美術検定は意味ない?美術館でボランティアとして働けるかも!
種類 | 難易度 | 合格率 |
民間資格 | やや易しい | 42% |
受験資格 | 取得費用 | 勉強時間 |
誰でも受験可 | ~1万円 | 3か月程度 |
活かし方 | 全国の求人数 | おすすめ度 |
知識習得 | 0件 |
- 上記は2級についての内容です。
- 全国の求人数は、ハローワークの情報を基に2024年8月7日に集計。
美術検定とは美術に関する趣味・教養の検定試験です。
合格しても美術系の大学や高校への進学は有利になりません。学芸員とも無関係です。
最も難しい1級に合格すれば美術館で働けるのでは?と勘違いする人もいますが、せいぜい美術館のボランティアスタッフになれるくらいです。
仕事につながるとは一切考えない方がいいです。
参考までに、美術館の学芸員として働きたいのであれば、大学できたら大学院で美術系を専攻しており、英語+(フランス語かイタリア語)で専門的会話ができるくらいの語学力が求められます。
美術検定とは
美術に関する知識を問う検定試験
美術検定とは、美術に関する幅広い知識・教養を身に付け、美術史に関わる様々な概念を理解するための検定試験です。
絵を描いたりするような実技試験は一切はなく、美術に関する知識が問われる試験内容となっています。
美術検定は、一般社団法人美術検定協会が試験を実施する民間資格です。
かつて「アートナビゲーター検定」の名称で株式会社美術出版社が実施していた検定試験を、2007年から美術検定の名称に変更して再スタートしました。
主催者サイト:美術検定|知るほど、みえてくる。
役に立つ資格なのか?
美術検定は趣味・教養の検定試験です。
美術館に展示してある絵画を前にして、「この絵はルネッサンス時代のイタリアの画家で・・・」なんて自慢げにウンチクを披露するくらいの美術の知識は身に付きます。
美術系の高校、芸大・美大・美術系の大学や短大へ進学する際の評価の対象にはなっていません。
学芸員になるためにも全く必要のない検定試験です。
中学、高校の美術の先生を希望する学生が履歴書に書いても採用が有利になることはありません。
もちろん教員採用試験が有利になることもありません。
将来性について徹底研究
美術館で働けるなどと期待しないように
美術館や博物館で学芸員として働きたいけど、美術検定に合格すれば採用されるでしょうか?
と、考えて美術検定取得を目指す人がいますが、残念ながら民間資格では話しになりません。
かなり考えが浅はかと言うか・・・
美術館や博物館で学芸員として働きたいのであれば、最低でも美大・芸大、あるいは大学で美術系を専攻、さらには大学院で博士課程修了くらいの学歴がないと難しいでしょう。
美術館で働く学芸員には、論文の発表実績や学術誌への寄稿などの研究実績なども求められます。
美術系なら、英語はもちろんフランス語かイタリア語で専門的な会話ができる語学力も求められます。
美術系大学へ進学して将来学芸員になりたいのであれば、美術検定よりもTOEICや英検の勉強をして英語の実力をつける方がはるかに役立ちます。
入試で優遇措置を実施する大学や高校は存在しない
勘違いしている高校生がとても多いんですけど、美術検定1級に合格しても芸大・美大・芸術系の大学・短大・高校の入試の際に有利にはなりません。
現状では、推薦・AO・一般のいずれの入試でも美術検定の合格者に対して優遇措置を実施している学校は存在しません。
一般的な芸大・美大の一般受験においては、当日の入学試験の成績が全てです。
推薦やAOなら話題の1つになるかもしれませんが、プラス評価にはならないでしょう。
美術検定よりも、美術、造形系コンクールでの入賞歴があればAO・推薦などには役立ちます。
しかし、本当に実力のある人は、AOで入学できるような芸大や美大は最初から志望しません。
美術検定は、あくまでも美術に関する知識を深めるための趣味の民間資格です。
国家資格でもなんでもないので一般的には評価の対象にはなりません。
一般受験での合格を目指して準備する方がよほど効率的で現実的です。
民間資格を「逃げ道」として考えないでください。
美術館のボランティアならなれるかも!
美術検定に合格しても就職や転職には結びつきませんが、唯一美術館で仕事ができる可能性があるとすれば、それはボランティアスタッフです。
ネットで「美術館 ボランティア募集」と入力して検索すると、驚くほどの数の美術館が表示されます。美術館も人手不足のようです。
全国津々浦々、国立・県立・市立・民間の美術館を問わず実に様々な美術館でボランティアスタッフを募集していることがわかります。
こういったボランティアスタッフに応募する際に、美術検定合格者であることをPRすれば、美術に関心があると評価されて採用は有利になる可能性はあります。
もちろん無給ですけど。
まれに、運営スタッフを募集している美術館も見つかります。
仕事の内容は受付や清掃、設営、カフェの手伝い、力仕事などです。バイトか契約社員という待遇で、概ねその地域の最低賃金程度の時間給です。
そんな仕事内容でも、驚くことに応募条件は「美大出身者や学芸員の資格保持者」となっていたりします。
芸術の分野ってボランティアが想像以上に一般的なようです。
高い給料で働くのは困難です。
合格者には割引特典があるらしいけど・・・
美術検定の合格者は、各地の美術館の入館料が安くなるなどの特典もあります。
その数は全国で21箇所の美術館(2024年4月現在)ですが、どれくらいお得になるのか調べてみました。
結論から申し上げますと大した特典ではないです。
入場料が半額になる美術館もありますが、だいたい100円か200円程度の割引です。ポストカード進呈というところも多いです。
しかも、これらの美術館のほとんどはJAF会員カードやタイムズカードを持っていれば同等の割引を受けられます。
他にも何種類かそういった特典が受けられるカードや会員証もあります。
郊外にある美術館であれば、近くの道の駅や飲食店で割引券は手に入ります。
中には、ネット上のクーポン画面のスクリーンショットで割引を受けられるところもあります。割引金額は美術検定合格者と全く同じです。
大きなメリットとまでは言えないようです。
むしろ、この程度の美術館の数と割引額であればかなりの期待外れです。
合格するには
4級ならほぼ全員合格
美術検定は、難易度の低い順に4~1級の4種類に分かれています。
4~2級は誰でも受験できます。1級は2級取得者のみ受験可能です。3・4級、2・3級の併願受験が可能です。1級は併願受験ができません。
級の違いによる合格率は概ね以下の通りです。
- 4級 97%
- 3級 78%
- 2級 42%
- 1級 15%
4級と3級は難易度は低く合格率は高めです。
2級から難しくなり、特に1級は解答が記述式になって難易度も高くなります。
4級から2級はマークシートによる解答ですが1級は記述式です。
公式テキスト・問題集を使った学習がおすすめ
美術出版社から公式テキストと美術検定問題集が出ています。こちらで学習するのがおすすめです。
特に2級と3級のマークシート問題はテキストの内容から出題されるので必須です。
4級は、西洋美術・日本美術の有名な作家や作品についての問題が出題されます。特に事前に勉強しなくても一般的な教養の範囲で解答できます。
3級は、有名な作品の時代背景まで出題されます。
3級と4級では写真問題が多く出題されています。繰り返し出題される頻出問題や有名な作品については過去問題で必ず覚えておきましょう。
2級は、美術史の流れや前後関係などの知識が必要です。趣味として美術鑑賞に出かけるくらいの人向けです。
1級では正しい芸術の知識や、より楽しく鑑賞するためのアイデアの提案など、人に説明できる程度の実践的な能力を問われます。
テキスト・問題集・参考書
おすすめテキスト・基本書
美術検定1・2・3級受験用公式テキストです。このテキストを基準として出題されます。
分かりやすい用語と文章で、絵画の背景とその時代と美術とのかかわりを説明しています。
長文ではなく、ポイントを解説しているので、西洋史・日本史とも総合的な理解が得られます。
美術検定の公式テキストなので初心者にはおすすめです。まずは4級受験用の「この絵誰の絵」を見てから学習した方がより一層知識が深まります。
ただし、3~1級まで一緒になっているので多少勉強しづらいです。
種類 | 評価 |
テキスト |
美術検定4級受験用の公式テキストです。
1・2・3級受験用公式テキストで学習しても文章が難しくて分かりづらく、読んでいても全然頭に入ってこないというのであれば、まずはこちらの「この絵、誰の絵」から学習するのがおすすめです。絵に関する基本事項を押さえられるので、より一層知識が深まります。
西洋、日本の著名な100枚作品の作者が誰であるかを当てるというゲーム感覚でアートに親しむ入門書です。それぞれの作品や作者に関する簡単な解説も掲載されています。
カラーの図版もきれいなので、見ているだけでも楽しいです。
種類 | 評価 |
テキスト |
おすすめ問題集
2級受験用の公式問題集です。
残念ながら手放しでおすすめできるとまでは言えません。理由としては、非常に誤字等が目立ち、校正がまともになされていないからです。信じて読んでいると、次第に不安になってくるという意見が多いようです。
基本事項を理解していないと誤字を誤字と気づかないまま覚える心配もあります。2級以上になると受験生が少ないため、訂正まであまり手が回らないのでしょうか。
ただ、現状ではこれで勉強するしかないです。
※購入する際は、受験する級を確認してください。
種類 | 評価 |
問題集 |
試験情報
日程・出題内容・合格基準・その他
試験日
- 4級:通年実施
- 3級・2級・1級:11月開催予定(開催時間10:00~18:00)
お申し込み
- 4級:通年受付
- 3級・2級・1級:2023年 7月〜10月予定
受験資格
どなたでも受験できます。
試験会場
任意の場所(パソコン・タブレットとインターネットを使用したオンライン試験)
受験料
- 1級 9,990円
- 2級 7,950円
- 3級 6,110円
- 4級 3,970円
※金額は2024年4月現在。
試験内容
【出題範囲】
- 4級:西洋美術・日本美術の基礎知識として、代表的な作品や作家を知る。
- 3級:西洋美術・日本美術の基礎知識に加え、動向や形式など美術史に関わる概念を理解し、歴史的な流れを知る。
- 2級:美術に関する幅広い知識を持ち、美術史に関わる様々な概念を理解する。また美術鑑賞の場の役割や現状を理解する。
- 1級<アートナビゲーター>:美術に関する幅広い知識・情報をもとに、美術作品や美術をめぐる動向について自身で解釈・思考ができる。さらに他者に対し作品のより深い理解へ導くための具体的なナビゲート(道案内)の方法や手段を考えることができる。
合格基準
合格の目安は、正解率約60%(受験者全体の解答率によって左右します)
※2級は美術史問題、実践問題それぞれの正答率が約60%に達していること。
※1級は、一定の基準に達していること。
合格発表
12月下旬頃
主催者情報
試験に関する詳しい情報は受験要項|美術検定をご覧ください。