ「全国」と付くのか?
改正前の通訳案内士法では、通訳案内士と規定されていましたが、特定の地域(観光地)を限定として活躍できる地域通訳案内士の制度もありました。
その後、通訳案内士の業務独占規制が廃止され、資格を有さない人であっても、有償で通訳案内業務がおこなえるようになるなど、通訳案内士制度が大きく変わりました。
これにより、通訳案内士の名称が地域通訳案内士と区別するために、頭に「全国」と付け「全国通訳案内士」と規定されるようになりました。
地域通訳案内士の制度は現在も存続しています。
役に立つ資格なのか?
通訳案内士の資格は、難易度が高いワリには利用価値は低く、あまり役に立たない資格です。
通訳案内士専業であれば副業程度の収入しか期待できません。リタイヤした高齢者や子育てが終わった女性向きです。
もちろん中には、外国人観光客の間で評判が口コミで広がり、引っ張りだこの通訳案内士もいます。大手のホテルで富裕層を相手に専属の通訳案内士として稼いでいる人もいます。
しかし、多くの場合、通訳案内士の仕事だけでは生活は厳しいようです。英語の通訳案内士の平均年収は150万円以下とも100万円以下とも言われています。
また、通訳案内士は就職や転職を有利にするための資格とも違います(後述します)。例えば学生が通訳案内士を取得するより英検準1級やTOEICのハイスコアを目指して企業に就職する方が現実的です。
関連資格:英検(実用英語技能検定)とは、TOEICとは
通訳案内士の資格だけで生活している人は現実的に少数です。企業の会議通訳や翻訳の仕事をしながら通訳案内士の仕事をしている人もいますが、資格を全く活かせない職場・職業に就いている人が圧倒的多数です。
将来性を徹底研究
この資格の活かし方
通訳案内士の合格率は10%ほどです。難関の国家資格なのでそうそう合格できません。そのため、学生のうちに合格すれば、旅行会社のような企業への就職はかなり有利になるメリットがあります。
社会人が取得すれば転職の際に履歴書に書いてアピールできます。旅行業務取扱管理者の資格も取得すれば旅行業界への転職はかなり有利になるはずです。
関連資格:旅行業務取扱管理者とは
合格者は英検1級程度の実力がある証明になるので、一般企業へ転職する際も語学力をアピールできます。
通訳案内士として独立してやっていける人はほんの一握りです。ほとんどはどこかの団体に登録して派遣のような形態で仕事をしています。旅行会社に勤務する人もいます。
通訳案内士の資格を取得したら、とりあえずサラリーマンになっておくことです。個人でいきなり本業として独立するよりも、まずは旅行会社に就職すれば、その後資格が生かせるチャンスも出てきます。
資格は「通訳+観光ガイド」のスキルを証明しているにすぎません。稼げるかどうかは、本人の努力・人脈・センス次第です。
楽しい話術で外国人をもてなすユーモアのセンスも当然必要です。仮にたどたどしい英語であったとしても、外国人ウケする観光ガイドなんていくらでもいます。
資格は、能力を発揮して活かすための道具です。良い通訳ガイドになるための手段と考えましょう。
就職のために学生のうちに取得するのは現実的じゃない
全国通訳案内士の資格は難関です。堪能な会話でセミプロの実力を有する人であっても何度も試験に落ちます。
試験は、外国語の筆記試験と後述試験がありますが、それだけではなく、日本の歴史や地理、日本の産業・経済・政治、文化に関する一般常識も問われます。
いずれも表面的ではなく深い知識が必要なので、社会人であれば2~3年と長期的に学習計画を立てる人も珍しくありません。
学生のうちに合格できれば理想ですが、いくら自由になる時間が多いといっても受験対策は大変です。試験のために学業の手を抜くのも本末転倒です。
語学に関する学部に在籍して、ある程度精通していれば在学中に合格するのは不可能ではないですが、そうでなければ困難です。
就職活動を始める時期も年々早まっているので、それを考えると3年生のうちに合格しておかなければなりません。
難易度の高い資格で就職に有利になるからといった理由で通訳案内士の資格に挑戦するのはあまりおすすめできません。
通訳案内士だけで生活するには相当な覚悟が必要
通訳案内士として独立すれば「士業」ですから、自己責任の自営業者です。
通訳案内士の資格さえあれば独立して生活していけるものでもありません。登録しても仕事の依頼の問い合わせなんてほとんど来ません。
資格は「外国語で観光案内ができるスキルを国が証明してくれています」というだけです。そのスキルを使ってお金を稼げるかどうかは別問題です。資格だけでは仕事ができません。稼げるかどうかは本人次第で、営業力も必要です。
人脈がモノを言う世界です。「外国人ウケの良い優秀なガイド」として実績を積み上げている先輩通訳案内士に仕事は優先して分配されます。
新人であれば、ひたすら新規開拓して人脈を築く努力を積み重ねて、はじめて生活できるような収入につながります。あるいは英語プラス中国語など、複数言語の習得も求められます。
どんな仕事でも同じですが、仕事は大変です。ガイド役として話しているだけなら楽ですが、日本について何も知らない外国人が、矢継ぎ早に日本について次から次への質問してきます。
「日本の人口は何人くらい?」から始まって、「神社とお寺の違いは?」「天皇と将軍とどう違うの?」「どうして日本は地震が多いのか」「渋谷のスクランブル交差点はどうして・・・」「日本人はなんでみんなマスクをしているの?」そういった質問に笑顔で即座に返答しなければなりません。
つまり、その人の教養も試されるので、日々勉強・修行の連続です。英語だけではなく、中国語やフランス語など複数語を話せる人も多くいます。
収入は人それぞれですが、やはり努力している人と努力を惜しむ人とでは差が出てきます。案内する前日に時間があれば、下見に行って予習をしておくのは当然です。
独立すれば、医療保険も年金保険も自己負担、退職金もボーナスも出ません。季節によって仕事の量も全然違います。現実は厳しい正解です。
さらに、外国人相手に無料で観光ガイドをするボランティアも増えています。大学生のサークル活動、地元の敬老会的な団体、高校生や中学生などです。
そりゃ無資格であってもタダで案内してくれるのであれば太刀打ちできません。
通訳案内士の資格は、最近は難易度が低くなったとはいえまだまだ難関の部類です。
資格を活かした職業に就かれている人は少なく、副業感覚でガイドとして頑張っている同業者がたくさんいるのが現状です。
合格するには
全国通訳案内士の試験の難易度としてはやはり難関と言ってよいでしょう。
難易度の判断基準はやはり語学力です。仮に英語であれば、合格するのに必要な英語力は、英検1級レベルです。難しいと言えば難しいですが、英検1級レベルの実力があれば超難関というほどでもありません。
合格者の3分の1ぐらいは帰国子女や海外長期勤務経験者ですが、受験生の多くは普通の日本国内生活者です。
合格するには、まず何よりも語学力が必要です。英語であれば中学生(小学生)の頃からコツコツと勉強してきた実力が試されます。英語で話せて表現できるのが前提の試験です。
さらに、日本の歴史、地理、一般常識についても学習しなければなりません。これが全国通訳案内士の試験の特徴です。
試験は1次と2次、おもてなしの心も問われる
外国語は、英語、中国語、韓国語、フランス語、スペイン語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、ロシア語、タイ語のいずれかを選びます。
試験は1次と2次に分かれます。いずれも日本文化や時事的な話題について外国語で説明する問題が出題されます。
1次と試験は、外国語による記述式またはマークシートによる筆記試験です。
合格率が15%~30%と低く、難易度は高く最大の難関です。
過去問題集を解きながら出題傾向をつかみ、日頃からできるだけ多く外国語の記事を読んでおくことが重要です。
2次試験は、持ち時間10分程度の口述試験(個人面接)です。面接担当者が複数なので誰しも緊張します。
通訳案内士として、実務で必要とされるコミュニケーションを図るための実践的な能力について判定します。
語学力に加え、ガイドとしてのホスピタリティ、つまり「おもてなしの心」なども評価項目になるので、その点は注意が必要です。
全国通訳案内士と比べて英検はどれくらいのレベルか
英検2級レベルからスタートしたら、合格までに相当年数がかかります。5~10年以上になるかもしれません。少なくとも準1級がスタートラインです。
英検準1級レベルであっても、1年で合格はほぼ無理です。猛勉強しても数年かかります。
英検1級レベルなら、多くの人はストレートで合格します。2次試験もかなりの合格率です。
つまり、英検1級以外では、合格までに3~4年あるいはそれ以上は学習期間が必要です。
試験自体は以前と比べると合格基準を引き下げているようで、少しは合格しやすくなっています。
英検1級でないと1次試験の英語が免除されませんでしたが、今ではTOEIC840点でも免除されます。国の政策として、通訳案内士の数を増やそうというのが理由です。
誇大広告で生徒を集める予備校には要注意
高額な授業料で受講生を集めている全国通訳案内士試験対策予備校には注意してください!
「英検2級以上の人が対象」と言って生徒を集めている予備校は要注意です。結果的に数年間通うことになり、しかも合格できず数百万円の受講料を支払って終わります。
「1年間通って猛勉強すれば受かるだろう」などという考えは甘すぎます。信じてはいけません。「スクールが合格まで徹底的にサポートします」という言葉に乗せられてはいけません。営利目的の受講料目当てですから、そりゃお金さえ払えば何年でも付き合ってくれます。
国家試験合格者の実績を水増ししている予備校もあるようです。合格率や合格者数に根拠なんてなく、テキトーです。
まずは無料の資料請求
試験情報
試験日 |
お申込み |
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【筆記試験】8月中旬 |
5月中旬~6月下旬 |
受験資格 |
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受験資格の制限は一切ありません。どなたでも受験できます。 |
試験内容 |
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【試験科目】
《口述試験》
口述試験は筆記試験に合格した人のみ受験できます。
【合否判定】
【試験地】受験する外国語により異なります。施行要領をご覧ください。 |
試験に関する詳しい情報は2022年度全国通訳案内士試験|全国通訳案内士試験|日本政府観光局(JNTO)をご覧ください。
おすすめテキスト・基本書
ユーキャンの全国通訳案内士<地理・歴史・一般常識・実務> 速習テキスト&予想模試 第2版【赤シートつき】 (ユーキャンの資格試験シリーズ) |
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通訳案内士の筆記試験は、地理・歴史・一般常識と範囲が広すぎます。まずはとっかかりとして、コンパクトにまとまったテキストから学習をはじめるのがおすすめです。基本的な内容を確認しながら勉強できます。
地図と写真も掲載されているので、観光地をイメージしながら読み進められるのも特徴です。ただし、細かいところや時代背景までは書かれていないので、さらに詳しく書かれているテキストも並行して利用するのがおすすめです。
試験勉強の仕上げ・基本の確認にも利用できます。 |
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おすすめ問題集
全国通訳案内士試験 実務・地理・歴史・一般常識過去問題集 ’20年版 |
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本試験は、年度によってマニアックでニッチな問題も出題されます。過去問題集で5年分の出題傾向を把握できれます。
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おすすめ参考書
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